新型スカイラインはTeslaキラーか。「プロパイロット2.0“手放し運転”」総距離230キロ試乗

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新型スカイライン。最新のプロパイロット2.0では「手放し運転」まで可能だという。

撮影:伊藤有

東京モーターショーでも注目されたクルマ業界変革の最新キーワード「CASE」。Connected、Autonomous、Share、Electricの頭文字をとったワードだ。このなかでAutonomous、つまり自動運転は、各社本丸の次世代技術の1つとしてしのぎを削っている。

国内各社は将来の自動運転につながる技術を「高度運転支援」(Advanced Driver Assistance Systemsの頭文字をとってADAS=エーダスと呼ぶ)装備としてとらえ、これまで技術を積み上げて来た。

日産が9月に発売した新型スカイラインは、その最新技術を盛り込んだ1台。最新のプロパイロット2.0では「手放し運転(ハンズオフ)」まで可能だと、メーカー自らうたう。端的に言って日産の自信作ということだ。

いま企業としての日産は激動のさなかにあるが、クルマの実力とは別の話。「国産メーカーの最新の実力」の一角を、東京〜箱根の往復230kmの試乗で体験した。

「ほとんどハンドルを握らずに高速を走り続ける」

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高速道路の料金所。こういうところでは(当たり前ですが)ハンドルを握る必要はある。

試乗の朝、東京・世田谷から環八を北上し、用賀インターから東名高速に乗って箱根方面を目指した。ルートは基本的に以前レポートしたテスラModel3と同じルートだ。

試乗車はグレードでいえば「スカイラインGT Type SP [HYBRID]」というモデル。新型スカイラインはラインナップが少々ユニークで、400馬力のスポーツモデル「400R」には、最新の「プロパイロット2.0」の設定がない。

プロパイロット2.0とは、従来のプロパイロット(便宜的に1.0と呼ぶ)をベースに、通常のナビよりさらに細かな情報を持つ「HDマップ(3D高精度地図データ)」や車両の周囲の環境を複数のカメラなどで認識する360度センシングなどの仕組みを搭載することで、安全装備として大幅に高度化したものだ。

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プロパイロット2.0の利用可能道路の紹介ページ。利用できる高速道路などのエリアをマップで見ることができる(タップすると当該ページに遷移します)。

出典:日産

以前、日産の開発者との勉強会で聞いたところでは、プロパイロット2.0を実現するには、エンジン、ハイテク装備、安全のためそれらの一定の二重化といった要素を組み合わせた「精密なマッチング」が必要。ベース車両の(電子制御的な)安全性が十分に高度であることがポイントだという。

日産いわく、本来プロパイロット2.0の搭載は、今回のようにマイナーチェンジで実装するには相当難度の高い技術だそう。だから、ラインナップ戦略的な理由で400Rから2.0装備を外したわけでは、決してないそうだ。

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プロパイロット2.0を実現するために搭載されるセンサーはこれだけある。360度の全方向をカメラやレーダーを使って環境認識するセンサー技術のカタマリ。

出典:日産

さっそく、用賀インターから東名高速に上がってアクセルを踏み込む。

400Rほどではないとはいえ、このモデルもエンジンは3.5リッターのV6。V6エンジン独特のラ行っぽい心地いい排気音を響かせながら、エンジン306馬力/トルク35.7キロ+モーター68馬力/トルク29.6キロの出力で鋭く加速する。十二分にパワフルで、シートに体を押し付けられる感覚を一瞬味わったら、すぐに制限速度だ。

今回はプロパイロット2.0体験が主目的なので、早速機能をオンにしてみた。ハンドルの右親指あたりにあるスイッチを押し下げ、プロパイロットをオンにする。

まず緑の表示がメーターパネルに現れる。これがスカイラインの「1.0」(実際は少し違うのだが後述)の状態だ。

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別の試乗の機会に同乗者が撮影したもの。中央のディスプレイ左上のハンドル表示が「緑」で両手でハンドルを握るマークになっていることがわかる。

東名高速に入って少しすると、表示が青に変わった。青に変わると手放し運転がサポートされる「プロパイロット2.0モード」だ。

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表示が青く代わり、ハンドルマークから「手」が消えた。この状態ではハンドルを持っていなくてもよい、という表示。ただし室内カメラがドライバーの視線を見張っているので、前方の注視は続けることが条件。

やってみると分かるのだけど、「ハンズオフ(手放し)していいですよ」はすぐ試せるが、「何なら膝の上に手をおいても」と言われると、最初はかなり勇気がいる。「クルマはハンドルを握るものだ」とずっと体に刷り込まれているからだ。

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手放しで走行中。わかりやすいように手のひらを上に向けているが、実際は膝の上に置く、ような乗り方になりそう。いずれにしろ、万が一に備えていつでもハンドルを握れる状態にしておくのは大前提。

撮影:伊藤有

日産によると、ざっくりいって2.0が動作する前提は、

  • 「HDマップ」が用意されるエリアであること
  • GPSが受信できること
  • 日産が設定した2.0の無効エリアではないこと

などが条件になっているという。

無効エリアにあたるのは、

  • 首都高速の一部などを含む、交通が複雑なエリア
  • 長いトンネル(GPSが長時間受信できない)
  • 中央分離帯がガードレールなどで対向車線と分けられていること(ポール不可)

などが含まれる。

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プロパイロット2.0の解説ページより。動作条件についても書かれている。

出典:日産

高速道路は片側1車線の道路でも構わないが、中央分離帯がポールになっているようなところでは、安全性を重視して2.0は使えないように(無効に)している。この無効エリアは、「Nissan Connect」によるクルマとサーバーとの通信で制御されている。だから、今後、以前使えなかった道で使えるようになったり、その逆が起こることもありえる。

さて、肝心のプロパイロット2.0だが、東名高速での印象は期待以上によかった。試乗日が晴天で視界がよく、道路がやや混雑(走行車線の流れが90km強)というADASの威力を発揮しやすい状況だったこともあるかもしれないが、文字通り「手放し」。HDマップやGPSを駆使して、自分のいる車線のセンターで矢のようにビシッと安定して走り続ける。面白いのは、2.0動作中のハンドルには、細かな修正舵はほとんどないことだ。

種明かしをすると、物理的にハンドルとタイヤが接続されていないステアリング・バイ・ワイアを採用していることが、非常に安定したハンドル動作に関係している。日産の担当者いわく、実は物理的なタイヤは、車線のセンター維持のために相当細かく動き続けているらしい。その不要な動き(ノイズ)は、ハンドルには伝えないという制御だそうだ。

さらにハイテクなのは、前走車が遅ければ「車線変更するかどうか」という問い合わせまでしてくる。「承認」すると、自動的にウィンカー点滅→走行車線にレーンチェンジして、設定速度で追い越す、といった動作もする。

そんなわけで、厚木インターに到着するまで、実際にほぼ一度もハンドルは握らなかった(※)。とにかく楽ちん。すごい時代だ。

※自動車線変更時のみ、ハンドルを握る必要があるので、その際だけ手を添えた

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前走者が設定速度より遅いなどの場合、車線変更の提案をしてくる。承認すると、ハンドルに手を添えるよう表示が変わり、(スカイラインが)後方確認を行った上で自動的に車線変更する。

テスラ(Model3)のオートパイロットは、まだ手放しでは使えない。

だから、スカイラインのプロパイロット2.0体験は、さらに「誰かが勝手に運転してくれてる感覚」にかなり近い。加減速の自然さ、車線内のふらつきといった要素も、高速道路で乗っている限り気になる点はない。実に快適だった。

この体験を人に話すと、「何もすることがなかったら、眠くなって運転が危ないのでは」という人もいた。もちろんそういった不注意対策もされていて、車内のカメラがドライバーの目線を見張っている。正面をしっかり注視していないと、警告が出て2.0が自動的に外れるようになっている。

小田原厚木道路では「ほぼ2.0にならない」

今回は東名高速は厚木まで。厚木からは小田原厚木道路〜箱根新道で大観山を目指すルートだ。

ここで「おっ」となったのは、小田原厚木道路での制御。小田原厚木道路に入ると、試乗車のプロパイロットは2.0に入れられなくなった(正確には、料金所を超えてすぐは、短距離だけ2.0が入った)。

前出のプロパイロット2.0の利用可能道路には、小田原厚木道路は含まれていない。だから「効かないのは仕様」ということになる。日産によると、「小田原厚木道路の一部はハンズオフを制限しています。これは道幅、道路環境などを総合的に勘案したもの」だそう。意図的に止めているわけだ。

道中、何度か2.0に切り替わらないか試していたが、結局1.0のみの状態は、大観山に到着するまでずっと続いた。

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大観山に到着。スカイラインGT Type SP [HYBRID]の後ろ姿。複雑なボディーラインであることがわかる。

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前方の日産ロゴ周辺にはセンサー。3眼フロントカメラはバックミラーの裏側あたりの位置にある。

小田原厚木道路では2.0が効かない(制限している)という制御について感じるのは、「テスラとは対照的だ」ということだ。日産(プロパイロット2.0)はかなり安全側にふった制御で、「安全そうな場所でしか2.0が入らないようにしている」わけだ。

一方テスラ(オートパイロット)は、「動作できそうなシチュエーションなら、(ドライバーの指示が前提だが)積極的にオートパイロットを効かせようとする」。

だから極端な話、狭くて対面通行の箱根新道のような道路でも、テスラはなんとかオートパイロットで走ろうとする(過去記事参照。ギリギリまでオートパイロットを維持して、もうだめだ、となったら人間にハンドル操作を戻す)。

箱根新道はさすがにクルマ任せで走るのは怖いが、小田原厚木道路程度の走りやすい有料道路だと「ハンズオフで走りたいな」と思ったのは事実だ。このあたりの技術の発展をどうとらえるか、どちらの方が「より人に優しい」のかは、難しい問題だと感じる。

※日産いわく、ハンズオフ(青)・ハンズオン(緑)とも「2.0」システムとセンサーで動いているため、そもそも従来の1.0とは安定性が違う、とのこと。体感としてスカイラインの1.0モードと2.0モードは、車線維持のふらつきなどで違いが感じられるケースがあったが、確かなところがもっと乗り込まないとわからない部分だ

テスラに興味がある“テクノロジー好き”人は試す価値アリ

下道を走る

大観山から芦ノ湖スカイラインを通って箱根を抜け(山道でもスカイラインはパワフルで実によく走った)、御殿場から東名高速で帰路。

試乗車を返却するまでの全行程230kmを走ってみて感じたのは、2.0で動作する限りは、プロパイロットはテスラModel3のオートパイロットとほとんど差を感じない安心感があるということ。

センサーだけをみても、全方位を見る360度カメラ(アラウンドビューモニター)やフロント3眼のカメラ、前後複数のレーダー、ソナーといったように、Model3と比べてもどっちが多いのかわからないほどのセンサー装備になっている。

日産の開発の現場を知る担当者いわく、車両に搭載するコンピューターも、これらセンサーの情報量を高速に処理するために、一般的なものから数段処理性能を上げたものになっているそうだ。

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後方を見るAVMカメラ。テスラは運転席と後席を隔てるBピラーにカメラがあるが、スカイラインはここに搭載。

プロパイロット2.0の成り立ちを聞いていると、「安心安全」に強いこだわりを持つ国産メーカーのアプローチも、技術的積み上げの結果、テスラのようなイノベーション重視企業がこだわる「体験」に近づいて来たんだなと妙に感慨深い。

ただし、価格もModel3とほぼ同等レベルの616万円(Model3の航続距離560キロの「ロングレンジ」は665万円)なのですが……。

なお、今回は渋滞がなかったので試す機会がなかったが、プロパイロット2.0では、渋滞時の「停車」は30秒まで追従走行(自動的な再発進が可能)する。年末年始の帰省などの大渋滞の移動には、心強い相棒になるはずだ。

「自動運転目前」というような高度なADAS機能はメルセデスやテスラをはじめとする輸入車が先行しているイメージがある。そんななかにあって新型スカイラインは、「いやいや国産もかなりいいところまで来てるぞ」ということが感じられる1台だ。

初出からエンジン出力の表記をより正確なエンジン+モーター表記に改めています 2019年11月22日 12:00

(文、写真・伊藤有)

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