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「手の内を明かさずに協業できる」秘密計算で変わる企業の未来

「チーム3」のクラナ・タルンさん、長谷川慶太さん、千田拓矢さん

優勝した「チーム3」は「秘密計算を使った電子投票システム」を提案した。写真左からクラナ・タルンさん、長谷川慶太さん、千田拓矢さん。

KPMG Ignition Tokyoは2019年11月7日、8日の2日間にわたって、「第1回 KPMGジャパン 秘密計算ハッカソン」を開催した。イベントは、国立研究開発法人情報通信研究機構、EAGLYS、三菱地所、エルテスの協賛で行われ、協賛団体やそれ以外から現役プログラマーはもちろん7人の学生を含む50人近くが参加した。

秘密計算とは、データを暗号化したままの状態で計算する技術。現在、社会が高度にネットワーク化されるなか、ビッグデータ活用によるさまざまな可能性に期待が集まっている。半面、サイバーセキュリティのリスクも高まっており、個人情報や企業の業務上の秘密などの保護もますます厳格化している。

こうしたジレンマを打開するものとして、注目を浴びているのが、システム側に暗号化されたデータの中身を開示しないまま計算だけを可能にする秘密計算だ。理論としては1980年代から知られていたが、実用可能な技術として認められるようになったのはごく最近になってから。

今回のハッカソンのテーマは「秘密計算でビジネス課題を解決する」。参加者3~4名でチームを作り、「異常検知、マーケティング、年収分析」などのシナリオで秘密計算のプログラムを作成し、アイデアや性能を競った。

秘密計算が実現する「電子投票」

チーム3「秘密計算を使った電子投票システム」を説明する長谷川慶太さん。

チーム3「秘密計算を使った電子投票システム」を説明する長谷川慶太さん。

今回のイベント、主催、協賛および審査員は、初めての秘密計算でのハッカソンに、一体どのようなものが出てくるか、不安がなかったわけではないという。しかし、蓋を開けてみると、予想を超える形で、多様でエキサイティングなものが生み出される結果となった。

優勝したのは「チーム3」が開発した「秘密計算を使った電子投票システム」。より多くの有権者が投票できるようにするため、その必要性がたびたび取り沙汰される電子投票システムについて、実現を阻む課題を秘密計算によって解決することを目指した。審査員からは、課題意識やアイデア、企画からプログラミングの実装までが、非常に優れていたと評価された。

PC上でアンケートに答える人

Shutterstock/one photo

電子投票を導入するためには投票者の身分や現住所を確認し、不正がないことを保証し、各有権者の投票内容が外に漏れないようにする必要がある。チーム3は、こうした課題が秘密計算で解決できると考え、プログラムを作成したと言う。

今回のハッカソンの作業時間は2日間合計で8時間。チーム3では、最初の5~10分でアイデアを出し合い、実行可能性やアイデアの面白さを検討したうえで、電子投票システムを作ることに決めたと言う。

チーム3の長谷川慶太さんは「電子投票システムのアーキテクチャは、オークションや競争入札のような例にも応用が可能」だと話す。そのほかにも、ヘルスケアや年収予測など応用可能な分野は広そうだ。

自由な発想から生まれたアイデアが続々

「心拍数の異常を検知するシステム」を説明する「チーム2」の日下雅博さん。

「心拍数の異常を検知するシステム」を説明する「チーム2」の日下雅博さん。

2位の三菱地所賞を獲得したのは、「チーム2」の「心拍数の異常を検知するシステム」。Apple Watchをはじめとするスマートウォッチで心拍、血圧などを計測できるようになり、これによってさらに進んだ健康状態のチェックが求められている一方で、個人情報管理上の問題も指摘されている。

秘密計算を使うことで、センサリングしたものを暗号化して送り、中身は見ることができないまま計算、健康状態を把握するサービスを提供するというアイデアで、性別、年齢、心拍数から心臓病の確率を計算して返すシステムを作った。すでにデバイスが普及していることから、実現可能性が高いプログラムでもある。

顔写真をネット環境に晒さない出会い系アプリを提案する神戸大学のチーム。

開発中の様子。「顔写真をオンラインにアップすることに抵抗がある」という問題意識から、顔写真をネット環境に晒さない出会い系アプリを提案する神戸大学のチーム。

特別賞は、神戸大学の学生チームによる「秘密計算を用いたマッチングアプリ」。「学生として身近な問題」にこだわったというこのシステムは、審査員からもアイデアのユニークさを評価され、「将来が楽しみ」との講評を受けた。

「理系で女子が少なく出会いがない」という理系の大学生ならではの悩みが端緒となっているこのシステム、マッチングアプリは使いたいが、顔写真をアップロードすることには抵抗があるというジレンマの解決が課題だった。

デーティングアプリのイメージ画像

Shutterstock/Kaspars Grinvalds

マッチングアプリでは、顔写真を掲載した方が圧倒的にマッチング率は高くなることがわかっている。そこで敢えて顔写真を掲載しないでマッチングするため、ユーザーがアップした顔写真を暗号化し、「塩顔」「ソース顔」の比率で特徴を分析、好みのタイプとマッチングするという方法を採用した。

このほかにも、製造業の自動検知を進めるうえで不可欠な異常データの蓄積に関するアイデア、進路評価をユーザーの成績から算出するという学生によるシステム、離婚がある意味一般的になっていることから養育費の算出を秘密計算によって行うというものなどがあった。

実際に触れたことでわかった面白さ

ハッカソン参加者たち。

参加者からは「他のチームのプレゼンテーションを聞いて、こんな使い方があるのかという発見があった」という感想が多く聞かれた。

今回の「第1回 秘密計算ハッカソン」の参加者からは、多くの「気付きがあった」との感想が聞かれた。

優勝したチーム3のメンバー長谷川慶太さんも、視野が広がったと話す。

「これまでできないと考えていた秘密計算による機械学習に触れているチームがあって、自分が思い込みで用途を狭めていた部分があったと知りました」

また同じチーム3の千田拓矢さんは、秘密計算のイメージが変わったと語る。

「秘密計算にはマニアックなイメージがあったが、Python(パイソン)という誰でも使える言語で扱うことができたため、コードを書くのも簡単で、想像していたよりずっと身近な技術なのですね」

関東学院大学4年の束野通洋さんは、今回がハッカソン初体験だったという。

「大学院の先輩が秘密計算をテーマに研究しているので興味を持ち、一緒に参加しました。今回は初対面の方とチームを組むことになりましたが、コードを書く際の考え方や組み方の違いなどに触れることができて、多くの発見がありました」

「秘密計算といえばKPMG」を目指して

KPMG Ignition Tokyoの代表取締役社長兼CEOの茶谷公之氏。

ハッカソンを開催したKPMG Ignition Tokyoの代表取締役社長兼CEOの茶谷公之氏。「秘密計算はこれからの分野」と期待を込めた。

主催したKPMG Ignition Tokyoの茶谷公之社長は、秘密計算について「これからの分野」と語る。

KPMGジャパンは監査・税務・アドバイザリー、3つの事業の柱を展開しているが、KPMG Ignition Tokyoはそのなかで最新デジタルテクノロジーを駆使して企業の経営や開発に役立てることを目指して設立され、2019年7月に株式会社化された。

クラウド、AI、ブロックチェーン、IoTはじめ、データサイエンス、クラウドアーキテクチャ、システムセキュリティなどの専門家を国内外から募っており、2019年11月現在メンバーは90人。うち3分の2がテクノロジスト、その6割が日本以外(25カ国)にルーツを持つ人々だ。バックグラウンドも出身分野も多様な人が集まるチーム、それがKPMG Ignition Tokyoなのだ。

「秘密計算は新しい分野ですが、ブロックチェーンとともに、KPMGにとっても、KPMGのクライアントにとってもおもしろい分野だと考えています」

茶谷さんによれば、長年、学術レベルのものでしかなかった秘密計算がグッと実装レベルに近づいたのは、2009年にスタンフォード大学で発表されたCraig Gentry氏が書いた博士論文がきっかけ。

暗号化されたデータの中身を開示しないまま計算を進める秘密計算は、さまざまなトランザクションデータ、監査税務に使うデータ、パブリックにしたくないデータを生かすために、これからますます必要不可欠な技術となっていくはずだ。

「例えば、金融業界で業界を横断する形で不正の知識を共有したりしたい場合、互いに相手に知られたくない内容を含むデータの、中身を開示しないままでの協力が可能になるわけです」

茶谷さんは、7年前に関連論文を読んで、秘密計算に興味を持ったが、当時はまだ実現には程遠い状況だったという。それがここのところ急速に進んできており、今回のハッカソンは、秘密計算そのものをより多くの人に知ってもらうきっかけとして開いたという。

「秘密計算のポテンシャルはかなりなもの」だと茶谷さんは言う。ハッカソンは、今後も継続して開催していく考え。

「秘密計算といえばKPMGと言われたい」

秘密計算は今後10年で、ますます急速な成長を遂げていくと考えられている。


■「KPMG Ignition Tokyo」について、詳しくはこちらから。


参加者の集合写真

提供:KPMG Ignition Tokyo

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