Twitterの政治広告規制スタート。グーグルも規制を発表。だが、トランプ氏のフェイク内容は防げず

2020年大統領選挙戦

2020年に迫る米大統領選挙。民主党に有力な候補者がいない中、「トランプ氏再選」も現実味を帯びている。

Shutterstock/Wetzkaz Graphics

アメリカの大統領選挙が、来年2020年に迫っている。現職トランプ大統領の再選を民主党が阻止できるのか、2016年を超える接戦になるのは想像に難くない。

そんな中、Facebook、Twitterなどソーシャルメディアの政治関連広告の扱いに急速に批判が集まっている。2016年大統領選の結果に、オンラインの政治関連広告が投票行動に大きな影響を与えた可能性があるためだ。

批判を受け、Twitterはジャック・ドーシーCEOが10月末に、多くの人にメッセージが伝わる「Twitter広告」で、政治広告の掲載はしないことを述べた。11月15日には「規制」の具体的な内容を発表した。規制は11月22日から全世界で実施。規制の内容は以下だ。

  • 候補者、政党、政治活動特別委員会(スーパーPAC)、政治団体は基本的にTwitter広告を出せない
  • 意見広告について、郵便番号に基づいた居住地や、支持政党、政治嗜好についての利用者データで、ターゲット層を絞り込むことを禁止する(注:意見広告とは、経済成長、環境保全、社会格差などに関連したもの)
  • 営利目的の法人・組織は、政治、司法、立法、規制関連でのメッセージを盛り込んだTwitter広告を出せない

ターゲット広告では「バージニア州、白人、50代、共和党」というように、受け取る人を絞り込むことができる。2016年大統領選挙は、郵便番号や支持政党によるターゲット広告が多用された。中には有権者の心理や行動に影響を及ぼし、しかも内容も事実と異なるフェイク広告も、ターゲットを絞って発信された。例えば、黒人が投票所に行くのを阻むための偽の情報が含まれたものさえあった。

「正しい行動」か株主にとって「愚かな決断」か

Twitterのジャック・ドーシー最高経営責任者(CEO)は10月30日、規制の詳細を発表するのに先立ち、「政治広告の全面禁止」をツイートで打ち出し、政界や業界に衝撃を与えた。

「政治的メッセージは、人々に訴えて届くもので、買う(ことで伝える)ものではない。(中略)広告がなくても、社会運動で大規模な訴えができる」

2016年大統領選挙でトランプ氏に敗れたヒラリー・クリントン氏は、歓迎のツイートを発信した。

「アメリカと世界中の民主主義にとって正しい行動だ。Facebook、あなたはどうする?」

トランプ選挙陣営本部長は逆に、Twitterを批判した。

「Twitterは、何百万ドルもの収入になる政治広告から手を引いた。株主らにとっては、愚かな決断だ」

グーグルも規制、Facebookは?

一方Facebookは、Twitterとは異なる見解だ。Facebookは偽情報や誤情報が混じった政治広告であっても、「表現の自由」であり、ファクトチェック(事実確認)はしないと強調してきた。

アレクサンドリア・オカシオーコルテス議員

10月23日に開かれた米下院金融サービス委員会の公聴会では、アレクサンドリア・オカシオーコルテス議員がFacebookのマーク・ザッカーバーグCEOを問い詰める場面があった。

Reuters/Erin Scott

10月23日に開かれた米下院金融サービス委員会の公聴会で、アレクサンドリア・オカシオーコルテス議員(ニューヨーク選出)が、Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOを問い詰める場面があった。10月上旬、トランプ大統領の選挙陣営が流した、民主党の有力候補であるジョー・バイデン副大統領を批判する嘘の情報が入った広告の削除を、Facebookが拒否したためだ。

だが、Facebook包囲網は狭まっている。

米アルファベット傘下のグーグルは11月20日、政治広告での詳細なターゲット広告を規制する方針を発表した。12月12日に投開票があるイギリスの総選挙に備え、まずイギリスで実施する。

米政治ニュース専門サイト「ポリティコ」は、Facebookが年齢や住所・政治嗜好などのデータに基づいたターゲット広告を限定することを検討していると報じた。ただし、Facebookがその方針をいつ発表し、実施するのかは不透明だ。

政治広告は巨額の収入源

政治広告はFacebookなどプラットフォーマーにとって、重要な収入源だ。

ニューヨーク・タイムズによると、2020年大統領選挙の候補者らは2019年時点ですでに政治広告のために、Facebookに6000万ドル、Twitterに400万ドルを費やした。広告主としては、トランプ大統領の選挙陣営だけでなく、エリザベス・ウォーレン上院議員など民主党候補らの陣営も含まれる。

大統領選挙本番の2020年になると、デジタルの政治広告支出は約29億ドル(約3100億円)に上り、2016年の2倍超に達する見通しという(米コンサルティング会社ボレル・アソシエーツによる)。これまではFacebook、Twitter、グーグルの巨額の収入になっていたが、ここからTwitterが消える。

ウォレン議員が打ち出したフェイクの政治広告

エリザベス・ウォーレン議員がわざとFacebookに打ち出したフェイクの政治広告。

Facebookより

2020年選挙の民主党候補であるウォレン上院議員は、Facebookを猛烈に批判し、シリコンバレーの巨大プラットフォーマーの分割まで訴えている。ウォレン氏は10月、わざとフェイクの政治広告をFacebookに出した。ファクトチェックをしないという方針を試すためだ。

「速報:ザッカーバーグ氏とFacebookは、トランプ氏の再選を支持しました。というのは事実ではありません。ザッカーバーグ氏がしたことは、トランプ大統領がFacebookを意のままに操って嘘をつき、有権者に嘘を配信するのに大金を払っているということです」

フェイク情報との戦いは「いたちごっこ」

factともfakeとも取れる積み木

政治広告は規制される方向に動き出しているが、フェイクニュースやフェイク広告を発信する方法は依然として存在する。

Shutterstock/Monster Ztudio

政治広告は規制される方向に、動き出している。しかし、抜け道はあるだろう。

トランプ氏をはじめ、各候補者や選挙陣営のアカウントからは、好きなメッセージをいくらでも流すことができる。ワシントン・ポストによると、トランプ氏の発言やツイートには、2018年1月で、1日に15回も嘘や間違った情報が含まれており、2017年の2倍以上の回数になった。それを見ているのは6700万人のフォロワーだ。政治広告が規制されても、トランプ氏本人は Twitterで呟き放題で、いくらでもフェイクニュースや間違った情報を流せる。

また、2016年大統領選挙で起きたように、海外からのフェイク広告は、国内の政治家が出す政治広告と違い、ターゲット広告にしなければ、規制にかからず発信できる。ライバルが不利になるフェイクニュースやフェイク広告は、いくらでも発信することができるのだ。

2016年も、FacebookやTwitterが削除した海外からのメッセージやページが、ウェブサイトとなって蘇った例もあった。オンラインの世界の危険な誤情報、偽情報との「いたちごっこ」にはまだ解決法はない。

(文・津山恵子)

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