Dimitrios Kambouris/Getty Images
ビクトリアズ・シークレットにとって2018年は、良く言って"盛りだくさん"、悪く言えば"悲惨"な1年だった。
売り上げが低迷し、ブランドCEOを失い、一部店舗を閉め、そのセクシー過ぎる広告やショーは厳しい批判にさらされた。アナリストからは、ビクトリアズ・シークレットが#MeTooの時代を捉えることに失敗したと指摘された。
顧客はアンダーウェアの質が低下したとクレームを付け、ビクトリアズ・シークレットは客足を取り戻すために大幅な値引きを行った。
2018年11月には、ビクトリアズ・シークレットの親会社、Lブランズのマーケティング責任者であるエド・ラゼック(Ed Razek)氏の雑誌『Vogue』のインタビューがネット上で大きな話題となり、 状況はさらに悪化した。ラゼック氏は毎年恒例のファッションショーについて、ショーは「ファンタジー」であり、「トランスセクシュアル」のモデルを起用する必要はないと思ったと発言したのだ。このコメントはネット上で激しい非難を呼び、ラゼック氏は正式な謝罪へと追い込まれた。
その直後にテレビ放送されたファッションショーの視聴率は、前の年から約3分の1下がったとABCは述べている。
年末に向けて、LブランズのCEOで創業者のレス・ウェクスナー(Les Wexner)氏は、同社の決算発表の中でアナリストの懸念に触れた。ウェクスナー氏は、業績改善のためにあらゆる選択肢を検討していると述べた。
「我々の新たなリーダーたちは、新鮮な視点を持って、我々のマーケティング、ブランド・ポジショニング、社内の人材、不動産ポートフォリオ、コスト構造…… 全てを見直している」と、同氏は語った。
この1年で同社が取り入れた変化とは?
1. 比較的ふっくらとした体型のモデルを採用
Charles Sykes/Invision/AP
ビクトリアズ・シークレットは2019年3月、バーバラ・パルヴィンが新たなエンジェルの1人になると、インスタグラムで発表した。
このニュースはネット上ですぐに歓迎された。パルヴィンはプラスサイズのモデルではないが、多くのインスタグラムユーザーが彼女をビクトリアズ・シークレットの他のモデルに比べてふっくらしていると見なしたからだ。
「このモデルは健康的に見える…… 大好き! 」とあるユーザーは当時、インスタグラムに書いた。
「ついに! 本物の人間のからだ」と書いたユーザーもいた。
アナリストたちはすぐに、この投稿がいかにうまくいったかを指摘した。投稿から2日で平均の4.2倍の78万もの「いいね」が付き、直近30日間のビクトリアズ・シークレットの103の投稿で1位を獲得した。
2. 初めてトランスジェンダーのモデルを採用
Pascal Le Segretain / Getty
ビクトリアズ・シークレットがトランスジェンダーのモデル、ヴァレンティーナ・サンパイオを初めて起用したのは2019年8月のことだ。これは、ビクトリアズ・シークレットが、顧客の声を聞き始めたことを表すものだ。
サンパイオはこのニュースをインスタグラムで発表。自身の写真にブランドのタグと、ハッシュタグ「campaign」「vspink」「diversity」を付けてシェアした。
3. 親会社Lブランズの長年にわたるマーケティング責任者で、毎年恒例のファッションショーのクリエイティブ・ディレクターでもあった人物が辞任
レス・ウェクスナー氏とエド・ラゼック氏(2016年6月7日、ニューヨーク)。
Astrid Stawiarz/Getty Images for Fragrance Foundation
最も衝撃的だったのは、Lブランズで20年を過ごし、長年チーフ・マーケティング・オフィサーを務めてきたエド・ラゼック氏が8月に辞任すると発表したことだ。
ラゼック氏は1995年以降、ビクトリアズ・シークレットの毎年恒例のファッションショーの運営責任者を務めていて、1990年代後半にはLブランズのチーフ・マーケティング・オフィサーに就任した。ウェクスナー氏を除けば、ラゼック氏は同社で最もベテランの従業員だった。
ある元従業員はBusiness Insiderのインタビューに、ラゼック氏はブランドのクリエイティブ面のビジョンを完全にコントロールできる、ウェクスナー氏の最も近い腹心だったと語った。
元従業員たちは、ウェクスナー氏とラゼック氏の2人は会社がどのようなイメージで見られるべきかについて「揺るぎない」考え方を持っていて、変化を著しく嫌ったと話している。ビクトリアズ・シークレットの売り上げの低迷は、ウェクスナー氏とラゼック氏の態度のせいだとも指摘している。
4. 2019年のファッションショーの中止を発表
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LブランズのCEOレス・ウェクスナー氏は2019年5月、従業員向けのメモの中で、ビクトリアズ・シークレットは毎年恒例のファッションショーについて「見直し中」であることを明らかにした。
「テレビ放送が適当だとは思っていない。2019年以降、我々はエキサイティングでダイナミックなコンテンツと新しい類のイベントを開発することに集中する —— これを我々の顧客が熱中しているプラットフォームで届けたい…… そうすることで、グローバルなデジタルの時代にファッションの限界を押し上げることになるだろう」
その2カ月後、ビクトリアズ・シークレットのモデルで、何度もファッションショーに参加してきたシャニーナ・シェイクが、ショーは中止になるだろうとデイリー・テレグラフに語った。
11月21日、LブランズのCFOスチュアート・バーグドアーファー(Stuart Burgdoerfer)氏は、2019年のショーの中止を認めた。
(翻訳、編集:山口佳美)