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15インチ版ユーザー目線の「16インチMacBook Pro」実機レビュー

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撮影:伊藤有

アップルのノートPC「MacBook Pro」の16インチモデルが手元にやってきた。

これまで足掛け10年近く、15インチを使ってきたリアルユーザーの目線で、この新型がどうなのかレポートしてみたい。

キープコンセプトのデザイン、細部に差がある

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左が15インチモデル、右が16インチモデル。奥行き方向に少し大きく(5.2ミリ)なっていることもわかる。

撮影:伊藤有

デザインは見た目のとおり、キープコンセプトで変化はほぼない。

パッとみてわかるのは、画面が従来の15インチモデルよりずっと狭額縁になったこと。ボディーは左右に4.3ミリずつ拡大しているからだ。

コンパクトさを追求したモバイル機種なら、厚みが1ミリ厚くなった、重さが100g重くなった、は大ごとだ。けれども大画面のMacBook Proは、モバイルワークステーションとしての役割が大きい。だから、サイズの変化について大きく取り上げるほどではないとも思う。

一応書いておくと、サイズとしては、

  • 微妙に縦横が大きくなり、重量は170g増えた
  • ただしバッテリー駆動時間は動画再生時で1時間のび11時間になった

ということだ。

手に持つと少し重くなった感はあるものの、カバンに入れて体感できるほどの差はない。

乗り換えてすぐにわかる「画面の広さ」

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電源投入直後のセットアップ画面。この時点で、画面のかなり端の方まで表示があることで「新型」感がある。

撮影:伊藤有

デザインがここまでキープコンセプトだと、「新しいMacを使ってる」という感覚は薄いのかも……そう思って使い始めた感想は、半分は当たって、半分は外れた。

個人的な仕事環境の話をすると、編集部(社用PC)では15インチのシルバーモデル、自宅PC(プライベート)は15インチのスペースグレイモデルと、全く同じ機種を2台使っている。取材マシンはLTE内蔵機種がマストなのでWindowsノート、Macは原稿執筆と編集作業用のマシンとして愛用している。

メインマシンにMacを選び続けてきたのは、画面の広さ、キーボードのタッチ、どこを押してもしっかり反応してくれる大きなトラックパッド。そういう細かな部分にこだわった作りが、調べ物や書き物仕事のストレスを減らしてくれるからだ。

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16インチはディスプレイのスペックそのものは変化ないが、環境光に合わせて色みを自動調整するTrueToneの搭載もあって、標準状態で撮影するとかなり色が違ってみえる。写真は、TrueToneオフにし最大輝度で撮影した。左の15インチは2年使っているが、輝度や色みの違いが、経年劣化によるものかは不明だ。

撮影:伊藤有

さて、デザインに関しては、生粋の15インチユーザーの僕としても、並べてみなければどちらが16インチかわからないほど似ている。

初めて見たときに「アップルロゴの比率が少し小さく見える」気がしたものの、16インチという「数字の先入観」からそう感じるのではと言われると、否定できない。

画面サイズは15→16インチで1インチアップ、と言う人もいるが、前のモデルは15.4インチだったから、実際には0.6インチアップ(1.54センチ)でしかない。

ただし、使い始めて「変わった」感は結構ある。画面の端ギリギリというほどではないが、これまで見たことがない角の方まで表示領域があり、いつものホームポジションで使っていると「広いなぁ」という感想だ。

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非常に細かな点として、リフレッシュレートが選べるようになっていることも新型の特徴。24フレームなどやや特殊なフレームレートの動画で、画面のパラツキが発生しないようにするもの。

撮影:伊藤有

16インチで環境をセットアップしてすぐ気づいたのは、セットアップ次第では、文字は実は15インチの方が可読性が良い場合があるということ。

個人的に画面表示はいつも、最大に画面スペースが広くなる「スペースを拡大」を使ってきたが、このモードだと16インチでは、文字のボディー(太さ)が15インチよりシャープで細く見える。これは特に、ブラウザーの「タブ」の文字など小さな文字の表示時に顕著に感じる。

16インチでRetina液晶のドットピッチが220ppiから226ppiに微細化していることが影響しているのかもしれない。もっとも、文字の細さには1〜2時間ほどで慣れてしまったが。

キーボードは「文句なしに、非常に良い」

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左が従来の15インチ、右が新型16インチ。ボディーの左右幅が広がっていることがわかる。配列も、カーソルキーが逆T字型になるなど、使い勝手向上のための変更が複数ある。

撮影:伊藤有

取材や資料集め、レポート作成に使っている編集者や記者のような職種だと、本機のキーボードの質の変化は、うれしい進化と言える部分だ。

キーストロークは0.55ミリから1ミリに増えたが、これは個人的にはほぼ体感できなかった。

ただし、タイプ音とキータッチが劇的に変わったのはすぐにわかった。従来は底付き音が硬質で、実際のところインタビュー取材時などは、打鍵を弱めにするなど配慮することもあった。

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右上の四角いボタンが電源ボタンを兼ねるTouch ID。

撮影:伊藤有

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左上のEscキーは従来はTouchBar上の仮想キーだったが、新型では物理キーに変わった。

撮影:伊藤有

16インチのキーボードは、そういう配慮がほぼ不要だ。まるでキーボードの下にショック吸収シートでも敷いてるかのようなタッチ。それでいて、曖昧な押しごたえでもない。上質なクリック感があり、にもかかわらずキーボードを押し切った状態でも硬質な手応えがない。これはなかなか完成度高い。

細かなところでは、コードを書く際などに多様するEscキーが物理的なキーとして復活したり(15インチ時代はTouch Barのソフトウェアキーだった)、Touch IDを兼ねる電源ボタンも独立して押しやすくなったりといった変更もある。

比較するとすごさがわかる「サウンド」

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細かいドットで構成されるスピーカー部分。並べて見ると、ほぼ同じように見えて、ドットの縦横の幅が少し違うことが初めてわかった。よく見ると、キーボード部分の窪みの幅も、16インチ(右)の方が幅が広くなっている。

撮影:伊藤有

新製品が発売されると「サウンドを強化した」といううたい文句も、よく聞くフレーズだ。見た目がほとんど変わらないのでどこまでの違いかと思ったが、実はこの違いが日常利用にはキーボードと並んで「変わった」感の強い部分かもしれない。

2台を会議室で並べて聴き比べると、明らかに、誰が聴いてもわかるレベルで16インチの方が優れている。

アップルの説明によると、16インチモデルは構造的には、2つのスピーカーを背中合わせにしたような特殊な構造をしているそう。これによって、低音については0.5オクターブ、従来より低い音が出せるようになったそうだ。

数値的な改善もあるが、そもそもスピーカーとしての「鳴り」が別次元に良いのだ。

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MacBook Pro16インチモデルの解説ページより。スピーカーは6スピーカーサウンドシステムを採用。

出典:アップル

たまたまネットフリックスで見かけた『攻殻機動隊 S.A.C.』のオープニングを例にとると、最大ボリューム近辺で再生すると、15インチでは冒頭の女性ボーカルと背景のサウンドがほぼ飽和状態になってしまうのに対して、16インチではそれぞれの音がしっかり分離している。

左右のサラウンド感も、見た目のスピーカー位置よりも音場が広いように聞こえる。端的に言って、迫力・臨場感がある。

プロ向け目線で言うと、動画編集や音楽のミックスのときに……というような説明が出てくるかもしれないが、普通の人が普通に映画を見ていても「この迫力すごいな」と思うはずだ。誰でも恩恵が受けられるというのは、それはそれで重要なことだ。

「MacBook Proキラー」Surface Laptop3と比較検討は意外な盲点

96W仕様のACアダプター

CPU/GPUがパワフルになったことで純正ACアダプターは96W仕様に容量アップした。

撮影:伊藤有

最後に、競合比較。このサイズのスタイリッシュで性能も高い大画面ノートは、同列比較するような機種はこれまであまりなかったように思う。

少なくとも、個人的にMacBook ProとWindowsの何かの機種で迷ったことはここ数年ない。

そこへきて、先日レビューしたSurface Laptop3は、その久々の「対抗馬」として十分な実力を持っていた。

レビューの中で、「アップルにとって、かなり手ごわい相手になりそうだ」と書いたが、16インチモデルの実機を触ってもその印象はあまり変わっていない。

同じアルミ素材のボディーとはいえ、キリッとしたエッジの立った工作精度高いボディーの質感はMacBook Proが明らかに勝る。

その一方で、価格戦略はLaptop3の方が明らかにうまい。Laptop3はメモリー8GBでストレージ128GBという「一番安い」と言うための戦略モデル(公式の直販価格16万円程度)があるからだ。

ただし、面白いのは、16インチのエントリーモデルに近い性能を見繕うと、必ずしも安いとは言えない部分も見える。Laptop3で近い性能をもつ仕様は、一番高いモデル。これを選ぶと、なんと価格が逆転してしまう。

  • MacBook Pro 16インチ:27万3680円 / CPU Core i7-2.6GHz、メモリー16GB、SSD512GB、AMD Radeon Pro 5300M
  • Surface Laptop3:28万280円(セール価格で27万7747円) / Ryzen 7 3780U、メモリー16GB、SSD512GB、AMD Radeon RX Vega 11 Microsoft Surfaceエディション

※いずれも税込価格

なお、CTOの金額に糸目を付けなければ、最大8TBのSSDも選べるなどの「最大限に盛りまくったときの性能」もMacBook Proの方が上だ(が、自分の使い方では、動画編集などSSD容量やGPUパワーがいる作業はあまりない。だから、512GB+クラウドストレージ1TBなどの組み合わせを選ぶと思う)。

Surface Laptop3といえど、「大盛り」はそれなりに高い。OSが違うので厳密な比較をすることは難しいが、費用対効果でいえば今のところ引き分け、という結果になりそうだ。

(文、写真・伊藤有)

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