中国はテクノロジーを駆使してウイグル人弾圧…公文書が流出も政府は否定

2002年4月、新疆ウイグル自治区のカシュガルで携帯電話を使用しているイスラム教徒の女性。

2002年4月、新疆ウイグル自治区のカシュガルで携帯電話を使用しているイスラム教徒の女性。

Kevin Lee/Getty

  • 国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は、ウイグル人イスラム教徒に対する中国の組織的な弾圧を記した公文書を公表した。
  • ある文書には、ファイル共有アプリ 「Zapya」 を通じて禁止コンテンツを共有したとされる4万557人を当局が特定した方法が記述されていた。
  • ICIJによると、Zapyaは宗教的な教えを共有することをユーザーに勧めているという。中国政府はウイグル人とイスラム教を脅威と見ている。
  • 文書は、4万557人全員を調査し、無実であることが証明できない限り「再教育」収容所に送るよう命じていた。
  • 当局がアプリのユーザーデータにどのようにアクセスしたかは不明だ。しかし、中国政府はいつでもユーザーデータと通信内容の開示を事業者に要求する権限を持っている。

国際調査報道ジャーナリスト連合(the International Consortium of Investigative Journalists :ICIJ)が公開した機密文書によると、中国当局はファイル共有アプリを利用してウイグル人イスラム教徒を収容所に送り込んだ。

この文書は、新疆ウイグル自治区に住むウイグル人を、高度な技術による監視で支配する中国の戦術を示している。

2017年以降、中国はウイグル人に対してハイテクを駆使した対テロ作戦を組織的に展開してきた。当局は、少なくとも100万人のウイグル人を刑務所と収容キャンプに送り込んだという。

2017年6月に発行された文書によると、新疆の当局は、音声ファイルや動画ファイルの共有に使用されるアプリ「Zapya」を監視し、利用者4万557人を特定したという。

ICIJによると、このサービスは、コーランをダウンロードして宗教的な教えを広めることをユーザーに奨励しているという。中国はこのアプリをテロを助長するものだとした。

中国製のこのアプリは中国以外でも人気があり、ミャンマーインドパキスタンなどの国で利用されている。ICIJによると、Zapyaはウェブに接続しなくてもスマートフォン同士で接続できるため、通信環境の悪い地域で人気があるという。

カシュガルのモスクに設置されている宣伝看板と監視カメラ。

カシュガルのモスクに設置されている宣伝看板と監視カメラ。

Reuters

公開された文書によると、当局は、2016年7月から2017年6月の間に、新疆の180万人以上のウイグル人がこのアプリをダウンロードし、そのうちの4万557人が「有害」な人物であることを知った。

「有害」には、逃亡者、犯罪者、許可されていない宗教指導者などが含まれる。中国共産党は宗教を厳しく統制しており、その宗派が政府によって公式に認可された場合にのみ、人々が活動したり集まったりできるようにしている。

中国では、2009年に起きた暴動を受けて、ウイグル人をテロリストと見なすようになり、しばしばイスラム教徒を過激派と同一視してきた。

中国新疆ウイグル自治区カシュガルの商店街にカメラを設置している。2017年3月23日。

中国新疆ウイグル自治区カシュガルの商店街にカメラを設置している。2017年3月23日。

REUTERS/Thomas Peter

この文書は、当局に対し、この4万557人「1つずつ」を厳重に取り締まって、無実を証明できない限りは収容所に送るよう指示している。

「すべての地域で、詳細に調査・検証を行い、テロの疑いのある者に対しては、その証拠を確定し、法に則って取締ることが必要だ」と文書は述べている。

「疑いを晴らすことができない場合には、集中的な教育を行い、さらなる選別と評価を行う必要がある」

文書は「教育」が何を意味するのか明確にしていないが、内部にいた人によると肉体的・精神的な拷問を受けるという刑務所や収容所への移送を意味する可能性が高い。

Zapyaのようなアプリで「有害な」コンテンツを共有することは、中国が人々を収容所に送ることを正当化する多くの理由の一つである。

2017年3月、新疆ウイグル自治区のカシュガルでウイグル人の身分証明書をチェックする警察官。

2017年3月、新疆ウイグル自治区のカシュガルでウイグル人の身分証明書をチェックする警察官。

Thomas Peter/Reuters

当局がアプリのデータにどのようにアクセスし、何を取得したかは不明だ。しかし、中国政府は、いつでもユーザーの通信内容を事業者に要求し、入手することができる。例えば、WeChatは、過去に法執行機関に個人ユーザー情報を渡した多くの中国のテック企業の一つだ。

中国はまた、この地域を訪れる観光客に、デバイスのデータをスキャンしてイスラム関連のコンテンツを探す監視ソフトウェアをインストールさせている。これは2019年、Viceとガーディアン、ニューヨーク・タイムズ、ドイツのNDRと南ドイツ新聞が共同で報道した

新疆ウイグル自治区当局は、特別なアプリを使って住民の個人情報を記録しており、これには政治的見解、出産計画、家庭での電気使用などが含まれており、2019年にヒューマンライツ・ウォッチが報告し、ICIJが公表した漏洩ファイルに詳述されている。さらに、共産党幹部も、人々の家の玄関にQRコードを貼り、個人情報を記録したり、所在を追跡したりしている。


政府当局者は、家に掲げられたQRコードをスキャンし、住民の個人情報にアクセスできる。

政府当局者は、家に掲げられたQRコードをスキャンし、住民の個人情報にアクセスできる。

Xinjiang state radio via Human Rights Watch

11月23日にニューヨークタイムズによって公表された共産党による指示内容に加えて、24日に公表された漏洩文書は、ウイグル人に対する党の組織的な活動の一端を明らかにした。

この地域での弾圧に関する報告の大部分は、中国国外に住むウイグル人や収容所の元収容者の証言に基づいていた。しかしこの文書は政府によるもので、弾圧の存在を示している。

ガーディアンの報道によると、中国はリークされた文書を「捏造であり、フェイクニュースだ」とし、人々を収容所に送るよう当局に命じた文書の存在を否定した。中国では収容所を「無料の職業訓練所」と呼んでいる。

[原文:China used a file-sharing app to round up 40,000 Uighur Muslims for prison camps, a startling insight into how it oppresses people via technology

(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)

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