【武部貴則3】脳卒中で倒れた働き盛りの父。今の医療でカバーできない「生活を診る医学」の必要性

武部貴則

横浜市立大医学部卒業後、26歳でiPS細胞から「ミニ肝臓」を作る技術を発表。現在は米シンシナティ小児病院准教授と横浜市大、東京医科歯科大教授も務める。

撮影:鈴木愛子

再生医療研究者の武部貴則(32)は、アメリカで言うところの「Physician scientist(医学部出身の研究者)」だ。24歳にして「医者じゃない医者」となる大決断をした旨は、前回報じた。


もともと医者の家系ではなく、「父はサラリーマン、母はパートのおばちゃんで、3つ上の兄はロックミュージシャン」だという。そもそも医学部を目指したのは、なぜなのか?

自身がランドセルを背負った小学3年生の時の写真を、武部は今も大切に持っている。写真には、武部の小さな肩に手を回す、体の大きな父の姿。当時、父は働き盛りの39歳で、紺色の背広に身を包んでいる。玄関前の花壇脇でツーショットを撮影した少し後に、勤務先の近くで父は倒れた。脳卒中だった。

「食事中に電話で父の報せを受けた母が、平静を装いつつ血相を変えて出かけていった場面は、鮮明に覚えています。しばらくして、面会謝絶の札がついている病室をのぞき込んだら、父はもう別人なんですよね。体はガリガリ。虚ろな目をして、身動きもできない状態で」

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