シャープが社内ビジネスチャットツールを外販 ── 手堅いビジネスでSlackやTeamsの橋渡し役も狙う

ビジネスチャット イメージ

働き方改革の一環で注目を集めるキーワードの1つ“ビジネスチャット”。国内での需要も高まる中、製造業国内大手のシャープも参入する。

撮影:小林優多郎

シャープ子会社のAIoTクラウドは11月28日、ビジネスチャット「LINC Biz」を発表した。LINC Biz公式サイトで11月28日から無料プランの受付を開始し、2020年1月中旬以降に1ユーザーあたり月額350円(税別)の有料プランを提供する予定だ。

国内市場は「まだまだ伸び代がある」

企業の導入状況

チャットツールとビデオ会議の国内導入状況。

社内コミュニケーションの円滑化や、オフィス外でも仕事ができるようにといった“働き方改革”推進の動きを受け、ビジネスチャットの注目度は年々高まっている。

ビジネスチャット大手の「Slack」は4月に東京オフィスをビジネスの中心地の1つ大手町に移転。国内ベンチャーの「Chatwork」も9月24日に東京証券取引所マザーズへ上場するなど業界の動きは激しい。

赤羽良介氏

AIoTクラウドは2019年10月1日に設立。初代社長は4月にVAIOからシャープに転職した赤羽良介氏が務める。

一方で、日本国内においてのビジネスチャットなどのコミュニケーションツールの導入比率は諸外国に比べて低い。

総務省が2018年3月に報告した「ICTによるインクルージョンの実現に関する調査研究」によると、ビジネスチャットの利用状況はアメリカが67.4%、イギリスが55.9%なのに対し、日本は23.7%。ビデオ会議も利用状況もアメリカが65.1%、イギリスが58.8%なのに対し、日本は32.6%に留まる。

AIoTクラウド社長の赤羽良介氏は「(ビジネスチャットは)日本はまだまだ伸び代がある。成長部分を我々はしっかりととっていく」と意気込みを語る。

ビデオ会議との連携や有料のボットサービスで差別化

LINC Biz

チャットルーム示す“チャンネル”など、競合と共通のユーザーインターフェースを持つ「LINC Biz」(写真はブラウザー版)。

「LINC Biz」はそもそもシャープ社内での利用を想定して開発されたビジネスチャットだ。シャープはほかのビジネスチャットも検討したが、使い勝手や費用面を考慮し、自社内での開発を決めたという。その結果、社内ニーズの高かったビデオ会議ツールとの統合といった特徴を備える。

LINC Biz ファイルでビデオ会議

LINC Bizはファイルを起点にビデオ会議を開始できる。さながら現実で「この資料のこともうちょっと教えて」と話しかける具合だ。

LINC Biz ビデオ会議

ビデオ会議には 複数人が参加できるほか、社内以外のゲストも招待できる。共有されたファイルには手書き文字の書き込みも可能。

また、オプションのチャットボットツール「LINC Biz bot」(月額5万円)は、同社のコンシューマー家電向けのAIoT(AI+IoT)サービス「COCORO+」のノウハウを活用したものだ。

例えば、カンタンな社内での質問に対して、単一の答えを返す「FAQチャットボットサービス」には、COCORO+で培った自然言語処理の技術を応用している。「備品を修理したい」という質問とその答えを用意していたとすると、社員が「備品が壊れた」などと入力したとしても、用意している答えにある程度は誘導できるといったものだ。

LINC Biz bot

LINC Biz botはCOCORO+で培った独自エンジンにより、効率的な一問一答ボットを作成できる。

ビジネスチャット市場が抱える課題の“解”の1つに?

LINC Biz 料金表

LINC Bizの料金プラン。

赤羽氏は発表会でLINC Bizのメインターゲットについては「大企業より300人未満の中小企業」、導入目標については「2020年度末までに1万社」と明かしている。

子会社とはいえ、シャープグループの事業規模としてはやや小さく感じるが、ビジネスとしてAIoTクラウドの戦略は手堅い。

オープンソースを元にしていること、そもそも社内ツールとして導入していることなどを考えると、事業としての開発コストは、ビジネスチャットをゼロから開発してビジネスにするより比較的低い。

そのため、事業自体も非常にスモールスタートで、着実に利益を積み上げていく戦略が見て取れる。

音川英之氏

AIoTクラウド クラウドソリューション事業部でソリューション統括部長兼クラウド開発部長を務める音川英之氏。

一方で、AIoTクラウドでソリューション統括部長兼クラウド開発部長を務める音川英之氏は、混沌するビジネスチャット界の“橋渡し役”にLINC Bizを昇華させられないか、という野心も口にする。

グローバル的にもビジネスチャット業界は激しい競争が広げられている。ベンチャーながら大手のSlackはもちろん、プラットフォーマーであるグーグルの「Hangout Chat」やマイクロソフトの「Microsoft Teams」なども存在する。

いずれも“脱Eメール”を掲げているが、Eメールとは異なり、導入するビジネスチャットの種類が違えばその会社や部署同士ではコミュニケーションがとれない問題を抱えている。

LINC Biz スマホ版

LINC Bizのスマートフォンアプリ版。

LINC Bizは、あくまで将来的な野望の1つではあるが、それらの大手ビジネスチャットを仲介する、もしくは集約するツールにできないか可能性を模索している。音川氏は「技術的には十分可能」と言う。

シャープは、グーグルやアマゾンが熾烈を争うスマートホーム業界においても、COCORO+でプラットフォーマーとは直接競争せず、連携することで価値を生み出す戦略をとる。

ビジネスチャットにおいても、LINC Bizの「協調路線」がうまくいくのか、今後のシャープの手腕のみせどころだ。

(文、撮影・小林優多郎)

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