米食品大手マースのグラント・リードCEOはBusiness Insiderのインタビューに応じた。
Business Insider
- 米食品大手マースのグラント・リード最高経営責任者(CEO)は、Business Insiderのインタビューに応じ、同社がZ世代の好みに大きな影響を受けていると語った。
- マースは、職場環境のフレキシビリティを高め、在宅勤務制度やオープンオフィスを導入するなど、Z世代のニーズに応えている。
- Z世代の要望を理解することは、同社が消費者に寄り添う企業であり続けるためにも重要なことだとリードCEOは語った。
Z世代は自分たちが何を求めているのかわかっている。
スニッカーズ、M&M'Sなどのチョコレート菓子、ペディグリーやアイムスといったペットフードで知られるマース。グラント・リードCEOにとって、ポスト・ミレニアル(=Z世代)の話に耳を傾けることは、同社の社内外における成功にとって不可欠の要素だ。
「私がマースで働き始めた当時は、毎日オフィスに通うのが普通でした」リード氏はそう語り始めた。「Z世代は違う。いつも『どうやったら生産性を高められる?残業なしでは働けないの?』と言っている。実際、いまやテクノロジーのおかげで当時以上のことができるんです」
優秀な人材を集め、働き続けてもらうためには、Z世代にとって働きやすい環境、つまりは在宅勤務やオープンオフィスのような柔軟性のある労働環境をつくることが欠かせない。
また、Z世代のニーズを理解することは、マースが消費者に寄り添う企業であり続けるために不可欠だ、とリードCEOは言う。
彼は「当社はソーシャルメディアを活用して、従来とはまったく異なる方法で消費者とのコミュニケーションを図っている」とした上で、消費者の嗜好の変化は、自社のコアプロダクトを革新したり新商品をラインナップに加えたりする絶好の機会だと語ってくれた。
リードCEOとのインタビュー全文を紹介しよう。
Z世代は前の世代と何が違うのか
Z世代は生まれたころからテクノロジーが「当たり前」の世代だ。
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Business Insider(BI):Z世代は他の世代とどう違うと思いますか?
リード:実は、私にはZ世代の子どもが2人いるんです。キャメロンとシャーロットと言います。だから、Z世代のことは割合よく知っているつもりです。まあ、子どもたちのほうは「パパは私たちの世代のことなんて何もわかってない」と言うかもしれませんが。
Z世代がこれまでと大きく異なるのは、より高い透明性、より健全な選択肢、あるいはデータを活用したよりホリスティック(全面的、多面的)で夢中になれる体験を求めていることです。
彼ら彼女らは車をあまり買わないし、家もほとんど買わない。しかしマースとしては、そうしたZ世代の嗜好の変化を、コアプロダクトを革新し続けていく絶好の機会であり、将来に期待できる新たな商品を生み出すチャンスととらえています。
BI:Z世代は、例えば、サステナビリティ(持続可能性)を考えるのにとても積極的ですよね。なぜだと思いますか?
リード:私たちとは違う時代に育ったからですよね。こんなことは言いたくないのですが、私が10代、20代のころは、スマホもiPadもありませんでした。Z世代はテクノロジーが発展した時代に育った人たちです。少なくとも私たちの世代よりは、世界に対する広い視点を持って成長してきたことは間違いありません。
だからこそ、彼ら彼女らはまったく新しい体験を求めているし、透明性や明確さを求めているのです。この製品はどこから来たのか?サステナブルな製品なのか?製造元は地球にどんな貢献をしているのか?ロバストな(外部要因に揺るがない)企業なのか?いつも質問攻めです。
Z世代のニーズにどう応えるか
ニューヨーク・タイムズスクエアにあるマースの直営ストア「M&M'S WORLD NEW YORK」の店内。
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テイラー:マースのロングセラー、例えばM&M’sのようなブランドについて、Z世代からの新しい学びは何かしら適用されているのでしょうか。もしそうだとしたら、どうやってZ世代をはじめとする現代の消費者にマッチさせているのでしょう。
リード:これまではM&M’sは店頭での販売が中心でしたが、eコマースが登場し、新たなチャンスが生まれました。当社はいま、ソーシャルメディアを活用して、消費者とこれまでとはまったく異なるやり方でコミュニケーションを図っています。
ちょうどここ(インタビュー場所のニューヨーク・タイムズスクエア)には、当社の直営ストア「M&M’S WORLD NEW YORK」があって、完全な没入型体験を楽しめます。私も先週やってみたばかりですが、自分の顔がプリントされたM&M’sをつくったり、普通は売っていない商品を手に入れることができるんです。
普通に小売り店舗で買ってもらうときは、どんな人たちが買ってくれているのか私たちにはわからない。でも、直営ストアのような密接なコミュニケーションの機会をつくることで、誰が買っているのか、彼ら彼女らが何に興味を持っているのかがわかる。
直接会話を始めることもできるし、さらには消費者と感情面でより深く結びつくことができるようになる。M&M’sのようなブランドにとっては素晴らしいことです。ロングセラーブランドだけでなく、新商品でも同じようなことができるかもしれません。
貴重なZ世代人材をつかまえて離さない方法
Z世代の望む「透明性の高い」オープンオフィスを導入し、コミュニケーションを円滑化(写真はイメージ)。
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BI:競争の激しい労働市場で、優秀な人材を雇って働き続けてもらうために、どんなことを心がけていますか?
リード:私たちはまず、「目的」について話すことから始めます。マースで働くことで最終的に得られる利益とは何か。それは財務上のパフォーマンスだけではなく、他のあらゆることに関わってくる。当社で働いてみると、同じバリューチェーンに属する人々、さらには地球のために仕事をしていることを実感できるでしょう。
まずは目的意識をしっかりと持ち、その上で、それぞれが所属する部門でペットのためにより良い世界をつくったり、私たちの明日をより良くするために食品をつくったりするのです。そんなわけで、まずは「利益のヒエラルキー」から始めるのが第一。
第二に、Z世代の時間感覚に合ったフレキシブルな職場環境をつくること。マースでは(流行するかなり前から)オープンオフィスを採用していて、そのおかげでオフィスでのコミュニケーションは円滑化されています。
もうひとつ、マースが大事にしているのは、ある社員を特定の役割に限定しないこと。それぞれが自分の役割を広げ、他の仕事をしていいことになっている。
私自身について言えば、入社直後はマーケティング部門のエレクトロニクス担当で、その後は営業、製造、調達……経営管理部門にもいました。自分の力を最大限に活かせるチャンスをくれる会社はそれほど多くありません。マースは活躍できる環境を用意していると思います。
Z世代の求める職場環境をつくる
Z世代の時間感覚に寄り添い、マースでは在宅勤務やリモートワークを導入している(写真はイメージ)。
nazarovsergey/Shutterstock.com
BI:Z世代が職場に求めること、ほかに何か思いつきますか。
リード:もう少し柔軟性があればいい、と思っているんじゃないでしょうか。
私が入社したころは、とにかく毎日オフィスに行くのが普通でした。でも、Z世代は「(オフィスに通うだけでは)生産性は高まらない、ほかに方法はないのか?残業なしでは働けないの?」と言います。実際、テクノロジーの発展のおかげで、当時よりもできることは格段に広がっているので、方法はいくらでもあると思います。
製造の現場については、オフィスに行かず仕事をこなすのはどう考えてもハードルが高いと思いますが、事務作業なら可能です。仕事だけでなく、心理的、身体的、社会的に良好な状態(ウェルビーイング)を社員に用意し、心置きなく活躍できる環境をつくりたいと考えています。
BI:柔軟性を向上させるために役に立った、具体的な戦略や計画があったら教えてください。
リード:テクノロジーを活用したさまざまな取り組みを行ってきました。特段ユニークだとは思いませんが、在宅勤務を可能にしたり、リモートワークを許可したり、基本的なことはすでにやっています。
私たちにとって特に重要なのは、テクノロジーを使う人をどのように指導・養成し、成長させるかという点ですね。人材を雇うとき、年配であろうが若かろうが、最大限の力を発揮して活躍できるように、フィードバックやトレーニングの環境整備に力を入れています。
2019年、マースは「働きがいのある会社(Great Place to Work) 」で世界5位にランキングされています。つまり、方向性は正しいということですよね。私たちは常に、Z世代とどう関わったらいいのか、働きがいのある会社にするにはどうしたらいいのかを、模索しています。
その結果は、皆さんが見てくださっている通りだと思います。
[原文:Mars CEO explains how Gen Z is transforming the $35 billion company's workplace]
(翻訳・編集:Miwako Ozawa)