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日本製品不買を「こっそりやめる」韓国の若者たち。SNSには投稿しない複雑な対日感情

12月24日、安倍晋三首相は韓国の文在寅大統領と中国・成都市で会談した。両国首脳の会談は約1年3カ月ぶりだ。

2018年9月の前回(ニューヨーク)会談後、元徴用工への賠償を日本企業に対して求めた韓国大法院(最高裁)判決によって、日韓関係は悪化。

2019年7月頃からは、韓国で日本製品の不買運動がSNSを中心に広まった。ここ最近はSNSで「#BOYCOTTJAPAN 」「#NOJAPAN 」などのハッシュタグを見かける機会は激減し、トレンドから外れたように見えた。

前回記事から4カ月経った今、不買運動はどうなっているのだろうか。

不買運動の参加者は依然として増え続けている

日本製品不買運動参加実態

左のグラフは不買運動への「現在の参加実態」、右が「これからの参加意向」。また青い線グラフは「参加」、赤は「不参加」を示している。

出典:REALMETER「日本製品不買運動参加実態」(2019年8月1日発表)

韓国の世論調査専門機関REALMETERが7月10日から行っている「日本製品不買運動参加実態」調査結果のグラフ(上図)では、調査開始初日の第1回から7月31日の第4回の調査までに、「参加」が48.0%から64.4%に増えていることが確認できる。

11月28日発表データによる年齢別日本製品不買運動参加実態

出典:REALMETERの調査結果(2019年11月28日発表)より編集部作成

4カ月後の11月28日の発表では参加が72.2%、不参加が21.5%と、初めて参加が7割を超える結果となり、今では全体の回答者のうち7割が不買運動に参加していることになる。

年代別に見てみると不買運動の参加率は50代、60代以上では6割程度に留まった。一方、30代では7割、20代と40代では8割が不買運動に参加している計算となった。

データを見ると不買運動が依然として継続しているのは明らかだが、韓国語の日常会話をこなし、常に韓国系SNSをウォッチしている筆者の目には、「#BOYCOTTJAPAN」「#NOJAPAN」など不買運動に関する投稿を見る機会は減ってきたように見える。韓国の10代、20代の若者の実際の肌感覚はどうだろうか。

日本旅行をしてもSNSに投稿できない

浅草

「日本で撮った写真はSNSに投稿できないので、強制的に数日間オフラインです」とAさんは話す。

出典:Shutterstock/waranon8327

12月初旬、日本に旅行中だというソウル市内の私立大学に通う韓国人のAさん(22歳、女性)と浅草で会うことにした。

取材当日Aさんはウェーブをかけた黒髪ロングヘアーにシースルーバング(透け感のある前髪)という韓国で流行りのヘアスタイルに、黒で統一したストリートファッションで現れた。

「10月頃から日本製品に関する話を周りがしなくなったので、不買運動をこっそりやめました」

Aさんは7月頃から不買運動に参加していたが、自分の意志で行っていたわけではなく、友人たちから仲間外れにされることを恐れてのことだったという。

今ではその友人たちと一緒にサンリオキャラクターのぐでたまのグッズを見て回ったりすることもあり、Aさんの周りでは不買運動は終わったように感じるそうだ。

原宿にあるA BATHING APEの店舗。

原宿にあるA BATHING APEの店舗。

出典:Shutterstock/dekitateyo

日本では原宿へ行きA BATHING APE、LUSHなど日本で買ったほうが韓国で買うよりも安いブランドや、BILLIONAIRE BOYS CLUBといった韓国にはないブランドを中心に、ショッピングを楽しんだ。友人から買ってくるよう頼まれたものもあったそうで、韓国でも若い世代の原宿系ブランドの人気は衰えていないようだった。

今回が初めての日本旅行だったというAさんは「歴史の授業やニュースで見るとのは違う、新しい日本が見えました」と話し、日本に対するイメージが変わったそうだ。それでも写真をSNSに載せることはしないという。

「仲の良い友達とは日本についての話もできますが、全体公開のSNSにはやっぱり恐くて載せられません」

不買運動が生んだ「このご時世に?」という流行語

アサヒスーパードライが置かれているCUの棚。

アサヒスーパードライが置かれているCUの棚。

写真提供:取材協力者

韓国で今、日本に関連した事柄をSNSに掲載すると必ずと言っていいほど"이 시국에?"というコメントがつく。Aさんが恐れたのもこのコメントだ。直訳すると「この時局に?」という意味だが「このご時世に、日本関連の投稿をするのか?」という批判の意味が内包された流行語だ。

Aさんいわく、日本のビールを飲んでいるともれなく「このご時世に?」と言われるそうだが、12月初旬、韓国の弘大入口駅近くにある大手コンビニチェーンCUの棚には、一番下の段にひっそりとアサヒスーパードライが置かれていた。

不買運動が始まる前はアサヒに加えてサントリー、キリン、サッポロのビールが幅を利かせていたことを考えると控えめになっていることは確かだ。

また「このご時世に?」という言葉は飲食物に限らず、アイドル関連の出来事にもよく使われる。2019年8月にBTSの日本ファンミーティングの開催を中止するよう求めた韓国ファンのツイートにもよく見られた。

「このご時世に日本ファンミーティングが必ずしも必要なのか理解できない。果たして(韓国の)国民という自覚がなくなってしまったのか?勘違いも…笑える」

しかし「このご時世に?」という言葉は深刻な場面だけで使われているわけではない。すでに一種のジョークとしても使われ始めている。データでは相変わらず高く出る「不買運動」ブームだが、徐々に温度感に変化が生まれつつある。

ジェットストリーム

Bさんは不買運動をやめ、日本製のボールペンを使い始めたという。

写真提供:取材協力者

「8月に日本製品を使っていたら『え、日本製品使ってるの?この野郎、売国奴だな』と言われかねない雰囲気でしたが、今はただ『このご時世に?』と軽く茶化して言うくらいです」

そう語るのはソウル市の高校に通うBさん(16歳、男性)。Bさんは前回記事で「日本の文房具は使わない」と話していたが、その後不買運動をやめて今ではジェットストリームのボールペンも使っている。8月に韓国製のペンに買い替えた同級生たちも、今では普通に日本製を使っているそうだ。

8月の取材当時には不買運動を積極的に牽引していたように見えた高校生たちが、今ではひっそりと日本製文房具を使い始めている。

根強い日本アニメの人気

韓国で人気を博している「クレヨンしんちゃん」のパジャマ。日本で人気の韓国人YouTuberも着用している。

韓国で人気を博しているクレヨンしんちゃんのパジャマ。日本で人気の韓国人YouTuberも着用している。

出典:SPAO公式ウェブサイト

日本アニメの人気も根強い。

韓国発のファストファッションブランドSPAOは、2017年7月にクレヨンしんちゃんとのコラボ商品を発表したが即完売。再入庫を望むコメントが多く書き込まれ、追加販売が行われた。

その後もクレヨンしんちゃんパジャマブームは続いており、今でも明洞やホンデといった繁華街を歩けば、露店でコピー品が多く売られている。

「ポケモン、犬夜叉とかは吹き替えはもちろん、キャラクターの名前や地域名、看板の文字まで全部韓国式に翻訳されていて韓国のアニメだと思ってました」

明洞などの繁華街ではクレヨンしんちゃんのパジャマのコピー品が多く売られている。

明洞などの繁華街ではクレヨンしんちゃんのパジャマのコピー品が多く売られている。

写真提供:取材協力者

そう話すのは、最近はアイドルマスターシリーズにハマっていて、もともと熱狂的な日本のアニメオタクだというCさん(22歳、男性)。

オタク仲間の友人たちは不買運動は行っていないそうで「アニメなどでもとから日本に興味を持っていた人たちは不買運動にあまり影響されていないんじゃないか」と流暢な日本語で答えてくれた。

Cさんのように、日本のアニメを韓国のアニメだと思って育った韓国人は多い。 クレヨンしんちゃんはじめスラムダンクや名探偵コナンなどの人気アニメもそうだ。それほど日本のカルチャーは、韓国の若者たちに浸透していると言える。

韓国人の複雑な対日感情

新大久保駅近くの大久保通り

日韓関係が冷え込む中でも、新大久保周辺や韓国を訪れる日本人は減っていない。

出典:Shutterstock/StreetVJ

不買運動に対する少なくないプレッシャーを感じながらも、日本のアニメを消費し、寿司やラーメンをはじめとした日本食を消費する、韓国の若者たちの対日感情は複雑だ。

「日本に行きたいけど、SNSに投稿できなかったら意味がない」「このご時世に日本旅行の投稿なんてできるわけない」という韓国人の声を今回多く聞いた。

日本以上にSNS社会の韓国では、旅行中の写真をSNSに投稿できないなら無意味だと考える若者も少なくない。日韓関係が改善しない限り、若者の日本関連のSNS投稿へのハードルは高いままだ。

とはいえ、日本製品不買運動の温度感に変化が生まれつつあるのは、一般の若者の肌感覚のみならず、著名人のSNSもしかりだ。

52万人を超えるInstagramのフォロワーを持つ韓国の人気ラッパーKid Milliが、日本での写真を12月8日と13日に投稿しているが「このご時世に?」をはじめとする日本に関連した否定的なコメントはどちらの投稿にも確認できない。

9月中旬に、韓国のインスタグラマーHYORIがラフォーレ原宿のNever Mind the XUで開催されたポップアップストアで来店イベントを行うと宣伝した際には「このご時世に?」「失望しました」など否定的なコメントであふれていたことを考えると、大きな変化だ。

不買運動をめぐる韓国国民の感情や風潮は、確実に変化を帯びている。

(文・稲葉結衣)

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