「全米最優秀女子高生」の母・ボーク重子。10年以上意識してきた「非認知能力の入り口」の正体とは

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ボーク重子

撮影:今村拓馬

人生の目的、あなたは見つけられているだろうか。

「このままでいいのだろうか」という漠然とした不安を抱えたまま、行動を起こすこともできずにいる——そんな人は、実は多いのではないだろうか。

胸の内のモヤモヤを解決するキーワードは「パッション」だと、作家でライフコーチのボーク重子氏は言う。

「パッション」とはいったい何なのか、人生におけるやりがいや生きがいの見つけ方、そのためのマインドセットについて、ボークさんに聞いた。

「パッションは非認知能力の入り口」

——娘さんが2017年に「全米最優秀女子高生」に選ばれたということから、これまでは子育てという切り口からの発信が多かったボークさんですが、今回『「パッション」の見つけ方 「人生100年ずっと幸せ」の最強ルール』という本を出版されました。「パッション」という新たな切り口で発信をしようと思った理由を教えてください。

パッションの見つけ方

2019年11月には「パッション」をテーマにした新刊を発売。ボーク氏の元には「人生のやりがいが見つからない」という相談が多く寄せられるが、実はかつてボーク氏自身も、同じ悩みを抱えていたという。

編集部撮影

もともと私が「パッション」という言葉を意識するようになったきっかけは、今から15年以上前のことです。アメリカ人の夫と結婚して移り住んだワシントンDCで、まだ幼かった娘の学校探しをしていたとき、応対してくれた先生からこんなことを言われたんです。

「我が校は子どもの『パッション』を見つけることにフォーカスします。なぜなら、パッションは非認知能力(※)の入り口だからです」。

そう言い切られたときの衝撃は、今でもはっきりと覚えています。

最初こそ、「パッションなんて人生の成功と幸せに関係ないのでは?」と思っていたんです。けれど少しずつ考えが変わっていった。パッションがあれば子どもたちが好奇心を発揮していろいろなことを調べたり、失敗してもまたトライしたりするんですよね。その姿を実際に見て、たしかにパッションがあれば強い心が育つなと納得したんです。

それ以来、我が家では“パッション第一”で10年以上やってきました。あまりにも自分の一部になってしまっていたので、そのことを忘れていたくらい。

でも2014年頃からライフコーチとして活動するなかで、「子どもがやりたいことを見つけられずにいる」「この先、自分がどうしたらいいのか、どう生きていったらいいのか分からない」といった悩みを、それはそれはたくさん聞いたんです。

そこで自分が今こうしてライフコーチとして活動している理由は何だろうと原点に立ち返ってみたときに、思い当たったのが「パッション」という言葉だったんですね。

非認知能力:忍耐力、意欲、協調性、リーダーシップ、創造性、コミュニケーション能力、粘り強さ、忍耐力など、学力(認知能力)とは違って測定することのできない個人の特性による能力のこと。

ボーク重子

ライフコーチとして活動する理由を立ち返ったところ、最終的に「パッション」に行き着いたという。

撮影:今村拓馬

私は講演会や著書でも「パッション」という言葉をよく使うのですが、「『パッション』のある人生はいいと思うけれど、見つけ方が分からない」「『パッション』なんて自分には全然ない」という声もとても多いです。

だからこそ、今、私にできること、皆さんの役に立てることは、「パッション」を見つけたり、育てたりするためのお手伝いなんじゃないかなと思い至りました。

そのパッションは「外」に向いているか

——ボークさんがおっしゃる「パッション」は、日本語の「情熱」とは違うのでしょうか。

「情熱」というと何となく、メラメラと燃えて人生のすべてを賭けなければいけない大ごとのようなイメージがあります。

でも、「パッション」はそんな大げさなことじゃなくてもかまわない。心の中に芽生えた「好き」という感情や、自分を笑顔にしてくれるような楽しいと思えることもパッションなんです。例えば、私はパンが大好きなんですけど、この「パンが好き」というのもパッションの一つといえますね。

パッションにも、内向きと外向きのパッションがあって、「パンが好き」は自分に向けられた内向きのパッション。まず行動するにはパッションが必要なので、自己満足や自己実現のための内向きのパッションもとても大切なんですが、これはいわば「一人勝ちのパッション」です。

一人勝ちの世界って、ものすごく狭くて寂しい世界。幸せというのは、みんなで分け合うことがとても重要だと私は思っています。

そこで、パッションを自分以外の誰かのために向けると、外向きのパッションになります。

パンが好きな人なら、おいしいパン屋さんの情報をSNSなどで発信したり、自分でパンを焼いて寄付したり。誰かを幸せにすることに自分のパッションを使って、誰かの役に立つことができたときの感情ほど、自分を幸せにするものはないと思うんです。

ケーキは分け合うほどにおいしい

「幸せは分け合うほどに増すもの」とボークさんは語る。

Shutterstock

——「誰かの役に立つ」という発想は、「ノブレス・オブリージュ」という言葉に象徴されるようなキリスト教的価値観にも通じますね。一方、日本では「人のため」という行為に対しては「綺麗事だ」「偽善だ」というようなバッシングも起こりやすいように感じます。

日本の多くの家庭では、子どもは「人に迷惑をかけないように」と言われて育ちますよね。老後のこともそう。人様に迷惑をかけずに生きたい、という発想になりがちです。

誰かの役に立つように育てられてこなかったから、人に迷惑さえかけなければいいといった、どうしても内向きのパッションで止まってしまうんですね。

でも考えてみてほしいんです。「自分さえよければいい」という発想に、本当の幸せはあるのかを。

私は、幸せは分けることによって何十倍にもなるものだと思っています。

丸いケーキを何人もで取り分けたら1人あたりの取り分は薄っぺらくなってしまうけれど、おいしいですよね。逆に、独りで食べても味気ないでしょう? 日本でもぜひもっと、誰かの役に立つことを考える方向に発想を変えていってほしいです。

そこで役立つのはお子さんへの質問の仕方を変えることです。「大人になったら何になりたい?」ではなく「大きくなったらどんな大人になりたい?」というように。

質問の仕方が変われば、答えも「サッカー選手になりたい」から「僕が一生懸命走る姿で多くの人を元気にしたいから、サッカー選手になりたい」に変わってきます。パッションが自然と外向きになるような問いかけが重要です。

私たちは「言い訳と自分いじめの天才」

ボーク重子

質問の仕方ひとつで子どものパッションが「外向き」に変わることも。

撮影:今村拓馬

——仮に「パンが好き」などの内向きのパッションがあったとして、それを外向きのパッションに変えるには、かなりの勇気が必要だと感じます。パッションはあっても、「どうせ私には無理」といったネガティブな心の声に抑え込まれてしまうことも多いですよね。

何かをやるには変わらないといけない。変わるって大変なことなんですよ。だから、どうしても最初に口をついて出てくるのは、自分を守るための言い訳なんです。

「これは無理」「失敗しそう」と言い訳していって、自分で自分の可能性に蓋をしてしまう。さらに「自分にはそんな能力はない」など、自分のことをいじめて過小評価して、前に進めなくしてしまう。

私たちは「言い訳と自分いじめの天才」なんです。

——実は私もそういう経験があります。個人的な話ですが、靴職人になりたいと思ったことがあったんです。でも、やはり心の中でブレーキがかかりました。「それで食べていけるの?」と。

「それで食べていけるのか」という問題は、多くの人が経験する葛藤ですよね。

でもパッションって、必ずしも食べていけるものでなければいけないとは、私は思っていないんですよ。もちろん、経済的自立がなければ自分で選ぶ力を手放すことになってしまうので、自分でちゃんとお金を稼いで生活していく力というのは、大前提として必要です。

今はこれでは食べていけないから、別の仕事をする。でもそこで、自分を笑顔にしてくれるものへのパッションを諦めてしまう必要は、まったくないと思っています。

今やっている仕事を、「生活のための仕事」ではなく、「パッションを支えるための仕事」だととらえてみる。そうすると、まったく意味合いが変わってきます。そして、小さなことでかまわないので、パッションを続けるためにできることにトライしてみることが大事だと思います。

※明日へつづく

(構成・岩本恵美、取材/編集・常盤亜由子)


ボーク重子:作家、ICF会員ライフコーチ。福島県出身、米・ワシントンDC在住。30歳目前に渡英、サザビーズ・インスティテュート・オブ・アートにて修士号を取得。南仏の語学学校でアメリカ人である現在の夫と出会い、1998年渡米、出産。2004年にはワシントンDCにてアジア現代アートギャラリーをオープン。現在はライフコーチとして活躍中。一人娘は2017年「全米最優秀女子高生」コンテストで優勝している。

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