2018年12月1日にカナダで逮捕されたファーウェイの孟晩舟副会長兼CFO
REUTERS/Ben Nelms
中国通信大手ファーウェイ(華為技術)の創業者の娘で、副会長兼最高財務責任者(CFO)の孟晩舟氏が、バンクーバーで逮捕されてから1年。アメリカへの身柄を引き渡すかどうかの審理が進む中、同氏は12月2日、ファーウェイの社内掲示板「心声社区」に、心境をつづった。
孟氏は逮捕からの1年を「恐怖と苦痛、失望、むなしさ、苛立ち、もがきを経験した」と述べ、同時に「屈せずに耐えること、苦境にあってもじたばたしないこと、未知を恐れないことを学んだ」とも振り返った。
孟氏は外出時は保釈時の条件により足首にGPSをつけている。
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分刻みのスケジュールに追われ、さまざまな仕事を並行処理する生活が逮捕で一転、バンクーバーでは本を読み、油絵に取り組んでいると明かし、「多忙は時間を短くし、苦難は歳月を長くする」と慣れない生活への戸惑いもにじませた。
孟氏は審理の度に仲間たちが足を運んでくれることや、バンクーバーの拘置所の看守、警備スタッフが親切にしてくれたことなど、自身をめぐるさまざまな人々に感謝の念を表したが、米中貿易摩擦など政治的な問題や、ファーウェイの経営については触れなかった。
孟氏は2018年12月1日、出張中のトランジットで降りたバンクーバーで、イラン制裁に違反した疑いなどでアメリカの要請を受けたカナダ当局に逮捕された。現在は保釈され、GPSを身に着けるなど監視下に置かれた状態でバンクーバーに滞在している。アメリカが孟氏の身柄引き渡しを求めており、予備審理を経て2020年1月から本格的な審理が始まる予定だ。
アメリカのトランプ政権は以前から「ファーウェイ排除」の姿勢を表明していたが、孟氏の逮捕をきっかけに米中貿易摩擦は一層深刻化。アメリカ政府は2019年5月にファーウェイを輸出規制リストに掲載し、両国が追加関税を発動しあうなど、世界経済全体に影響が及んでいる。
(文・浦上早苗)