Illustration by US Army CCDC
- 米国防総省のBiotechnologies for Health and Human Performance Councilが実施し、米陸軍戦闘能力開発司令部(CCDC)が公表した最新調査は、2050年までに「サイボーグ兵」が現実になるだろうとしている。
- テクノロジーの進歩によって、視覚、聴覚、筋肉、神経が強化された兵士が誕生するだろうと、同調査は予測している。
- 例えば、脳インプラントは脳とマシンのつながりを促進し、兵士に同時に複数のドローンをコントロールできる能力をもたらすという。
バイオエンジニアリングといったテクノロジーの進歩によって脳とマシンを直接つなげることで、戦場でドローンの大群をコントロールする兵士のいる未来を想像してみてほしい。米軍はこれが今後30年以内に現実になるだろうと考えている。
軍事専門家は、少なくとも今世紀半ばにはさまざまなテクノロジーの台頭によっていわゆる「サイボーグ兵」が誕生すると見ている。人間とマシンの間の直接のやりとりやデータ転送を可能にする脳インプラントもその一例だ。
米陸軍戦闘能力開発司令部(CCDC)の最新調査によると、米軍は2050年までに戦闘で有利になるよう人間の兵士をテクノロジーで改造できるだろうと考えている。
CCDCの化学生物センター(Chemical Biological Center)の研究者で、同調査の筆頭著者でもあるピーター・エマニュエル(Peter Emanuel)博士は、「生物学、工学、人工知能(AI)を集結させることで、人間の見たり、聞いたり、考えたり、コミュニケーションを取ったり、動いたりする方法を変え、強化することができるだろう」と述べている。
エマニュエル氏は、医学や社会の発展によって、人工装具やペースメーカーのようなインプラントの分野が大きく発展するだろうと見ていると、Insiderに語った。
レポート『Cyborg Soldier 2050: Human/Machine Fusion and the Implications for the Future of the DOD(サイボーグ兵 2050:人間と機械の融合および国防総省の未来への影響)』は、人間の視覚を通常の可視スペクトルを超えて強化する可能性について議論している。
他にも、聴力やコミュニケーション力を向上させたり、反響定位を通じてターゲットを追跡するために兵士の聴覚を強化したり、兵士の筋肉制御を調整して戦闘能力を上げるなどの可能性が検討されている。
だが、最も興味深い —— そして、まるでSFの世界の話のように見える —— アイデアの1つは、兵士が複数のドローンやさまざまな兵器システム、その他、リモートで操作できる機械を思った通りにコントロールできるようになる脳インプラントの可能性だろう。
レポートは「ブレイン・コンピューター・インターフェイス(BCI)の脳インプラントが、人間とマシンのシームレスな相互作用を可能にするだろう。これにより、ドローンや兵器システム、その他の強化された人間が操作するリモートシステムをコントロールできる」という。
ただ、そこに至るには、越えなければならない技術的な高いハードルがあるのは間違いない。
「データ交換のレベルを細胞レベルにまで落とせるようになる必要がある」とエマニュエル氏はBusiness Insiderに語った。同氏は「細胞レベルにまで落とした時点で、特定の神経細胞シナプスのデータイベントをコントロールできる」という。
「それにより、双方向で大量のデータ転送が可能になる」
エマニュエル氏は、今も取り組みは進められているものの、この技術的飛躍は恐らく、まだ少なくとも10年は先のことだろうと話している。
国防総省のBiotechnologies for Health and Human Performance Councilが実施したこの研究は、特殊部隊の兵士やパイロット、ドローンのオペレーター、諜報員が脳インプラントを2030年までに使うようになるだろうと見ている。
「人間のニューラルネットワークとマイクロエレクトロニクス・システムが直接データ交換できるようになれば、戦術的な兵士のコミュニケーションに革命をもたらし、指揮命令系統全体にわたる知識の移転を加速させ、最終的には戦場の"霧"を晴らすことができるだろう」と指摘する。
だが、エマニュエル氏は米軍の声明文の中で、「最終的にこうしたテクノロジーは戦闘の範囲を超えるだろう。わたしたちの世界の捉え方や人間であることの意味を変えていくだろう」と述べている。
(翻訳、編集:山口佳美)