出典:法政大学公式インスタグラムより
法政大学が11月29日に出したミス/ミスターコンイベントの見解にまつわる声明が、ネット上で話題を集めている。ことの発端は法政大学の学生らが非公認で「ミスター法政コンテスト」の開催を進めていたこと。法政大学では長らくミス/ミスターコンが開催されておらず、大学側がこの一連の動きについて声明を出す事態となった。
2019年、一部の学生が自主的に発足したミスターコン運営委員会は、全国の大学でミスコンを主催するイベント会社「株式会社エイジ・エンタテインメント」と連携をしサイトを展開。12月6日金曜日にコンテストが開催される予定だ。
法政大学は学生に向け「容認できない」
大学側が全生徒に宛て一斉メール送信した文書には、法政大のダイバーシティー宣言に触れながら「ミス/ミスターコンテスト」のように主観に基づいて人を順位付けする行為は「多様な人格への敬意」と相反するものである、容認できるものではありません」と明記。大学施設を利用しての開催は一切容認しないとしている。
これに対し、Twitter上では賛否両論が渦巻いている。声明に対して「法政らしくていい」「考え方が好きで、かっこいい」といった賛同意見がある一方で、「学生の自由を排除している」「大学主催ではなく学生主催がやるイベントを締め付けるのはつまらない」などの反対意見もあった。
さまざまな意見が飛び交うも、開催予定か
これを受け、主催者側は公式Twitterで「大学の声明につきましては後日、作成中のホームページにて運営の見解を発表する」とした。開催場所もすでに発表されており、大学の敷地外で開催されることとなりそうだ。
この見解について筆者は主催者側に取材を試みたが、12月5日午前10時現在回答は寄せられていない。しかし、筆者と主催者とのTwitter上のDMによると、開催する理由は「法政本来の自由なキャンパスで、自主的な学生が自分の夢に邁進できる大学が失われているから」だと説明をしていた。
さらに主催者側は「1980年代以来、なくなったミスターコンを復活させることにより、頑張っている学生を広く知ってもらい『私にもなにかできるかも』と思ってもらいたい」としている。
ミスコンを中止している大学続々
早稲田大学もミスコンを開催していない。
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近年、ミスコン/ミスターコンの開催を中止する大学が増えている。理由はジェンダー問題や不祥事など、大学によってさまざまだ。現在ミスコンを開催していない大学を調べてみると、主なところでは早稲田大学、国際基督教大学、東京芸術大学などが挙がる。
早稲田祭広報担当者によると、同大学は「2003年までミス早稲田キャンパスアイドルコンテストを開催していた」という。中止理由は大学内の過去の不祥事が関与している。早稲田大学広報課は「学生サークルによる開催も一切認めていない」と回答。
2016年に同大学はミスコンを認めない旨の文書を出している。
また、ミスコンの趣旨そのものが人権侵害に当たる可能性があることを理由に異を唱えている大学もある。国際基督教大学(以下ICU)は大学側がミスコンへ異議を唱える見解を2011年に発表した。
ミスコン開催を禁止するものではないものの、キャンパス内に人権侵害をもたらす恐れのある企画に、自発的な再考を望むと表明。ICUでは未だミスコンは開催されていない。
「ミスコンがある種の外見/能力/振舞の人間像を規範とする抑圧構造に依拠するものであることには、過去20余年、多くの議論の蓄積があります。
日々、見つめられ、判断される、個々人への視線の暴力を、ICU祭の場で、キャンパスで、再生産することに異議を唱えます。
特技やパフォーマンスを評価基準に加えることで、ミスコンが持つ「規範による人間の序列化」が無化されるものではありません。
またポータルサイトを利用することにより、参加者が客体化され管理不可能な場に流通していき、想定外の人権侵害を引き起こす危険性も憂慮されます。
※ICUジェンダー研究センター(CGS)運営委員有志の見解より抜粋」
最近では、東京芸術大学が2018年に開催予定だった学園祭「藝祭」内でのミスコンを開催前に中止発表した。
同大にはもともと、男女問わず参加することができて、さまざまな価値観で「美」を表現しようという独自の「ミス藝大」が開催されている。中止になったミスコンは、これとは別に、女性を容姿で評価しようという一般的なミスコンを開催してほしいという要望に答えた「裏ミス藝大」だった。学生が自主的に企画したものだったという。
ハフィントンポストなどの報道によると、藝祭実行委員会の中止を伝えるメールでは「企画してしまったことを浅はかだと痛感している」と書かれていた。
ミスコンがもたらすプラスの効果はあるか?
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記憶に新しいミスコンと言えば、2019年10月に起きた「ミス慶応」をめぐる騒動だ。ファイナリストの中の1人がセクハラの被害者だったことが週刊誌で報じられ、「ミス慶應コンテスト2019」が中止された。主催者側は中止理由について、セクハラ告発には触れず、候補者の過半数が辞退の意向を示したからだ、としている。
近年の#MeToo運動の世界的な盛り上がりからみても、容姿で優劣をつけるというコンセプトが時代にそぐわないなどミスコンに対する違和感は膨らんでいる。ただ、ミスコンは実質的にアナウンサーへの登竜門であったり、少子化時代に大学が入学希望者を集めることに一役買っていたりと、支持する声も一部にはある。
時代の変わり目に賛否が飛び交う中、ミスコン/ミスターコンのあり方が改めて問われている。
(文・三田理紗子)