中国スマホ大手で、世界4位のシェアを持つシャオミ(Xiaomi、小米科技)の日本市場参入会見が12月9日、東京都内のホテルで行われた。中華系スマホの区別がつかない人向けに簡単に説明すると、シャオミは「中国のスティーブ・ジョブズ」と呼ばれる雷軍CEOのカリスマ性を武器に、中国メーカーの中では一番早く若年層の支持を集めたブランドだ。ファーウェイが中国を代表する“学級委員長”なら、シャオミは“サッカー部のキャプテン”というと、何となく立ち位置が分かってもらえるだろうか。
椅子も資料も足りなかったシャオミの記者会見。関心の高さを反映している。
浦上早苗
今回、筆者は、どこからも原稿を頼まれていないにもかかわらず、興味半分で記者会見に出かけた。到着すると、会場のキャパをはるかに超える記者たちが受付で列をなしている。席はもちろん資料も不足しており、受付作業も途中で打ち切り。スタッフに「資料はメールでお送りしますので、名刺だけください」と言われながら、会場に入った。入り口近くで何とか立ち見ができる状態、資料ももらえなかったため、本当に「見物に来た野次馬」気分で、弛緩して会見を見ていた。
価格の発表に会場からどよめき
シャオミが日本市場に投入するスマートフォン「Mi Note 10」は、1億800万画素、5眼カメラ搭載など、とにかくカメラのすごさを打ち出した機種だ。
シャオミの発表会にはパターンがある。まず性能の良さをアピールし、競合メーカーの同程度の性能を持つ機種と比較する表を見せ、最後に価格を発表。コスパの良さをどんどんどーん!と打ち出すのだ。
今回も、「さて、皆さんが一番興味のある価格ですが」と前置きし、ソニーやアップルの端末と比較した後に、「5万2800円(税別)」(6GB、128GB)という価格を発表した。
その瞬間、10万円前後の価格設定に慣れきった記者たちのどよめきが起きた。私のすぐ隣にいた記者からも「やすっ」との声が上がった。12月9日16時半からアマゾンで予約注文を始めるという。
その後、スマートウォッチも発表されたが、急いで原稿を書かないといけないメディアは、ちらほら席を立ち始めた。
日本人開発の炊飯器が“里帰り”
炊飯器が9999円と発表されると、再びどよめきが起きた。
スマートウォッチの紹介も終わり、そろそろ終了かなあと思っていたら、ワン氏は続いて炊飯器のプレゼンを始めた。ここで炊飯器?と意表を突かれたが、シャオミはスマート家電分野では中国トップ企業だし、同社の炊飯器は元三洋電機のエンジニア、内藤毅氏が開発しているので、「そっか、ある意味里帰りなんだ」と納得した。
ワン氏が「シャオミのIoT炊飯器はスマホのアプリから炊飯のスイッチを入れられる」と説明するのを聞いて、炊飯器なんてタイマー機能で予約すればいいじゃん。帰宅した瞬間に炊き立てのご飯が食べたいとか、そんな需要あるのか? 頭の中を「?」が駆け巡り、思わず同世代の女友達にLINEする。
「アプリでスイッチ入れられる炊飯器ってどう?」
「それって、思い立ったときに炊きたいって需要があるかどうかですよね。うーん」
もやもやしてるうちに詳細な説明を聞き逃したが、またもやワン氏の「気になるお値段です」との言葉で我に返った。
スクリーンに「9999円」と表示されると、またしてもどよめきが起きた(このどよめきが何を意味しているのか、もはや分からない)。
競合はサムスンでなくサムソナイト
発表会のしめはまさかのスーツケースだった。
ここで終わるかと思いきや、まだあった。次の発表は何とスーツケース。
「なぜシャオミがスーツケースを出すのか」と説明があった気もするが、もう頭に入ってこない。IoT機能はついてない、ごくごく一般的なスーツケース。なんなんだ。なぜなんだ。
そして再び、競合メーカーとの比較。今回の比較対象は、「サムソナイト」だ。スマホメーカーのサムスンじゃなくて、サムソナイト。
そして気になるお値段は……1万7900円(税別)。
ああ、もう檀上に立ってるワン氏が「お値段たったの●●円!」と叫ぶジャパネットたかたの高田明前社長にしか見えない。記者会見が終わり、テレビショッピングをライブで見たような、そんな不思議な余韻が残る会見だった。どうせなら、「スマホを買ったら炊飯器とスーツケースもついてきます!」とやってほしかった。いるかいらないかはともかく。
以上、現場からの報告でした。
(文・浦上早苗)
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