米アップルCEOのティム・クック氏は、日本でスケジュール共有アプリを展開する「TimeTree」を訪問した。
画像提供:アップル
12月8日に来日した米アップルCEOのTim Cook(ティム・クック)氏。8日にはApple表参道で83歳のアプリ開発者である若宮正子さんと再会。その後、居酒屋でアーティストの星野源さんと歓談した様子をツイートしている。
そして、クック氏が9日に訪れたのはスマートフォン向けスケジュール共有アプリ「TimeTree」のオフィスだ。
TimeTreeはJUBILEE WORKSとして2014年に設立。アプリ公開当初は5名というスモールチームだったが、App Storeの「Best of 2015」に選出されて以来、急激にユーザー数が増加。2019年9月に社名をアプリ名と統一化し、現在は1900万人のユーザーを抱えるサービスに成長している。
クック氏がTimeTreeのオフィスに入る際に注目したエントランスの小物。Macintoshをイメージしたもので、TimeTree社員が端材から作ったものだという。
撮影:小林優多郎
クック氏は、オフィス来訪後に、TimeTree代表の深川泰斗氏と会談。TimeTreeの名前の由来や海外展開や今後の機能について質問をしていた。
その後、TimeTreeのエンジニアの元に出向き、開発の様子や使っている技術について意見を交わすなど、積極的に交流を深めていた。
印象的だったのは、クック氏は自らアプリ開発者の代表やエンジニアに対し、フィードバックを細かく求めていた点だ。
TimeTreeアプリをクック氏(写真右)に実際に見せながら特徴を解説する深川氏(左)。
画像提供:アップル
例えば、エンジニアにはiOS 13/iPadOS 13で実装された「ダークモード」の感想や、機械学習フレームワークである「Core ML」についての意見を求めた。また、代表者には「現在提供しているツールに不満はないか?」といった質問を投げかけ、非常にフレンドリーで和やかな雰囲気だった。
日本の成功事例に「エキサイティング」
開発者と直接コミュニケーションをとるクック氏。
画像提供:アップル
TimeTreeの訪問を終えたクック氏に、Business Insider Japanは、今回の日本訪問で得られたものについて聞いた。
クック氏は落ち着いた口ぶりながらも、日本のアプリ市場の成長についてポジティブな感想を熱く語った。前述のフレンドリーな雰囲気も、クック氏自身が開発者と直接出会うことを楽しみにしていたことが伝わってきた。
「世界で最もクリエイティブで、イノベーティブな人たちは常に次に何が来るのか、未来に目を向けています。
日本でiPhoneおよびiPad向けアプリを開発している人々は、現在60万人。この5年間で急激に伸びており、そこにものすごい勢いがあるわけです。
(TimeTreeが)ここ数年で5名から40名規模の会社になった理由はわかります。このようなサクセスストーリー(成功事例)が日本中で起きていて、とてもエキサイティングです。
最近聞くようになったのは、(そのような)日本の開発者は国内市場に加え、さらに海外展開にも力を入れています。TimeTreeも、アメリカや台湾、韓国に注力していますし、そして今後はヨーロッパに拡大していくと聞きました。
多くの日本企業がグローバル企業に発展している。それを聞くと本当にうれしく感じる」(クック氏)
開発者側はCEO訪問に「勇気をもらった」
TimeTreeの創業者の1人で代表取締役を務める深川泰斗氏。
撮影:小林優多郎
一方、TimeTreeの深川氏は「(クック氏から)勇気をもらった。設立から5年経ったが、今までやってきたことは間違いではなかったのだと感じた」とクック氏の訪問が自信につながったと言う。
TimeTreeは現在、日本の次にドイツ、台湾、アメリカの順にユーザーを獲得しており、おもに30代前後のファミリー層から支持を得ている。11月22日からテレビCMを放映するなどユーザー規模拡大に注力している。
深川氏は今後の展開について「TimeTreeを社会的なインフラに成長させたい」と言い、日本に限らず世界のユーザーに対し、円滑なコミュニケーションの機会をTimeTreeで提供していきたいと語った。
(文・小林優多郎、翻訳・SAMSON YEE)