新型スマートフォン「Mi Note 10」をアピールするXiaomiの東アジア地域ジェネラルマネージャーのSteven Wang氏。
撮影:小山安博
中国メーカー・Xiaomi(シャオミ)が、日本初参入となる新製品の発表会を開催した。
世界第4位のスマートフォンメーカーとしてだけではなく「2億台以上のIoT機器が世界で稼働するプラットフォーマーである」と、シャオミの東アジア地域ジェネラルマネージャーのSteven Wang氏はアピール。今後、日本市場でも順次製品を拡大していく意向を示した。
シャオミは、創業9年の若いテクノロジー企業ながら、香港株式市場にも上場し、全米上位500社の「Fortune 500」に創業から最短で選ばれた企業だった。90以上の市場でスマートフォン製品を投入し、そのうち42市場で首位を獲得しているなど、市場を席巻している。
スマートフォンブランドとしては世界4位のシェア。
Wang氏は、シャオミがスマートフォンメーカーとしてだけでなく、280社以上の企業と連携した2000種類以上のIoT製品を投入しているIoTベンダーである点もアピール。IoT製品の接続台数はグローバルで2億1320万台以上になり、「世界最大級のIoTプラットフォーム」(Wang氏)だとしている。
トータル戦略でハードウェアは「金額に見合った価値」で提供
重視しているのは「イノベーション」「デザイン」「品質」そして「適正な価格」だという。
イノベーションという側面で言えば、5G対応スマートフォン「Mi MIX 3 5G」や、前面から側面、背面にいたるまでを1枚のディスプレイで覆ったスマートフォン「Mi MIX Alpha」といった先進的なスマートフォンを日本国外で発表している。
デザイン性については、すでに400以上のインダストリアルデザイン賞を世界各地で受賞。Wang氏曰く「シャオミだとひと目で分かる"Mi-Look"と言われるほどになった」と言う。
Mi MIXには著名なインダストリアルデザイナーのフィリップ・スタルク氏を起用し、各地の美術館で展示された点なども紹介していた。
「全面」に渡ってディスプレイを配置した「Mi MIX Alpha」。発表会場では、ガラスケース内でプロトタイプが展示されていた。
しかし、デザインがよくても一定の品質が保たれてなければ意味がない。
「イノベーションがどれだけ高く飛べるかを決定し、品質がどれだけ遠くに行けるかを決定する」とWang氏。品質が悪ければユーザーは離れてしまうため、「品質が一番大事」と同氏は強調する。
そして、「金額に見合った価値」を提供することも重視。2018年から、同社のハードウェア事業は全体の純利益が5%を超えないように設計。これは、「ほとんど原価と同じ価格でハードウェア製品が手に入る」(Wang氏)。
インターネット企業として、サービスの料金などで利益を得るビジネスモデルで、過去にはウェアラブル製品を低価格で販売して一気に市場を奪った例などもあり、市場シェアを拡大することでトータルでの利益を目指す戦略だ。
1億800万画素センサーカメラのスマホからスーツケースまで
スマートフォンだけでなく、IoT製品やトラベル製品を投入。
そして今回、ついに日本市場への参入を発表した同社。日本で発売となる製品は以下の通りだ(価格はいずれも税別)。
- スマートフォン「Mi Note 10」……5万2800円
- スマートフォン「Mi Note 10 Pro」……6万4800円
- ウェアラブル「Mi スマートバンド 4」……3490円
- モバイルバッテリー「10,000mAh Mi 18W 急速充電パワーバンク3」……1899円
- 「Xiaomiメタルキャリーオンスースケース 20インチ」……1万7900円
- 「Xiaomiスーツケース クラシック 20インチ」……7990円
- 「Mi IH炊飯器」……9999円
スマートフォン以外にもIoT製品を含めて投入。どの製品も比較的容易に購入できる価格帯に抑えて、Xiaomiのブランド向上を狙う。日本市場でのブランド向上を目指す。
「Mi Note 10」。
特にMi Note 10を最初の製品に選択したのは戦略的だ。Mi Note 10はスマートフォンカメラとしては世界最高画素となる1億800万画素(108MP)という超高画素のセンサーを搭載する。
現在、多くても4800万画素止まりのスマートフォンカメラ市場において、1億を超える画素のセンサーを採用したのは世界で初めて。デジタルカメラでもこれだけ多画素のセンサーを搭載した機種はほとんどなく、100万円を超えるプロ用のカメラで1億画素を超えている例はあるが、スマートフォンでは例がない。
世界で初めて1億800万画素という超高画素センサーを搭載。さらに、全部で5つのカメラを搭載して使い勝手を高めた。
超高画素により、大判ポスターへの印刷も可能な解像度を実現。
日本のカメラ技術はグローバル的に知名度が高く、シャオミは日本にもカメラ関連の研究所を設けて開発を強化。そうした点からも、日本で先進性をアピールする端末として、まずはMi Note 10の2機種を選択した。
カメラ関連の研究開発拠点は世界に9カ所あり、日本は東京に設立されている。
“分離政策”により中価格帯のニーズが高まる日本
日本市場は10月の改正電気通信事業法の施行で、携帯電話の販売と回線の契約が分離され、端末の値引き販売に規制が入った。
その結果、高額端末の売上が減少する代わりに、価格の低いエントリー機からミドルレンジの端末販売が拡大するとみられている。さらに、キャリアを経由しないSIMフリー端末の販売も増加すると期待されている。
こうした状況で、「金額に見合った価値」を目指すシャオミの端末が日本市場に受け入れられる素地ができたと判断。このタイミングでの参入になった、としている。
大きなセンサーサイズを採用するなどカメラに注力はしているが、Mi Note 10は基本性能と価格帯としては“ハイミドル”の端末となる。
例えば、新製品のMi Note 10は5万2800円。Wang氏は、日本市場で人気のアップルの「iPhone 11 Pro Max」やソニーモバイルの「Xperia 5」、サムスンの「Galaxy Note 10+」よりも安価な点を挙げていたが、この3機種はフラグシップと言える性能を持つ故にフェアな比較ではない面もある。競合するものは、例えば「Xperia 8」「HUAWEI nova 5T」「OPPO R17 Pro」といった、いわゆるハイミッドレンジの製品となる。
この価格帯は、現在の日本市場では2〜3万円台、10万円台と両極端に触れているため、機種の種類が多い層とは言えない。今後性能と価格のバランスが取れた価格帯として、市場が拡大する可能性もある。シャオミでは、スペックとブランドを前面に出すことで、シェア拡大を図る考えだ。
日本向けモデル、5Gモデル開発にも意欲
常時身につけられるウェアラブル端末Miスマートバンド4。
今後の製品戦略についてWang氏は、「日本市場は特別なカスタマイズがすべての製品で必要になる」としつつ、「日本市場向けにIoT製品は今後どんどん導入する」と強調。
スライド式のインカメラを備える5Gスマートフォン「Mi MIX 3 5G」。
スマートフォンに関しても、5G開始直前の参入と言うこともあり、来年の5Gへの端末投入も示唆する。
日本市場でのブランド力向上には、サポート面での取り組みも必要になってくる。ストアの出店に関して現時点で明言していないが、今後の商品展開に加えてサポート体制の構築が、シャオミの日本参入における成功の鍵を握っているのは間違いないだろう。
(文、撮影・小山安博)
小山安博:ネットニュース編集部で編集者兼記者、デスクを経て2005年6月から独立して現在に至る。専門はセキュリティ、デジカメ、携帯電話など。発表会取材、インタビュー取材、海外取材、製品レビューまで幅広く手がける。