現実味帯びる「中ロ同盟」とミサイル軍拡。日韓・米中対立、米朝停滞のスキに

習近平とプーチン

6月、習近平国家主席はロシアを訪問。中国とロシアの軍事協力はますます現実味を帯びてきている。

REUTERS / Evgenia Novozhenina

中国とロシアが軍事協力を加速し、事実上の「中ロ同盟」が現実味を帯びてきた。トランプ政権によるアメリカの中距離核戦力(INF)全廃条約からの離脱が、両国を引き寄せる形となった。

東アジア外交と安全保障の枠組みを変化させる中ロ軍事協力には北朝鮮も接近しており、足踏み状態の米朝関係を揺るがすだろう。

同盟国と呼んだプーチン

この7月23日、中ロ軍用機4機が編隊を組み、竹島(韓国名・トクト)「領空」を侵犯した。中ロの軍用機が同時に、韓国の防空識別圏に入ったのは初めてだった。日韓対立が先鋭化したタイミングをみれば、日米韓の防衛協力体制が機能しているかどうかを試そうとしたのは間違いない。

それだけではない。プーチン・ロシア大統領は10月3日、ロシア南部ソチでの国際会議で、中国を「同盟国」と呼び、「中国の(ミサイル防衛のための)早期警戒システム開発を支援している」と明らかにした。早期警戒システムはロシアとアメリカしか保有しておらず、発言は、「中ロ同盟」のリアリティを一気に高めた。

飛躍的に発展した軍事協力

クリミア半島併合

2014年3月、ロシアがクリミア半島を併合したことで米ロ関係は悪化、結果として中ロが接近する要因の一つにもなった。

REUTERS/Thomas Peter

確かに、中ロ軍事協力は目を見張るものがある。2014年のロシアによるクリミア併合と西側の対ロ制裁によって「米ロ関係は戦後最悪の状態」とみるロシア関係者は多い。

一方、米中貿易摩擦をはじめ香港、台湾、新疆ウイグル問題で、米中対立は一層激化しており、アメリカに対抗する上で、中ロの利益は完全に一致する。

習近平国家主席は2019年6月、「中ソ国交樹立70周年」行事出席のためサンクトペテルブルグを訪問した際、両国関係を「過去最高の水準」と形容した。続く7月に、中国が発表した4年ぶりの国防白書でも、ロシア軍との協力を「世界の安定に重要な意義がある」と明記する。

両国は旧ソ連時代の1969年、国境の黒竜江(アムール川)の中州で武力衝突。ソ連を継承したロシアにとって中国は「仮想敵」だった。しかし、中国軍は2018年からロシア軍の軍事演習「ボストーク」に参加し、「友軍」になった。

海上演習でも中国艦隊が2015年、黒海のロシア海軍基地を訪問。2016年の「海上連携2016」は南シナ海で実施され、北極版の「氷上シルクロード」 計画でも、対ロ協力を鮮明にしている。

同盟文書調印の情報も

中ロとも表向きは「同盟関係の構築拒否」(2019年6月、中ロ共同声明)をうたう。だがその一方、ロシア政府は7月、中国との軍事協力に関する合意文書の交渉開始を関係部門に指示している。

「合意文書」についてアレクセイ・マスロフ・ロシア国立高等経済学院教授は11月、共同通信のインタビューに「両国指導部は軍事同盟締結を既に決定し、来年にも同盟の合意文書に署名する見通しだ。現在は詰めの協議が行われている」と明かしている。文書に一方が攻撃を受けた際、他方が支援する「『相互援助』条項が盛り込まれるかどうかが焦点」と教授は言う。

GSOMIA継続は米の執念

中国軍事パレード

10月に中国で行われた軍事パレード。トランプ政権によるINF全廃条約からの離脱や、米中貿易摩擦、日韓対立など、東アジアをめぐる安全保障の枠組みは大きく変わりつつある。

Getty Images / Kevin Frayer

なぜ中ロはこれほど軍事連携を加速しているのか。

それはトランプ政権が2019年2月1日、中距離核戦力(INF)全廃条約からの離脱をロシアに通告したのが契機。条約失効(8月2日)と同時に、トランプ政権は日本や韓国を念頭に、中距離ミサイルを新規配備する「アジア・ミサイル網」構想を唱えた。まるで冷戦時代のミサイル軍拡の再現を思わせる。

条約離脱の背景には、中国が条約の枠外で中距離弾道ミサイル技術を開発してきたことへの危機感がある。確かに、中国はアジア太平洋地域で、中距離ミサイルに関しては「圧倒的優位」に立つ。

韓国と日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が11月22日、破棄直前に継続されたのは、決して「日本外交の勝利」ではない。トランプ政権が、土壇場になって積極介入したためだ。「3国防衛協力」の動揺を食い止めなければ、中ロの軍事協力強化に対抗できないという危機感からだった。

中国のミサイル防衛を支援

中ロ連携は朝鮮半島にも及んでいる。

ラブロフ・ロシア外相は11月21日、中国と朝鮮半島問題(核・ミサイル)の解決に向けた行動計画をまとめ、北朝鮮側に伝えたと明かした。前述のようにプーチン大統領は、中国の早期警戒システム開発を支援する方針を表明しており、中ロ朝の「行動計画」は、「ミサイル防衛」がアジェンダだったことがうかがえる。

話を「中ロ同盟」に戻す。両国が進める「新軍事協定」の具体的な内容についてロシア関係筋は、

  1. 安全保障問題における相互行動の組織
  2. ロシア極東の防空システムの中国による利用
  3. より複雑な合同軍事演習や巡回飛行の実施

の3分野だという。

「相互援助」条項など、公式な同盟を形成するかどうかは大きな問題ではない。むしろ日韓米3国連携や北大西洋条約機構(NATO)など動揺する名目上の西側同盟より、事実上の「中ロ同盟」のほうが、東アジアの安全保障の枠組みを変化させる力がある。

北朝鮮合流の可能性

注目すべきは、中ロ連携と北朝鮮との関係である。朝鮮労働党は12月下旬に中央委員会総会を開催する方針で、金正恩委員長は「聖地」の白頭山を再訪した。12月8日には東倉里(トンチャンリ)の衛星発射場で「大きな意義のある実験に成功した」と発表し、トランプ政権を揺さぶる。

北朝鮮は、米朝会談の期限を年末に設定しているが、実現の可能性はほとんどない。アメリカが一方的な非核化要求を撤回しなければ、「新たな道」を選ぶともいう。

「新たな道」には、ミサイル実験の再開なども含まれるとみられるが、それには習近平政権とプーチン政権の意向が十分反映されているはずだ。事実上、中ロ朝の三国連携である。

INF条約の破棄は、トランプ政権にとって高い代償を払う結果になりそうだ。

岡田充:共同通信客員論説委員、桜美林大非常勤講師。共同通信時代、香港、モスクワ、台北各支局長などを歴任。「21世紀中国総研」で「海峡両岸論」を連載中。

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