29歳の市長が推進するベーシックインカム実証実験…「国レベルの格差対策にもなる」

マイケル・タブス氏

カリフォルニア州ストックトン市でのインタビューでベーシックインカム実験について語るマイケル・タブス市長。

Rich Pedroncelli/AP Photo

  • カリフォルニア州ストックトン市では、125名の住民に無条件で月額500ドル(約5万5000円)を給付している。
  • 給付金は、29歳の市長マイケル・タブス(Micheal Tubbs)氏が実施するベーシックインカム導入実験の一環。
  • 中間集計で多くの被験者が給付金を日用品や生活費の支払いに使ったことが明らかに。
  • タブス氏は中間集計を経て、ベーシックインカム制度がストックトン市に貢献するだけでなく、収入格差に対する国家レベルの解決策になると確信したとBusiness Insiderに話した。

ストックトン市のマイケル・タブス(Micheal Tubbs)市長が、ベーシックインカムの導入実験を始めたのは彼がまだ28歳の時だった。2019年2月、ストックトン市は平均程度(年収約4万6000ドル=約500万円)かそれ以下の収入で暮らす125人の住民を対象に月額500ドル(約5万5000円)の給付を開始した。これはベーシックインカムの導入実験で、基本的に無条件で給付される。ストックトン市は10月に初めて、プログラムの進捗についてまとまったデータを公表した。この中間集計で、多くの被験者が給付金を日用品や生活費の支払いに使用したことが明らかになった。タブス市長は中間集計を経て、ベーシックインカム制度がストックトン市に貢献するだけでなく、収入格差に対する国家レベルの解決策になりうるという思いを強めたとBusiness Insiderに話した。

ベーシックインカムについて話せるようになった

ベーシックインカムには、無条件の給付が就労意欲を低下させ、分不相応な購買へ向かわせるという批判もある。だがタブス氏は、今回の中間集計がそうではない結果を示したことに驚きはないと話す。「私は彼らが、我々と同じように生活必需品からお金を使うと思っていた」とタブス氏は被験者の傾向について話した。平均すると、被験者は給付金の大部分(約40%)を食料品と水に、24%をウォールマートといったスパーマーケットや1ドルストアでの買い物に使用したという。残りの11%は公共料金の支払い、9%はガソリンや車の修理に使われた。

質問に答えるマイケル・タブス市長。カリフォルニア州サクラメント、2018年7月10日。

質問に答えるマイケル・タブス市長。カリフォルニア州サクラメント、2018年7月10日。

Rich Pedroncelli/AP

だが一部の住民は、給付金をタブス氏も予見しなかった物事に使ったという。ある男性は、公共の場で気兼ねなく笑えるようになりたいと、支給金で義歯を購入したという。また別のある女性は、心筋梗塞を患った夫の世話をするため、給付金を使って休暇を取ったという。「中流階級の白人で、カリフォルニア大学サンタバーバラ校を卒業し、小規模ビジネスのオーナーでもあるロイが、500ドルを活用することでナッシュビルに住む家族を訪ねられたという話を聞くと、孫にポテトチップスや誕生日プレゼントを買い与えてくれた祖母のことを思い出す」とタブス氏は話した。人々はお金の賢い使い方を知っているということを思い出させるとタブス氏は話した。彼は今回の結果が、他の政策立案者にもベーシックインカム制度について検討させると考えている。「約2年前、この社会実験を行うことを発表したとき、人々は恐ろしい、あるいは狂気の沙汰だと思った。だが今では、ある意味では普通の選択肢になりつつある。人々は、実効性について真剣に議論している。そういう意味では、我々は成功したと考えている」とタブス氏は話す。

人々が(ベーシックインカムについて)話せるようになったのだから」

タブス氏は被験者の殆どが女性であることを喜んでいる

給付金を受け取るストックトン市の被験者は70%近くが女性だ。実験を検証する研究者たち(テネシー大学ノックスビル校とペンシルバニア大学のスタッフなどのグループ)によると、女性のほうが男性よりも手紙を開封することが多く、そのためベーシックインカム実験についての通知を女性が先に知ったという。ストックトン市では、公共料金の支払いなど、女性が家庭内の物事を管理するケースが多いとも研究グループは考えている。タブス氏は自身の家庭も同じだという。「私の妻は几帳面だ。彼女が郵便物を整理し、毎週、必ず一緒に確認してくれている」

カリフォルニア州ストックトン市

カリフォルニア州ストックトン市内を歩く女性

AP Photo/Gosia Wozniacka, File

タブス氏は実験の被験者のうち女性が多数を占めたことを良いことだと考えている。タブス氏は女性の教育に投資すると国の歳入とGDPが増加するという世界銀行の研究を引き合いに出した。「私は実は被験者の70%が女性であることを喜んでいる。なぜならこれにより、家族とコミュニティ全体が恩恵を受けるという自信が持てた」とタブス氏は話す。

ストックトン市はベーシックインカムの手本になるか

ストックトン市のベーシックインカム実験は18カ月間の予定で、残すところ8カ月だ。もし実験が上手くいけば、実験の拡大を検討するとタブス市長は言う。ベーシックインカム制度は2020年の再選に向けたタブス氏の主要な政策でもある。「地域住民に、市長として戦っていることを示す」とタブス氏はいう。タブス氏に加えて、民主党の大統領候補アンドリュー・ヤン(Andrew Yang)氏もまた、アメリカ国民を対象としたベーシックインカム制度を提唱している。ヤン氏は政策の一部として、18歳以上のすべての国民を対象に、月1000ドル(約10万8000円)もしくは年1万2000ドル(約130万円)の給付を公約として掲げている。

アンドリュー・ヤン氏

アイオワ州のステート・フェアでのアンドリュー・ヤン氏

Scott Morgan/Reuters

タブス氏は、ストックトン市での実験がアメリカ全土でのベーシックインカム制度運用の実効性を検討する材料となるという(ほとんどのベーシックインカム実験はフィンランドやスペインといった欧州諸国で実施されている)。タブス氏の成果はヤン氏にとっては裏付けになりうるだろう。「彼(ヤン氏)が乗り出したタイミングはよかった。なぜなら、彼が訴える政策が理論上だけのものではなくなったからだ」とタブス氏は話す。

「ストックトン市の例は、彼の政策を現実的で具体的なものと証明した」 しかしタブス氏は、フィンランドのように、セーフティネットの代用として運用される条件付きのベーシックインカム制度には反対している。「私は、すでに存在する救済制度の代わりにベーシックインカムを導入すべきではないと考えている」とタブス氏はいう。だが、タブス氏は無条件のベーシックインカム制度の国単位での実施はまだ難しいだろうと話す。 「国政の指導者、特にホワイトハウスや政権与党である共和党は、まだそこまでに達していない」とタブス氏はいう。

「そこに辿り着くまでには多くの複雑な対話が必要だが、私たちはやらなければならない」

[原文]A 29-year-old mayor is giving his city's poorest residents a basic income of $500 per month. He says the program is a success so far.

(翻訳:忍足亜輝、編集:Toshihiko Inoue)

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