「日本のスマホ市場は閉鎖的で罠だらけ」、中国では「Xiaomiも成功できない」と諦めムード

記者会見

中国のXiaomiが破壊的な価格で日本市場に参入した。

撮影:浦上早苗

サムスン、ファーウェイ、アップルに次いでスマートフォン世界4位の中国メーカー、シャオミ(Xiaomi、小米科技)が12月9日、日本市場に進出した。中国勢としては2018年のOPPO以来の日本参入で、日本のIT・スマホ業界では大きな話題となっているが、中国メディアは日本市場の閉鎖性を理由に、「シャオミが日本で成功することは難しい」と悲観的に見ている。

インド市場では2年近く首位をキープ

xiaomiのCEOツイート

雷軍CEOは日本での記者会見の成功をWeiboで報告した。

Weiboより

シャオミの創業者でもある雷軍CEOは9日、SNSのWeibo(ウェイボ)に「多くのメディアが発表会に来てくれた。日本人が中国の“感動的でお値打ちな商品”を気に入ってくれると信じている!」と投稿、喜びを表現した。

中国のスマホ市場が飽和し、縮小に転じる中、シャオミは成長を続けている。その原動力は海外事業だ。インドでは7四半期連続で首位をキープ。ミャンマーやインドネシアなど、東南アジアの新興国でも高いシェアを誇る。

ただ、東南アジアや欧米など80カ国以上に進出している同社は、韓国に参入したのも2018年。隣国である日韓市場とはしばらく距離を置いてきた。

ガラバコス化の原因は「0円スマホ」

孫正義

契約者を増やすため、ソフトバンクが2008年にiPhoneを独占販売して以降、日本ではiPhoneが手ごろに買えるブランドとなった。

REUTERS/Toru Hanai

中国メーカーにとって、人口が少なく、世界トップのサムスンのおひざ元である韓国市場にうま味が足りないのは、容易に想像がつく。

一方、経済が成熟し、グローバルで有力なスマホメーカーが存在しない日本は、甘い市場にも映る。だが中国メディアは、先に進出したファーウェイやOPPOがメジャーになれない日本を「罠(わなだらけの市場だ」と捉えている。

調査会社IDCによると2019年第2四半期(4ー6月)、日本のスマホ市場はiPhoneのシェアが4割近くを占め、世界首位のサムスンは10%にも満たなかった。

「中国メーカーがどんなに優れた端末を投入しようが、日本人は受け入れない」

中国ではそんな諦めムードが漂っている。

テクノロジーメディアの鳳凰科技はこう指摘する。

「日本は市場が大きく、成長性もあるが、閉鎖的でガラバコス化しており、食い込むのは簡単ではない」


smartphone

日本のスマホ市場はアップルと日本メーカーが圧倒する。

IDC Japan, 8/2019

同メディアは、ガラケー時代からノキア、サムスン、モトローラ、HTCなど世界の名だたるメーカーが拒絶されてきた日本市場の歴史を紹介し、「消費者がスマホを買い替えたくても、キャリアの契約の縛りがあり、自由に買い替えられない」特殊な環境を紹介。キャリアがシェア拡大のために、iPhoneを「0円スマホ」などとタダ同然でばらまいた結果、アメリカ以上のiPhone一強市場が形成されたと説明している。

「日本文化には一種の“極端さ”が存在し、スマホ選びにもその極端さが反映されている」と論評したのは経済メディアの新浪財経だ。

「圧倒的に強い外国メーカーに屈服し、一方で自国ブランドに執着する。だからiPhoneとサムスン以外の外国メーカーの入る隙がなく、海外では存在感のないソニーとシャープが一定のシェアを保てる」

中国はファーウェイ一人勝ち、海外に活路求めるシャオミ

MiNote10_

Xiaomiが日本で発売するMi Note 10。1億画素の5眼カメラを搭載している。

Xiaomi

シャオミの日本進出は中国では「国内不振を背景とする苦肉の策」とも受け止められている。

日本の記者会見で「世界4位」をアピールしたシャオミだが、母国中国ではOPPO、vivoの後塵を拝して5位にとどまる。しかも上位との差は、開いている。調査会社Canalysによると2019年7-9月、シャオミのスマホ出荷台数は前年同期比33%減の8800万台、シェアは9%まで落ちた。

米中貿易摩擦の逆風を受けるファーウェイが、今年に入って中国市場の拡大に全力を上げ、同社の7-9月の中国での出荷台数は同66%増、シェアは44%と一人勝ちになっている。アップルなど他の有力メーカーはそのあおりを受け、軒並みシェアを減らしているが、出荷台数が30%以上減少したのはシャオミのみだ。

成長のために、シャオミが海外に活路を求めるのは必然だが、同社が優勢を保つ東南アジアやインドでは、利幅の大きい高価格帯機種の需要はまだ大きくない。

高スペック機種を割安に提供するシャオミは、5Gの商用化で買い替え需要が見込まれ、通信料金と端末価格を分離する施策によって端末代金の上昇も起きている今が、日本での勝負所と判断したのだろう。シャオミの目の上のたんこぶであるファーウェイがグーグルのサービスを使えず、海外でシェアを落としていることも、後押ししたと思われる。

中国人記者「日本は1週間の給料で新iPhone買える」

シャオミのスマホは、他メーカーの同程度のスペックの端末に比べると、3~4割価格が抑えられている。だが、日本の記者会見に出席した中国人記者は、「所得水準が高く、サラリーマンの給料1週間分で新iPhoneが買える日本で、シャオミの安さがどこまでアピールポイントになるか……」と弱気な見方だった。

その記者は、端末価格が発表された時、会場にいた記者たちからだけでなく、SNSでも「安い」との声が上がるのを見て表情を崩した。

「会見の会場は満席だったし、これだけの注目が集まっているのは意外だった。自信になった。日本市場がもっと多様化することを期待します」

(文・浦上早苗)

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