ゴールドマン・サックス、幹部の個室をオープンオフィスへ移行! だが、科学は生産性と健康に悪影響と示している

ソロモンCEO

ゴールドマン・サックスのCEOデービッド・ソロモン氏。

Reuters

ゴールドマン・サックスのリーダーたちは、モノでいっぱいの個室を捨て、オープンフロア型のオフィスへ移行している。

ゴールドマン・サックスのCEOデービッド・ソロモン氏はニューヨークの従業員に対し、自身を含む幹部はガラスの壁に囲まれたオフィスに代わり、オープンオフィスを導入すると述べた。そうすることで、幹部がより直接、スタッフとやりとりできるようになると、ソロモン氏は言う。

これはソロモン氏が取り入れた多くの現代カルチャーの変化の1つだが、オープンフロアの導入によってソロモン氏は部下に恨まれるかもしれない。

数年に及ぶ科学的調査は、オープンフロアがそこで働く人々にストレスを与え、バーンアウト(燃え尽き)を引き起こし、仕事に対する不満を高めることを示している。

その理由を見ていこう。


オープンオフィスは、仕事に対する満足度を低下させることが研究で分かっている。

頬杖をつく男性

Jetta Productions Inc/Getty Images

2002年、学術誌『Environment and Behavior』に掲載されたある研究では、伝統的なオフィスからオープンオフィスへ移行したカナダのエネルギー会社の従業員を追跡した。アトランティック誌が報じたように、その結果は恐ろしいものだった。オープンオフィスへ移行したことで、従業員たちは職場環境や同僚、自身のパフォーマンスに対してますます嫌な気持ちになり、仕事に対する満足度が低下したと報告したのだ。

オープンオフィスは、プライバシーを奪う。

働く人々

Photo by Oli Scarff/Getty Images

心理学者が「構造的プライバシー」と呼ぶもの —— オフィスで自分のドアを閉めることができる状態 —— がないと、あなたには、集団があなたにアクセスできるかどうかをコントロールする「心理的プライバシー」がないことになる。

アトランティック誌によると、心理的プライバシーはパフォーマンスと満足度をより高めることにつながるという。また、プライバシーがないと、背景の雑音に絶えず悩まされることになる。コーヒーショップの喧騒が創造力をアップさせることが分かっている一方で、科学雑誌『サイエンティフィック・アメリカン』によると、背景の雑音は集中力を妨げ、記憶力を低下させ、片頭痛や潰瘍といったストレス関連の病気を悪化させるという。

オープンオフィスは、心理的ストレスを高める。

頭を抱える女性

Oli Scarff/ Getty Images

コーヒーショップは生産性アップの助けになるのに、なぜオープンオフィスはその妨げになるのだろうか? この疑問には、科学的な答えがある。

カリフォルニア大学バークレー校の認知神経科学者で職場の生産性コンサルタントでもあるサハル・ユーセフ(Sahar Yousef)氏は、人間は「部族」だと言う。つまり、人間は自らの社会集団と心のつながりを築きがちなのだ。

オープンオフィスでは、人々は心のつながりのある同僚とコンスタントにやりとりをすると、ユーセフ氏は指摘する。心理学的に、人間は仕事上のタスクよりも自身の周りの「部族」に気を取られるのだ。

だが、コーヒーショップでは、周囲に自分と心のつながりのある人間はおらず、仕事により集中できる。

「人間の脳は広大なオープンスペースに身を置くようデザインされていない」とユーセフ氏は言う。「心理的にさらにストレスを感じることになる。託児所で仕事を片付けようとするようなものだ」

オープンオフィスは、会話の質を落とす。

おしゃべりをする人

Morsa Images/Getty Images

オープンオフィスでは、確かに会話が頻繁に生まれる。だが、それは得てして「短くて、表面的なものだ」とタイム誌は報じている。「間違いなく、周りで聞いている他人の耳がたくさんあるからだ」

加えて、オープンオフィスはそばに座っている人同士の間に緊張を生じさせかねない。大声で電話を使っていると —— クライアントからの電話対応をする銀行員の間ではよくあることだ —— 近くにいる全ての人をイライラさせると、職場問題の専門家で『Tame Your Terrible Office Tyrant: How to Manage Childish Boss Behavior and Thrive in Your Job』の筆者でもあるリン・テイラー(Lynn Taylor)氏は言う。

「多くの従業員は、静かな時間を必要とします。それなしでは、生産性が損なわれかねません」とテイラー氏はBusiness Insiderに語っている。「複雑なデータやお金の問題を扱っていたり、突っ込んだ戦略的な文章を書いている人は、しばしば他人に邪魔をされない会議室をこうしたタスクのために使用していて、会社はそのためにこうしたスペースを作ったのだと考えています」

オープンオフィスは、特に内向的な人をイライラさせる。

ゴールドマン・サックス

Chris Hondros/Getty Images

内向的な人はプライバシーを最も必要とする。

背景の雑音は、外向的な人以上に内向的な人の妨げになると、研究は示している。心理学者のハンス・アイゼンク(Hans Eysneck)氏はかつて、孤独が人の生産性を高めると述べた。自分ひとりになると、「目の前のタスクに集中し、仕事に関係のない社会的、性的な問題でエネルギーを浪費することを防ぐ」ことになるからだという。

では、内向的な人はオープンオフィスでどうすればいいのだろうか? 1つの解決策は、ヘッドフォンを使うことだ。

オープンオフィスは、あなたを疲れさせる。

頬杖をつく女性

Cecilie_Arcurs/Getty Images

オープンオフィスが育てようとしている、自分の仕事と周りの同僚への支援を切り替える「自然発生的な協力」は実際、あなたの仕事のパフォーマンスを低下させる

仲間を助けることと、目の前の複雑なタスクに自分を再び向かわせることを切り替えるには、かなりの精神的な努力を必要とするからだ。脳を1つのタスクに集中させるには時間がかかるため、2つの仕事をコンスタントに切り替えるには更なるエネルギーが必要になるのだ。タスクとタスクを切り替える間に消耗された時間は、「切り替えコスト」と呼ばれていると、脳神経科学者のユーセフ氏は言う。

事実上、常に同僚に応対できる状態でいるということは、あなたは常に今にも邪魔をされる状態にあるということだ。ウォール・ストリート・ジャーナルが報じたように、中断された仕事の流れを再開させるには、自分の仕事に戻ってから27分かかるという。

オープンオフィスは、他の人間の病原菌にあなたをさらす。

口を押える人たち

Jonathan Ernst/Reuters

ストックホルム大学の研究によると、オープンオフィスで働く人たちは、そうでないオフィスで働く人たちに比べて、病気で休みがちであることが分かっている。同僚と至近距離で働いていると、感染症が広まる可能性がある。

オープンオフィスは、蛍光灯の下であなたを干からびせがち。

レジの照明

Jeffrey Greenberg/Universal Images Group via Getty Images

オープンオフィスの多くが、たくさんのデスクを窓から離れた建物の内側に配置している。

複数の理由から、これは良くない。自然光にさらされている人の方が蛍光灯にさらされている人よりも、より用心深い。また、別の研究によると、窓のない場所で働く人は、窓の隣に座っている人に比べて夜の睡眠時間が47分短いという。

人工照明の下で働いている人も、睡眠に悪影響が出る。そして、常に質の悪い睡眠を取っていると、より頻繁に病気にかかり、より簡単に怒り、記憶力も低下するという

[原文:Goldman is moving its top executives to open offices — but the science says it'll be a catastrophe for productivity and health

(翻訳、編集:山口佳美)

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