90年代の7倍の速さ、2100年まで海面が60cm上昇…グリーンランドの氷床融解が「最悪の事態」に

グリーンランド南西部、カンゲルルススアークで溶け始めた氷の様子。2019年8月1日撮影。

グリーンランド南西部、カンゲルルススアークで溶け始めた氷の様子。2019年8月1日撮影。

Caspar Haarloev from "Into the Ice" documentary via Reuters

  • グリーンランド氷床の融解が、1992年と比べて7倍の速度で進行していることが判明した。科学者の予想を上回る上昇幅だ。
  • 新たな研究によると、グリーンランドが過去25年間に失った氷の量は4兆2000億トン以上に達する。これにより世界の海水面は0.4インチ(約1センチ)上昇したとみられる。
  • 7月にヨーロッパを襲った熱波により、わずか5日間で、グリーンランドの氷床から550億トンの氷が消失した。このような気象条件が続けば、氷の融解はさらに加速するとみられる。
  • 気候変動によって大陸氷床が融解すると、海面が上昇する。これにより、世界各地の沿岸地域が浸水被害に見舞われる恐れがある。

グリーンランドの氷床の融解が1992年と比較して7倍の速度で進行していることが判明した。このペースは、気候研究の専門家が予想していたなかでも最悪のシナリオの1つと一致するものだ。

12月10日付でネイチャー誌に掲載された論文によると、グリーンランドが1992年以降に失った氷の量は4兆2000億トン以上に達する。これは、五大湖の1つであるミシガン湖と同量、オリンピック仕様の水泳プールでいうと15億杯分に相当する量だ。

これだけの量の氷が溶けたことにより、すでに海面は1992年以降で0.4インチ(約1センチ)上昇している。現在のペースでグリーンランドの氷床が溶け続けると、2100年までには、従来の予測に加えて、さらに2.75インチ(約7センチ)海面が上昇すると、この論文の主著者、アンドリュー・シェパード(Andrew Shepherd)氏は警告する。そこまで海面が上昇すれば、沿岸地区に暮らす住民のうち、浸水のリスクにさらされる人の数がさらに増えることになる。

シェパード氏はBusiness Insiderの取材に応えて、「何よりも驚きなのは、多くの人にはわずかに思えるような程度の海面上昇でも、毎年浸水に見舞われる人の数が4000万人増加するほどの影響が出る点だ」と語った。

「海面上昇は、たとえわずかな変化でも大きな意味を持つ」

現実になりつつある「最悪のシナリオ」

氷床が溶けてできた水路に沿って、溶け出た氷が運ばれていく。

氷床が溶けてできた水路に沿って、溶け出た氷が運ばれていく。

Ian Joughin, University of Washington

グリーンランドの氷床は、面積にしておよそ65万6000平方マイル(約170万平方キロ)におよぶ地域を覆っている。テキサス州の3倍近くの広さだ。南極と合わせると、これらの氷床は、地球上にある淡水の99%以上を占める。

これらの淡水の大部分は、巨大な氷や雪の層となって、凍結状態で保存されており、その厚さは最大で1万フィート(約3000メートル)にも達する。だが、大気中の温室効果ガスの濃度が上昇する中で、大気中に閉じ込められる熱が増えており、その93%を海洋が吸収している。こうした気温と海水温の上昇により、極地の氷床が、かつてない速さで溶け始めている。

ネイチャー誌に掲載された今回の研究では、100人近い極地研究の専門家が人工衛星データを用い、これまでで最も網羅的にグリーンランド氷床消失の全体像を描き出した。研究チームは、1992年から2018年までの期間を対象に、氷床の質量と、溶けた氷が海へ流れる様子の変化を記録した。

その結果、グリーンランドにおける氷の融解は、1990年代には1年あたり360億トンだったが、2010年代にはその7倍に相当する年間2800億トンにまで急上昇していることが判明した。

2019年1月に公開された別の研究でも、同様の状況が指摘されている。こちらの研究では、現在のグリーンランドにおける氷の融解ペースは、40年前の6倍の速さに達していると結論づけている。

グリーンランド南西部のモーゲンス・ハイネセン・フィヨルド(Mogens Heinesen Fjord)で撮影。氷河から切り離された氷山が浮かんでいる。

グリーンランド南西部のモーゲンス・ハイネセン・フィヨルド(Mogens Heinesen Fjord)で撮影。氷河から切り離された氷山が浮かんでいる。

Benoit Lecavalier

今回の研究では、グリーンランドの氷床融解が2011年にピークを迎えていたことも判明した。この氷が最も急速に溶けた年に、氷床から溶けてなくなった氷の量は3690億トンに達する。これは、1990年代の平均融解速度と比較して10倍に達する数字だ。その後、氷床融解のペースは平均で年間2620億トンにまでスローダウンした。ただし、シェパード氏をはじめとする論文執筆者は、この平均値には、異例の猛暑となった2019年の数値が入っていない点に留意するよう促した。

繰り返される猛暑が、融解を加速

グリーンランドに関する、不安を抱かせる研究結果の前には、もう1つの気がかりな調査結果が発表されている。南極氷床の融解速度も、同様に上昇しているというのだ。

1980年代、南極氷床の融解速度は年間400億トンのペースだった。しかしこの10年は、その速度が平均で年間2520億トンにまで跳ね上がった。これは、同年代のグリーンランドの平均値には及ばないものの、かなりの数字だ。

グリーンランドと南極を比較した場合、その最大の違いは、地球温暖化によって加速する季節要因による融解の影響を、南極が受けにくい点にあると、シェパード氏は指摘する。一方、北極圏では夏に氷が大量に溶けるため、グリーンランド氷床の融解速度は予測が難しい(氷が大量に溶けるのは6月から8月にかけての時期で、7月がピークとなる)。

「グリーンランドでは、気象要因を考えに入れることも難しい課題となる。2012年や2019年のような猛暑は、予測が困難な現象だからだ」と、シェパード氏は述べる。

2019年の夏には、ヨーロッパを襲った激しい熱波の余波がグリーンランドまで押し寄せた。7月が記録に残る中では最も暑い1カ月になったことを受けて、今までにない規模で氷床が融解したのだ。

7月30日から8月3日までの5日間で、グリーンランド地表の90%で氷が融解し、550億トンの氷が水となった。これは、フロリダ州全土を深さ5インチ(12.7センチ)近くの水で覆い尽くせるほどの量だ。8月1日には、グリーンランドの氷床から1日で125億トンの氷が失われた。これは、氷の融解が記録され始めた1950年以降、1日で溶けた氷の量としては史上最多だ。

グリーンランドの氷床を捉えた衛星画像。溶けた水が、氷の上に「池」を作っている様子がわかる。2019年7月30日撮影。

グリーンランドの氷床を捉えた衛星画像。溶けた水が、氷の上に「池」を作っている様子がわかる。2019年7月30日撮影。

NASA via Associated Press

これまでの科学者の予測では、グリーンランド氷床の溶解速度は、今後50年間はこれほどのペースにならないとされてきた。しかし、2019年7月最終週に氷が溶けたペースは、科学者チームが国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)と共同で予測した、2070年の値に相当する。しかもこれは、最も悲観的なシナリオにおける数字だった。

海面上昇は、2100年までに4億人を危険にさらす

IPCCの予測では、2100年までに全世界の海面は2フィート(約60センチ)上昇する恐れがあり、この場合、毎年発生する沿岸地域の浸水の影響を受ける住民は3億6000万人に上るとしていた。しかし今回の研究では、グリーンランドの氷が今のペースで溶け続けると、海面はIPCCの予測よりさらに2.75インチ(約7センチ)上昇すると指摘している。これにより、新たに4000万人が浸水のリスクにさらされる。

「大まかに言って、全世界の海面が1センチ上昇するごとに、世界各地の沿岸地域で、浸水被害に遭う人の数が600万人増える計算だ」と、シェパード氏はプレスリリースで指摘している。

グリーンランド、ディスコ湾で撮影。

グリーンランド、ディスコ湾で撮影。

Ian Joughin, University of Washington

「その可能性は決して低くはないし、その影響もわずかなものでは収まらない。すでに実際に起きている事象であり、沿岸地域に住む住民たちに壊滅的な打撃をもたらすだろう」と、シェパード氏は警告した。

[原文:Greenland's ice is melting 7 times faster than it did in the early 90s — suggesting scientists' worst-case predictions may come true

(翻訳:長谷 睦/ガリレオ、編集:Toshihiko Inoue)

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