OYOとヤフー提携解消でチラつく、訴訟抱えたインド本国の経営リスク

オヨ記者会見

3月28日時点での記者会見の様子。左から、ヤフーの川邊健太郎CEO、OYOのリテシュ・アガルワルCEO、OYO TECHNOLOGY&HOSPITALITY JAPANの勝瀬博則CEO。インド発のベンチャー「OYO」は、この度、日本市場戦略で手を組んでいたヤフーとの提携を解消したことが明らかになった。

撮影:西山里緒

ホテル業界に革命を起こしたインド発のメガベンチャー・OYO(オヨ)が、日本市場戦略で手を組んでいたヤフーとの合弁関係を解消していたことが明らかになった。

スマホ一つで物件探しから入居ができ、数日間の試し住みができるサービス「OYO LIFE」(運営:OYO TECHNOLOGY&HOSPITALITY JAPAN、以下OYO T&H)を3月にスタートさせ注目を集めたが、運営会社の株式(約3割を保有)を売却する形で出資を引き揚げたという。

Business Insider Japanの取材に対し、OYO T&H広報は「協議を重ねての決定。入居者の皆さまには変わらず従来通りのサービスを提供します」と答えている。

OYOのサービスは日本や中国を含めた80カ国以上に広がり、調達金額は20億ドル以上。グローバル企業へと成長を続ける一方で、本国インドではホテルのフランチャイズオーナーから複数の訴訟を起こされている。

10月にはOYO創業者が1600億円もの自社株買いを実施し、翌11月にはコーポレート・ガバナンスに詳しい役員を外部から招くなど、経営体制の引き締めに入っている模様だ。

本国OYOには、ヤフーの親会社(Zホールディングス)筆頭株主であるソフトバンクグループのビジョン・ファンドが出資している。

本国では訴訟に契約不透明との不満

オヨ部屋イメージ

『OYO ROOMS』部屋イメージ。

提供:OYO TECHNOLOGY&HOSPITALITY JAPAN

OYO LIFEは「敷金・礼金・仲介手数料が無料、契約から退去まで手続きがすべてスマホで完結」という、それまでの日本の不動産業界の常識を覆すようなサービスを持ち込み、大きな注目を集めた。

取り扱うすべての物件で家具・Wi-Fiを完備し、引越しにかかる面倒な準備は不要。髪を切るように、引越しができれば —— OYO LIFEのコンセプトを、勝瀬博則CEOがそう表現していたことも記憶に新しい。

世界80カ国以上に展開するグローバル企業による、まったく新しい賃貸ビジネスモデルに、日本市場でも期待が高まっていた。

そんな中、今秋はインドなどでOYOグループのサービス展開に、クライアントであるホテルオーナーらから契約に対して不満の声が噴出しているとの現地報道が相次いだ。

Business Insider Indiaの2019年11月の報道によると、OYOはインドでホテルのフランチャイズオーナーから複数の訴訟を起こされており、その多くはオーナーに対する支払い不履行が原因のようだ。

また、契約の不透明さにも批判が集まる。同報道によると、OYOはフランチャイズのロイヤルティー以外に、最初に開示されていない料金の支払いをオーナーに課すことがあったという。

OYO「ご希望に沿えなかったことがあったのは事実」

オヨ画像

OYO最高経営責任者(CEO)で創業者のリテシュ・アガルワル氏。10月に、異例の規模で自社株式の買い戻しを行った。

提供:OY O

本国インドで問題が浮上しているホテル事業は、日本ではソフトバンク、ソフトバンク・ビジョン・ファンドとの合弁会社(OYO Hotels Japan)がサービスを10月に始めたばかり。

その矢先に、OYOグループの手がける事業では、ヤフーが賃貸事業の「OYO LIFE」運営会社から、出資を引き揚げる事態となった。OYO T&Hの日本の広報担当者は「それぞれの中長期的なゴールやアスピレーション(希望)を考えての決定」と説明。

複数のオーナーから契約をめぐる苦情が出ているとのSNS上の指摘や報道については「オーナー様から物件をお借り受けするに当たり、契約条件が折り合わずご希望に沿えなかったなどのことがあったのは事実。ただそのような場合も、弊社は、法律に照らし適正な範囲内で、誠心誠意ご対応させていただいている」(OYO T&Hの日本の広報担当者)と釈明している。

一方、サービス開始時に運営会社の最高経営責任者(CEO)を務めていた勝瀬博則氏はすでに退任しているとの報道も出ていたが、これについては「そのような事実はなく、当社が公表したものではございません」と否定している。

実際に住んだ記者は……

オヨ家の実際の画像

「OYO」実際の家の内装。一通りの家電・家具がついている。

撮影:西山里緒

筆者(西山)は実際に5月、OYO LIFEに「試し住み」をしてみた経験がある。

短期間ではあったが、何も持たずに気ままに引っ越しできるというキャッチコピーに、「暮らしをサブスク化」するという新しい住まいの形を見出すことができた。

しかし率直に言って、当時の記事で書いた通り、価格は高い。

東京・浅草駅から徒歩5分で月に16万円、より都心に住もうと思えば、家賃だけで20万円から30万円になってしまう物件もある。いくら家具・家電付きとはいえ、これでは手が出せる人は限られるだろうと感じた。

実際OYO LIFEは2019年、より大規模な拡大を目指していたが、入居者の伸び悩みがそれを阻んだ、という関係者の声もあった。

ソフトバンクグループが出資する不動産ビジネスといえば、スキャンダルで新規株式公開が延期されたウィーによるWeWork(ウィーワーク)がある。ブランディング戦略を重視した急拡大に走り、ほころびを見せたWeWorkを彷彿とさせるとの指摘が、海外メディアを中心に多く出ている。

紆余曲折を乗り越え、OYOグループによる、新しい賃貸やホテル事業のビジネスモデルが、日本でも普及する日は来るのか。先行きから目が離せない。

(文・西山里緒、編集・滝川麻衣子)

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