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【2020年IPO予測】「スタートアップバブルは東京五輪後に弾けるのか」専門家に聞いた

Makuake上場

クラウドファンディングプラットフォーム「Makuake」を運営するマクアケは12月11日、マザーズ上場を果たした。

提供:Makuake

名刺管理サービスのSansan、クラウドファンディングのMakuake、クラウド会計ソフトのfreeeなどがIPO(新規上場)した2019年は、シェアリングエコノミー(シェアエコ)や「働き方改革」を助けるサービスを手がける企業が目立ち、新しい時代の価値観を予感させた。

また、東京証券取引所の新興企業向け市場であるマザーズへの上場が過去最多となった。2020年のIPO市場のトレンドは?

マザーズ上場過去最多、トレンドは“人手不足”

東証

2019年、東証マザーズに上場した企業数が過去最多となった。

撮影:今村拓馬

2019年、これまでにIPOした社数は2018年から4社減の86社。このうち、マザーズへの上場が7割を超える64社となった。これは1999年のマザーズ市場新設以降で最多の数字だ。

2019年のIPO傾向の特徴としては、SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス:ユーザーがソフトウェアをインストールして使うのではなく、企業側がクラウド上でソフトウェアを提供すること)企業が多いことだ。

名刺管理サービスのSansan、スモールビジネス向けクラウド会計ソフトのfreee、ビジネスチャットツールのChatworkなどがその筆頭で、特にテクノロジーを使って会社業務を円滑にしたり、生産性を高めることをコンセプトに掲げる企業の上場が目立った。

こうしたサービスがここ数年成長を続けている理由に、2011年の東日本大震災以降から深刻化が続く人手不足の影響が大きいと、第一生命経済研究所主任エコノミストの藤代宏一氏は語る。

「人手不足解消のため、企業は生産性を高めるソフトウェアなどへの投資を進めており、2020年も『人手不足』『省力化』をキーワードとしたSaaS企業に投資マネーが流れる動きは続くでしょう

企業価値総計は1兆円超え、それでも……

ここ数年、ベンチャーキャピタルなどからのスタートアップへの投資熱は高まり続けている。

2019年11月に日本経済新聞社が発表したNEXTユニコーン調査によれば、上場企業の時価総額にあたる企業価値(推計)が100億円を超えるスタートアップは前年より34%増え、63社。さらに上位20社の企業価値の合計も、前年度比22%増の1兆1877億円となった。

あずさ監査法人企業成長支援本部ディレクターの鈴木智博氏はこう指摘する。

「ここ数年のスタートアップの投資熱は、若手経営者の育成といったメリットもある一方、企業価値が高騰することによって上場後にダウンラウンド(前回の調達時より時価総額が下回ること)が起こりやすくなるという問題も抱えている」

投資熱の高まりは、一種、バブルとも言える様相を帯びている。

低迷した世界のIPO市場、日本にも波及?

アダム

WeWorkの上場延期は、IPO市場にも大きな衝撃を与えた。

Kelly Sullivan/Getty Images for the WeWork Creator Awards

世界のIPO市場を見てみても、2020年の動きは必ずしも楽観的には捉えられなさそうだ。

2019年は、ライドシェアのUber(ウーバー)にLyft(リフト)、ビジネスチャットのSlack(スラック)、写真投稿サイトのPinterest(ピンタレスト)、ビデオ会議のZoom(ズーム)など、アメリカでもユニコーン企業の大型上場が相次いだ。

その一方で、シェアオフィス事業のWeWorkの上場延期に見られたように、スタートアップへのリスクマネーの過剰な流入によるほころびが見えた年でもあった。

EY Japanが12月に発表したデータによれば、2019年の世界のIPO市場は、件数(前年度比19%減)・調達額(同4%減)ともに低下した。米中EU間の貿易摩擦や、イギリスのEU離脱、香港デモの影響などが大きいという。

世界的に見れば不確実な政治状況と貿易摩擦、そしてスタートアップ自体の不祥事がIPO活動を停滞させた2019年。2020年の地政学的な動きはまだ予測しづらいものの「アメリカにおけるこうした懸念が日本にも波及する可能性は十分にある」と前述の藤代氏はいう。

スタートアップバブルは終わるのか?

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スタートアップ投資に対する五輪の影響は小さい、と識者はみる。

Atsushi Tomura / Getty Images

とはいえ「日本発のユニコーン」による上場の期待は高まっている。

前述のNEXTユニコーン調査では、ユニコーン企業(創業10年以下で企業価値が1100億円以上の未上場ベンチャー)に該当するのは、人工知能ベンチャーのPreferred Networks(プリファード・ネットワークス)、プラスチック代替素材のTBM、ニュースアプリのスマートニュースの3社だ。

また、キャッシュレス決済、AI(人工知能)、SaaSといった事業領域には引き続き投資マネーが流れることが予想されており、ユニコーン企業ではないが、コード決済のOrigami(オリガミ)や人工知能ベンチャーのABEJA(アベジャ)、クラウド人事労務サービスのSmartHR(スマートHR)などにも上場を期待する声が、機関投資家の間であがっている。

オリンピック後の不況を心配する声も聞かれるが、前出の第一生命経済研究所・藤代氏は「少なくともマクロ経済的にはオリンピックの景気への影響は小さい」とみる。

「オリンピック需要によって受注されたオフィスビルなどの建設ラッシュは当面続き、それによる人手不足傾向は変わらないことが予想される。インバウンドや観光関連サービスの需要も、五輪後にすぐになくなるとは考えづらい」(藤代氏)

不確実な世界経済のリスクをはらみつつ、2020年もスタートアップの大型上場への期待は継続すると見込まれる。今後は、ビジネスモデルや技術力における確かな成長性にこそ、スタートアップの真価が問われるようになるだろう。

(文・西山里緒)

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