ハラスメント指針決定。就活生は対象外、パブコメ1割強占めた#KuToo も盛り込まれず

国が企業に求めるハラスメント対策の新たな指針が正式決定した。案には多くの批判の声が上がっていたが、修正は加えられず、就活生や求職者は保護の対象外、#KuTooについても盛り込まれなかった。集まったパブリックコメントは1139件と、多くの注目を集めた今回の指針。国民の声は反映されたのか。

#KuTooのパブコメは100件超、でも……

#KuToo

11月20日の労働政策審議会を傍聴する、#KuToo署名発起人の石川優実さん。

撮影:竹下郁子

12月23日に開催された労働政策審議会では、冒頭で今回のハラスメント指針案について集まったパブリックコメント(締め切りは20日)の主な内容が紹介された。

職場で女性にのみパンプスやヒールを義務づけることに異を唱える#KuTooについては、

「ヒールやパンプスの着用を命じることは、パワハラに当たり得る旨を指針に記載すべき。これを禁止し、罰則を設けるべき。女性限定の装規定をなくすべき」

という意見が1割強あったという。一方で、

「パンプスや服装に関する規定は、業務の内容や社会通念、慣習などにも影響されるものであり、(パワハラに)該当すると考えられる例にいれるべきではない。3要素(※)で判断すべき」

という意見も一定数あったそうだ。

3要素:5月に成立した改正労働施策総合推進法は、パワハラを(1)優越的な関係を背景にした言動で(2)業務上必要な範囲を超えたもので(3)労働者の就業環境が害されることと定義している。

これまで厚労省は、ヒールやパンプスの強制はパワハラにあたり得るとし、また男女で同じ仕事をしている場合に一方の性別にのみ服装が強制されることについて、加藤勝信厚労相は「個々のケースについては一概には言いがたい」としながらも「男女雇用機会均等法の趣旨に反する」とも答弁していた(11月19日、参議院・厚生労働委員会)。

署名を立ち上げたグラビア女優の石川優実さんは、12月3日に厚労省に要望書を提出。指針への明記を求めていたが、結局、指針には入らなかった。

伊藤さん事件も立法があれば

伊藤詩織

伊藤詩織さん。12月18日の東京地裁での判決言い渡し後に開かれた裁判報告集会で。

撮影:竹下郁子

また就活セクハラについては、

「就活生やフリーランスへのハラスメントを措置義務の対象とすべき。就活ハラスメントから就活生を守るべき」

「ILO条約を踏まえた指針の策定を行うべき」

などの意見があった。ILO条約は就職志望者や求職者も対象になっている。

しかし、就活生も今回の指針では保護の対象外に。企業がとることが「望ましい」取り組みとして、就業規則などで就活生へのセクハラ・パワハラを行ってはならないという方針を明確化することなどが盛り込まれるに止まった。実効性がないとして、学生や大学関係者、政治家や識者などから多くの批判の声が上がっていたが、反映されなかった形だ。

労働側委員はジャーナリストの伊藤詩織さんが元TBS記者の山口敬之氏から性的暴行を受けたとして、東京地方裁判所に1100万円の損害賠償を求めた裁判で、伊藤さんが勝訴した件に触れ、

「この事案はまさに就活セクハラ。有識者からも、就職活動中の人を保護する立法があれば、企業に措置義務があればどうだったろうかという声が上がっている」(労働側委員)

と指摘。経営側委員の「この指針案は企業の実態に即している」という意見に対し、

「1139件というパブコメの数はかなり多い。非常に多くの関心を集めているということ。指針案が本当に企業の実態に即していれば、こんなに声が上がっただろうか」(同)

と訴えた。

2016年のセクハラ指針改正時に集まったパブコメは135件だったことを考えると、関心の高さがうかがえる。

就活生でも“内定者”は保護の対象

就活セクハラ

指針案に対し、就活生への保護が不十分だと訴える学生たち。2019年12月2日。

撮影:竹下郁子

これまでの労政審で労働側は、何度も#KuTooや就活セクハラについて対策を求めてきたが、経営側は慎重だった。

11月20日には就活セクハラについて「雇用関係にない方に、どこまで事実関係の確認ができるか難しい」とし、労働者に対して企業が負う「措置義務の内容を一律に設けるのは難しい」と難色を示している。

また#KuTooについては「現場で足を怪我しても強制する事例がどこまであるのか。個々の企業が提供するサービスや社会的な慣習の下で、一定のルールがあると理解している」とし、「指針に記載することは、現時点では難しい」と述べていた。

23日、厚労省は今回の指針について「通達やパンフレットで丁寧な周知をはかる」と改めて説明した。

これまでに厚労省は#KuTooなど服装を強制するような言動についてはパワハラに当たり得るため、パンフレットでの周知を考えていきたいとの見解を示している(12月3日、参議院・厚生労働委員会)。

また就活セクハラに関しては、同じ就活生でも「内定者」は保護の対象だ。11月28日の参議院・厚労委員会、石橋通宏議員(立憲民主党)の質問に厚労省の担当者は「採用内定者は事業主が雇用する労働者にあたる」と答弁。国が企業などに対してセクハラやパワハラを防ぐために課している措置義務の対象になり、相談があったことを理由に不利益な扱いをすることも禁止だとした。

こうしたことも周知していく必要があるだろう。

(文・竹下郁子)

※「職場のハイヒール・パンプス着用、緊急アンケート」には、これまで3200人以上から回答をいただきました。ありがとうございます。靴以外についてもおたずねしていますので、引き続きご協力をお願いします。

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