国際ロボット展で異彩を放ったすごいロボット11機。日本とアジアのロボット技術

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2019 国際ロボット展『INTERNATIONAL ROBOT EXHIBITION 2019(iREX2019)』の展示でよく見かけたのが、人との協働を目的としたロボット。

撮影:大塚淳史

世界最大級のロボット展示会「2019国際ロボット展(iREX2019)』」が先週、東京ビッグサイトで開かれた。

Twitterで大いに話題になった「自動押印ロボ」が大きな注目を集めたが、それ以外にも注目すべき多様なロボットの展示があった。

今回特に多く見かけたのが、人との協働を目的とした協働ロボットたちだ。工場などで人とラインに並んで作業をする、というものだ。

すでに協働ロボットは実用化しているが、より重い物を持ち運ぶことができるようになったり、ロボットの動きがより速くより精密に動けるものが展示されていた。さらにロボットの本体や、多関節ロボットアーム製品をオープンプラットフォームにして、アームの先につける、いわゆる”指”の部分を他社製のものをつけた組み合わせた展示も多かった。

いくつか特徴的なロボットたちを見ていこう。

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「2019 国際ロボット展『INTERNATIONAL ROBOT EXHIBITION 2019(iREX2019)』」には連日多くの人が訪れていた。

撮影:大塚淳史

金属球と鉄琴のオルゴールロボ

どこから寂しげな鉄琴音が聞こえてきた。音が鳴っているところに向かうと、日本トムソンのブースでロボットが「大きな古時計」を演奏していた。このロボット「メロディー」は販売向けではないというが、「お客様の要望があれば...(笑)」(担当者)とのこと。1、2年前から展示会等においているというこの巨大オルゴールロボは「我々のロボットはこういう駆動ができますよというもので、来場者の方の足止めてもらえます。(ロボットの)下に鉄琴があって動いてますが、正確に動かせるというのと、落ちた球が入った箱が横のレールに乗り移る、この技術が実は難しく、我々の製品はそれが可能ですよ、というアピールをしています」(担当者)

デンマークの世界大手メーカーの協働ロボット

デンマークのロボット世界大手「ユニバーサルロボット」が展示していた協働ロボット。映像のロボットは同社の新製品で、従来の可搬重量10キロより重い16キロまで対応し、使用用途が広がった。同社が生産しているのはロボット本体(ここではいわゆるアーム部)のみで、そこから先の“手”の部分は他社製のもの。

「(ユニバーサルロボット社の)ツール用のプラットフォーム、ソフトウェアをメーカーに提供し、そのメーカーが開発したものを認証することで使えるようになります」(ユニバーサルロボット社の担当者)プログラミングの素人でもプログラムを組めるようにしてあり、日本語にも対応している。

国民的ゲーム音楽に合わせて動くロボット

会場内を歩いていると、懐かしい誰もが知っているレトロな電子音楽が聞こえてきた。あの国民的ゲームの音楽に合わせて、ロボットアームの先が、わずかな隙間を素早く正確に通って動いていた。電子部品の製造現場でピッキングや組み立てを使われる。中国の東莞市李群自動化技術有限公司(OKM)で、バッテリー工場などで使われるロボットを生産している。日本の展示会自体が初めてで、代理店探しが目的だという。この電子音楽を使ったのは、「中国でも以前流行っていて、知っている人が多い。また、日本での展示ということで思い入れもあって使いました」(担当者)とのことだった。確かに多くの足が思わず足を止めて眺めていた。

微妙なさじ加減は再現可能?

デンソーウェーブの巨大ブースの一角に、ややシュールな展示があった。微妙なさじ加減を再現するロボットだ。主に、薬の研究開発の現場で使わることを想定して作ってみたという。動画の中の左のアームを人の手で動かすと、右のロボットアームがそれを真似て匙(さじ)を操作し、微妙な量をすくいあげる。これを何度も繰り返すことでAIが学習していく。ただ、動画の中にあるように、粉が山盛りだったり平だったりによっても条件が変わってしまい、まだ研究開発の途上のようだ。



車輪がユニークな物流向けロボット

ギア(減速機)メーカー「ナブテスコ」のブースの一角には、車輪がユニークな物流向けロボットが動いていた。上下だけでなく、4つの車輪のうち2つを制御して車輪を動かすことで、車体が前を向いたままでも左右に動くことができ、その場でも回転して動くこともできる。この車輪自体は同社のものではないが、このロボットに使われているギアが同社のもの。

近未来はこの人型ロボットであふれる?

会場でたびたび見かけたのが、この人型の人協働ロボット。すでに製品化されているので、業界では知られている見た目かももしれないが、普段触れる機会のない人からすると、映画に出てきそうだなと思わされる。

動画を撮影したブースは「THK INTECHS」で、ロボット本体は「カワダロボティクス」が開発したもの。ユニバーサルロボット社と同じく、他社との組み合わせで汎用性を広げている。動画のように電子部品などの工場だけでなく、カワダロボティクスのロボットを使用した研究開発を想定した展示や食品工場での箱詰め操作をしている展示を見かけた。

神戸高専が開発した、気分はミッションインポッシブル?

神戸市立工業高等専門学校の清水研究室が展示していたロボットと、その技術が注目を浴びていた。同校には 「ロボティクス・デザインコース」がある。

学生がバッテリーとエアコンプレッサーを腰に取り付けて、吸盤のように壁をよじ登っていくデモを披露した。まさか映画「ミッションインポッシブル」のワンシーンを見られるとは思わなかった。

動画の右下に映るロボットが同様の技術で壁をよじ登っていくという。例えばビルの清掃現場などを想定しているようだ。




5本指マッサージのロボット

5本指の手を模したロボットアームがマッサージするデモを展示していたのはリッコー。もともとマッサージチェアを製作している会社だが「マッサージチェアだと自らの体を当てにいったりすることがあり、どうにかならないのかという要望から開発してみました。プロの技を再現したく5本指にしました」(担当者)という。アーム自体は他社製で手の部分を開発した。将来、こういう形でロボットマッサージ店ができるたりするのだろうか。

これは欲しいかも?トランスフォーマー風ロボット玩具その1

会場を訪れている若者、学生たちの人気が高かったのが、中国のロボット玩具メーカー「robosen(中国名:楽森機器人(深圳)有限公司)」の変形ロボット玩具だ。人気キャラクター「トランスフォーマー」を模したロボットで、アプリを介して操作できる。

これは欲しいかも?トランスフォーマー風ロボット玩具その2

すでに中国とアメリカで販売していて、アメリカでは約500米ドルで販売している。日本でも2020年から販売する予定で、現在準備しているそうだ。

卓球ロボットが凄かったその1

オムロンが展示していた卓球ロボット 「フォルフェウス」 は、人間が持つ卓球ラケットを見て、打つ際の角度や回転をリアルタイムで解析、ロボットが球の軌道を予測して動き、打ち返す。球の軌道は、無回転時の軌道と打ち返した際の回転を比較して予想するという。産業用ロボットはこういう動きができますよ、ということを示すために、この卓球ロボを置いている。

卓球ロボットが凄かったその2

基本的には工場向けの産業用ロボットであって、卓球ロボットは展示会向け。ゲームセンターに置いてあったら流行りそうではある。「卓球ロボのレベル自体は中学生の前くらいですね」(担当者)。この卓球ロボは5世代で、スクウェア・エニックスのAIを利用した6世代は、年明けアメリカで行われる 世界最大のテクノロジー見本市「CES2020」 でお披露目する予定だ。

絶妙な筆加減で描く風船似顔絵ロボット

川崎重工のブースでは風船に似顔絵を描くロボットが展示されていた。同社の人共存型双腕スカラロボット「duAro(デュアロ)」 をアピールする一環の展示。子ども連れ親子が並ぶなど人気だった。風船に描く際、ロボットが風船の弾力を判断して力を加減して描いていく。この作業のプログラミングが簡単にできることも特徴だ。人の顔のデータ自体は他社のものを使用する。

業界向けのロボット展とはいえ、産業用ロボットだけでなく、来場者を惹きつけるためのロボットも展示されるなど、見所が多い展示会だった。

(文、写真、動画・大塚淳史)

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