飛び込み営業も名刺獲得競争も効果が出ない。あなたは「間違った努力」をしてませんか

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自律思考

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上司や先輩から指示された「やらされ仕事」より、自分で決められる「裁量ある仕事」のほうがやる気が出る。裁量ある仕事を任されるためには「自分で考え、生産性高く成果を出すスキル=自律思考」が必要だ——前回はこんなお話をしました。

「生産性高く」成果を出すためには、当たり前ですが努力が必要です。しかし、ただ努力をすればいいというものでもありません。努力には「正しい努力」と「間違った努力」の2種類があるからです。

そこで今回は、自律思考を磨くすべてのプロセスで必要になる、「正しい努力の仕方」についてお話ししたいと思います。

“武勇伝”を披露している場合じゃない

本題に入る前に、まずはよく聞く“営業あるある”について考えてみましょう。

「営業は足で稼ぐ」は、営業担当者でなくとも一度は耳にしたことのあるフレーズではないでしょうか。

顧客とは対面で会うことにこそ意味がある。足を棒にして新規飛び込み営業を続けるうちにようやく受注できた。何度断られてもあきらめず訪問を重ねるうちに相手が根負けして発注してくれた——営業担当者の間で語られる「足で稼いだ」武勇伝は、いつの時代も健在です。

今ほど企業のセキュリティが厳しくなかった時代は、通称“ビル倒し”と言って、ビルの上の階の会社から順に飛び込み営業をかけていく、なんてこともよくある光景でした。

かくいう私もリクルートグループでの若手時代は、飛び込み営業や、新人営業同士で誰が一番たくさんの名刺を集められるかを競う“名刺獲得キャンペーン”を経験した一人です。今だから告白しますが、私は飛び込み営業が嫌で仕方がありませんでした。

自律思考

少し立ち止まって考えてみよう。その努力は「正しい努力」だろうか?

撮影:今村拓馬

会社は「新規受注をしてこい」と言うけれど、受注をするのに飛び込み営業や名刺獲得キャンペーンは本当に効率的と言えるのか? そんな疑問を持った私は、社内の新規受注獲得経路を調べてみることにしました。

過去1年間の新規取引「受注額」の多い順にリストを作成した結果分かった、衝撃の事実。なんと新規受注額トップ20の獲得経路には、飛び込み営業は1社もありませんでした。

では、どこから新規受注を獲得しているのか。リストを見れば一目瞭然。実は、獲得のほぼすべては「既存顧客からの紹介」だったのです。

もうお分かりですね。新規受注額が低いにもかかわらず、靴底をすり減らして飛び込み営業を続ける——残念ですが、これは「間違った努力」の仕方です。

もちろん、営業にはある程度の行動量は必要です。しかし、行動量がすべてを解決することなどありません。もっと効率的に成果を出す「正しい努力」の仕方が存在します。上の例の場合、新規受注額を増やす正しい努力とは、やみくもに「飛び込み営業」を強化することではなく、「紹介営業」を強化することだったのです。

仕事にもある「守破離」

では、具体的にどうすれば「紹介営業」からの新規受注が増えるのでしょうか?

その答えを探る前に、次の図をご覧ください。これは、ビジネスパーソンのスキルアップの仕方をイメージ図にしたものです。それぞれのスキルレベルに合わせて下から順に「守/破/離」と書かれています。守破離(しゅはり)とは、武道や華道などの芸事で、修業における段階を示す言葉ですが、同様のことはビジネスの世界でも当てはまります。

スキルアップの仕方

守破離の「守」は「初心者」のことと思われがち。だが、「守」とは型通りのことができている状態を指すので、実際には「守=一人前」だ。

筆者作成

  • 初心者:組織に入ったばかりで右も左も分からない新人や、まだ「型」ができていない若手。
  • 半人前:「型」を身につけていないだけでなく、個人のやり方にこだわり、特定の顧客でしか成果を出せない状態。努力をしていないわけではなく、長時間「間違った努力」をしていることも。
  • 一人前:「型」は一通り身につけた状態。クレームが多い顧客など一部の例外はあるものの、通常の顧客ならばその人に任せても1人で成果が出せる中堅クラス。
  • 一流:守破離の「破」とは文字通り、型を「破る」状態のこと。型を基本にしながらも、その人なりの仕事の仕方で成果を出せる状態。クレーム顧客などの例外があっても1人で高い水準の成果が出せるハイパフォーマー。
  • 超一流:一流の域に達した人の中には、ごくまれに「天才」と呼ぶにふさわしい高みに達する人も。ただし、ここに到達する人がやっている努力は非凡で再現性が低いため、周囲にはそうそう真似のできないレベル。

私たちが通常の努力で到達できるのは、「一流」のレベルでしょう。とはいえ、一流まで行き着くことができればビジネスパーソンとしては相当なもの。そこで本連載では以降、読者のみなさんが「一流」のレベルへ到達することを目標に話を進めていくことにします。

自律思考

私たちの仕事にも「型」は存在する。武道と同じく、レベルに応じた研鑽を積むことで「一流」の域に達することができる。

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一人前への近道は「徹底的にパクる」

ここで注意が必要なのは、「初心者→一人前(守)」「一人前→一流(破)」のそれぞれのレベルで、必要になる「正しい努力」は変わってくるということです。順番に見ていきましょう。

「初心者→一人前」のフェーズでは、とにかく「型」を学んで真似をすることが一人前への近道です。

「人の真似をするなんて……」と気が引ける人は、少し考え方を変えてみてください。

研究の世界では、偉大な先人の知恵から学ぶことを「巨人の肩に乗る」と表現します。例えば力学を研究する際に、先達の研究成果を参照せずにゼロから自力でニュートン力学を見つけ出そうと努力するのは、あまりに非効率だと思いませんか? これは間違った努力です。

それよりも、ニュートン力学やアインシュタインの相対性理論を徹底的に学ぶという正しい努力をしたうえで独自の研究をすれば、よりレベルの高い研究を効率的にできる可能性が高まります。

これと同じことが、仕事の現場においても当てはまります。偉大な先人の知恵や事例を細部まで研究し、“TTP”、つまり「徹底的にパクる」ことで、一通りの「型」を身につけ、効率的に一人前になれるのです。

自律思考

では、新規営業における「正しい努力」の仕方とは?

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ここで、先ほどの「新規営業」のエピソードに戻ります。

飛び込み営業では新規受注額を増やせないと分かった私は、紹介営業がピカイチの先輩が何をしているのかを徹底的に理解することにしました。

紹介営業が得意な先輩は、核となる顧客と良い関係を築き、その顧客から次々に知り合いを紹介してもらって……と、芋づる式に新規受注を獲得していました。つまり、紹介営業の肝は、3つのステップからなっていたのです。

  1. 「核となる顧客」を見つける
  2. その顧客と「良い関係」をつくる
  3. 「顧客紹介」を依頼する

私もさっそく、この3つのステップを“TTP”してみました。すると案の定、飛び込み営業時代とは比較にならないくらい、立て続けに新規受注を獲得することに成功しました。

やる前に「独自の解釈」を加えてはいけない

「一人前への近道は徹底的にパクることだ」と聞いて、「真似てみたことはあるけれど、うまくいかなかったぞ」と思った方は、そのときの自分を振り返ってみてください。その原因はたいてい、実行する前に「独自の解釈」を加えてしまっていることにあります。

どういうことか、例を使って説明しましょう。

フィットネスクラブ

入会率を上げようとスタッフたちは成績優秀な同僚のやり方をパクってみたものの…。

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あるフィットネスクラブでは、来店した見込み客の入会率を上げる施策を実施していました。対応に当たるスタッフの中で成績一番のYさんは、対応した見込み客のほぼ100%が入会を決めるという優秀さ。そこで全員がYさんを“TTP”することで、全体の入会率アップを図ることにしました。

ところが——。

Yさんのやり方をTTPしているはずなのに、他のスタッフの成績は一向に上がりません。いったい何がいけないのでしょうか? Yさんの接客を録画して見返したスタッフの一人が、ある些細な違いに気づきました。それは、クラブの見学を終えた見込み客への最初の一言です。

他のスタッフは、1. 見学の感想を聞き、2. 疑問点を確認し、3. 入会するかどうかを尋ねます。一方、Yさんの最初の一言は、「いつから入会されますか?」「せっかくなので、このままスタートしましょう」というものでした。つまり、他のスタッフが3番目にしていたことを最初にやっていたのです。

他のスタッフは、「私の説明で満足してもらえただろうか、それともまた断られるかな……」という不安が先に立ち、入会に関しても「どうされますか?」と顧客に尋ねていました。結果、見込み顧客の入会率は低くなります。

けれどYさんは違いました。目の前にいるのは、このジムに興味を持ってわざわざ来店してくれた見込み客なのであって、たまたまジムの前を通りかかった人を無理やり連れてきたわけではありません。「この見込み客は当然入会してくれるだろう」という前提でYさんはコミュニケーションをしていたのです。

ほんの些細な違いでも、結果は大きく変わります。このことに気づいた他のスタッフはさっそく、最後の声かけの仕方もYさんを“TTP”することに。結果、クラブ全体の入会率は目に見えてアップしました。「最後の一声の順番を変えただけで、こんなに成果に違いが出るなんて」とスタッフたちが驚いたことは言うまでもありません。

一流になれない人が陥りがちな「コンフォートゾーン」

型を習得して「一人前」の状態にたどり着き、安定的に成果が出せるようになると、仕事のおもしろさが実感できるようになってくるはず。ここでぜひ、注意していただきたいことがあります。

ある程度成果が出せるようになると、自分のやり方に自信がつく半面、「もっと学ばなければ」「もっと進化しなければ」という意識が薄れてしまいがちです。でも、世の中や顧客は絶えず変化するもの。その変化に合わせて新たな成功事例や手法から学ぶ姿勢がなくなると、相対的に取り残されてしまいます。

猫

コンフォートゾーンは居心地がいい。しかし「成果が出ているのだから今のままでいいじゃないか」という発想は危険だ(写真はイメージです)。

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「今のままでも成果は出ているのだから」と自分自身に進化を求めないのは、いわば居心地のよい「コンフォートゾーン」にはまり込んだ状態。ここから抜け出さないと、その先にある「一流」の域にはたどり着けません。

では、「一人前→一流」へと一皮むけるためには、どんな「正しい努力」が必要になるのでしょうか?

「初心者→一人前」のプロセスでは、“TTP”が正しい努力の仕方でした。その次のプロセスである「一人前→一流」で必要になるのは、「徹底的にパクって進化させる」、つまり“TTP-S”です。

“TTP-S”とは具体的にどのような努力の仕方を指すのか、そして“TTP-S”を徹底すると仕事でどんなことができるようになるのか。これらの疑問については次回、私自身がリクルート在職時代に責任者を務め、6年間で売上を30倍に伸ばすことに成功した「スーモカウンター」事業でのエピソードなどを交えながら、詳しく見ていくことにします。

※本連載の第3回は、1月31日(金)を予定しています。

(連載ロゴデザイン・星野美緒、編集・常盤亜由子)

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