事故で失明も「五輪支援」に意欲。コカ・コーラの五輪担当が語る“東京2020への期待”

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2019年6月1日に東京都内であった聖火リレーランナー募集告知イベントに参加した、(左から)女優の石原さとみさん、パラリンピアンに3度出場した田口亜希さん、オリンピックの柔道で3度の金メダルを獲得した野村忠宏さん。3人が着用しているのが、コカ・コーラのペットのリサイクル素材を用いたユニホーム。

REUTERS/Issei Kato

新年があけて、東京オリンピック・パラリンピックが開かれる2020年となった。五輪開会式は7月24日、約半年後に迫っている。1928年から90年以上にわたって、大会をサポートしているのがコカ・コーラ社だ。

コカ・コーラがオリンピック・パラリンピックのスポンサーとしてどのように取り組み、スポーツの祭典にコミットしているのか。東京2020年オリンピックゼネラルマネジャーの日本コカ・コーラ・高橋オリバー氏に話を聞いた。

2019年3月に事故で失明、意欲変わらず

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高橋オリバー氏は2019年3月に事故で失明も、変わらぬ意欲で東京オリンピック・パラリンピックに向けて奔走する。

撮影:伊ケ崎忍

実は高橋氏は2019年3月に事故で視力を失った。現在は仕事に復帰し、東京大会に向けて尽力する。不躾を承知で、パラリンピックに対する意識に変化が生まれたかと聞いてみると、意外な答えがかえってきた。

「意外とないんですよね(笑)。この職に戻れるかどうか不安はありましたが、幸運にも、会社、チームに受け入れられています。そういった面では僕はラッキーでした。もちろん不便は不便です。ただそれで何かが大きく変わった、というのはない気はします」(高橋氏)

自身の仕事に対する姿勢もブレない。

「オリンピックもパラリンピックも平等に展開していいこうと取り組んでいますし、目が見えなくなったからパラリンピックをもっと取り組もうということはないです」(高橋氏)

事故前同様、週に3、4日はジムのプールで泳ぐそうだ。ただ、ひとつ意識したことがある。

今度の東京大会は初めて、同じ開催地でパラリンピックの2回目が開かれる都市です。1964年が1回目のパラリンピック開催でした。目が見えなくなったからかもしれないですが、今回これがどういった形で障害者にプラスに働くのか、見てみたいというのはあります」(高橋氏)

東京大会では「PETリサイクル」素材のユニホームを展開

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2020年オリンピックゼネラルマネジャーとして奔走する日本コカ・コーラの高橋オリバー氏。

撮影:伊ケ崎忍

コカ・コーラが東京大会に向けて取り組んでいるのが、環境問題への取り組み。今回初めて、「聖火リレー」で同社のペットボトル(PET)のリサイクル素材を使用したユニホームを展開する。1人あたり約44本ペットボトルが使われているという。

「聖火リレーのユニホームに、ペットのリサイクル素材を使用するということは、大きな意味を持ちます。IOC(国際オリンピック委員会)、東京オリンピック組織委員会、我々(コカ・コーラ)は、同様にゴミ問題を重要視しています」(高橋氏)

聖火リレーのランナーのみならず、大会期間中にオリンピック・パラリンピックの会場への商品の搬入作業に関わるスタッフは1200人から1300人になるという。

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リオパラリンピックの車椅子テニスで銅メダルを獲得した上地結衣選手ら複数のパラ選手もコカ・コーラがサポートする。

REUTERS/Pilar Olivares

コカ・コーラは東京大会に向けて、ブランドを宣伝しつつ、大会を盛り上げるキャンペーンやイベントを仕掛け、また環境問題への取り組みをメッセージ発信するなど、スポンサーの立場を有効に活用している。

いわゆる「アクティベーション」といわれるものだが、日本の企業はこれがあまりうまくないと言われている。

せっかく大金を払って五輪スポンサーになったのに、その後のアクティベーションにお金をかけられる予算がない、またはどんなアクティベーションを行えばいいのかわかっていない……筆者も、こうした評判を耳にしたことがある。

コカ・コーラが東京大会に向けたアクティベーションを首尾よく進められた理由を高橋氏はこう表現する。

コカ・コーラが現在までの約90年、つちかってきたIOCとのリレーションシップがあります。我々の強みとして、大会終了ごろに、次の開催地に向けて、うまくいった事、改善すべき事、もしくはこれはやるべきではないなどと検証します

ノウハウが蓄積してくることで、持っている(オリンピック・パラリンピックのスポンサーという)アセットをうまく使えます。ナレッジ(知見)が継承されていきます。歴史が他のスポンサーとは大きく違うかもしれません」(高橋氏)

コカ・コーラが東京2020に向けて仕掛けた「アクティベーション」

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高橋オリバー氏は、スポーツビジネスの場で長年にわたり活躍し続けている。

撮影:伊ケ崎忍

高橋氏は、日本のスポーツビジネス業界では「スゴ腕のビジネスマン」として知られている。大学卒業後にまず、リーボックで長野五輪に関わった。サッカーワールドカップ(W杯)の放映権を取り扱っていたマーケティング会社ISL(経営破綻により既に消滅)では、2002年サッカーW杯に関わった。その後、FIFA(国際サッカー連盟)、NIKE、そしてコカ・コーラと、「スポンサー側」「組織委員会側」と、異なる立場から一貫してスポーツビジネスの世界に身を置いてきた。

アクティベーションを成功させるための考え方についてはこう語る。

「消費者の方が飽きずに参加してもらうためにも、メリハリなく3カ月、4カ月と同じプロモーションをするのではなく、どういったコミュニケーションで何を訴えたいのかを明確にすることです」(高橋氏)

今回、コカ・コーラでは東京大会に向けたアクティベーションとして“5つのモーメント”を設定した。2019年6月から8月にかけておこなった聖火リレーのランナーの募集、12月下旬から年明けにかけて行う2020年へのカウントダウンのプロモーション、さらに2020年から始まるチケットプロモーション、3月からの聖火リレー、そして大会期間にも行う。

こうして大会の始まる約1年前から、コカ・コーラ、オリンピック・パラリンピックの接点を消費者に展開していく。

東京オリンピック・パラリンピック後の「遺産」はどうなる?

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リオ大会での一コマ。スタジアム周辺に置かれたコカ・コーラのロゴが入ったクーラーボックス。

REUTERS/Andrew Winning

高橋氏は東京大会後のレガシー(遺産)にも注目しているという。施設、スポーツ観戦、スポンサーした企業それぞれが、オリンピック・パラリンピックが終わった後にスポーツと結びつけらるか。

施設でいうと、今回のために新国立競技場や有明アリーナなど、さまざまなスポーツ施設が新しく建設された。

新国立競技場

東京・千駄ヶ谷にある新国立競技場。

出典:JAPAN SPORT COUNCIL

一方、リオ五輪や平昌五輪の施設は、大会後に野ざらしになっている姿も報道されてきた。莫大なコストをかけてつくった施設を、大会終了後にどう継続利用していくか。スポーツ関係者は、世界大会の誘致などを含めた「有効利用」を考えていかなければならない。

オリンピック・パラリンピックを観戦することは、人々の意識を変える効果もある。「スポーツ観戦する楽しみが芽生えてくると思います。その後、その意識を各競技連盟が、どうサポートしてくるのか興味があります」(高橋氏)。日本開催で高まった人々のスポーツ観戦意欲を、五輪期間終了後も継続させていくような取り組みができるかどうかで、スポーツ、各競技に対する関心が一過性で終わるかどうかが決まるとも言える。

スポンサー企業各社について、スポーツ界の盛り上げの契機になると、高橋氏は期待を語った。

「約80社の企業は、恐らくオリンピックだからスポンサーになったとは思います。しかし、そこでスポーツの価値や面白さを見いだしていただけたら、仮にオリンピックに投資した予算の1%が、大会後も残るだけでも、スポーツ界にとって大きな革命だと思います」(高橋氏)

半年後に向けて、コカ・コーラはさっそく、大会を盛り上げるキャンペーンを仕掛ける。1010組2020人の観戦ペアチケットに応募できるキャンペーンで、1月1日から始まった。コカ・コーラの「Coke ON(コークオン)」アプリでポイントを貯め、1月6日以降に応募ができるというものだ。

3月には、いよいよ聖火リレーが始まる。日本中をランナーとともに駆け巡る聖火は、五輪に向けた歓喜と熱量をさらに高めてくれるはずだ。

(文・大塚淳史)

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