オリンピック前の就活生は「勝ち組」か?2020年にかける大学生の思いとは

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東京オリンピック・パラリンピックの開会式などが行われる国立競技場。

REUTERS/Issei Kato

東京オリンピック・パラリンピックイヤーがいよいよ幕を開けた。高度経済成長さなかの前回五輪から、実に56年ぶりの東京開催となり、2020年を特別な年ととらえている人も多い。

大学生も同じだ。就職活動を控えた学生は「この時期に就活できる大学3年生は勝ち組」と話し、五輪が生む経済効果に期待を膨らませていた。

中学時代に五輪誘致成功を体験し、五輪開催と共に大人になった世代に、この夏に訪れる一大イベントは、どんな心理的効果をもたらしているのだろう。

「私たちは恵まれている」

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REUTERS/Ian Walton

2013年9月、国際オリンピック委員会(IOC)総会で2020年のオリンピック・パラリンピックの開催都市が東京に決まった。都内の大学に通う大学3年のチヒロさん(21歳・仮名)は、当時をこう振り返る。

「滝川クリステルさんが『おもてなし』のスピーチをして、東京での開催が決まった時、家族3人でテレビ中継を見ていました。当時は中学生でしたが、テレビの前でお父さんとお母さんが歓声をあげて喜んでいました。

特にお父さんはすごく興奮していて、最初は『そんなに喜ぶことなの?』と、あまりピンと来なかった。けれどお父さんから、『東京オリンピックが開かれる時代に生まれて、お前は本当にラッキーだ。しかも2020年に大学生でいられるなんてうらやましい』と聞かされて。

日本の未来は明るく、私は恵まれているのだと誇らしい気持ちになったのを覚えています」

大学でも「五輪が節目」

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撮影:今村拓馬

都内の大学に進学してからは、就職活動について東京オリンピック・パラリンピックが大きな節目になると周囲から聞かされ、五輪の存在を強く意識するようになったという。

「大学1年生のキャリアデザインの講義で、教授から『日本の景気は東京五輪後に悪くなり、就活が難しくなる。日本の経済は2020年にピーク』と言われました。学生がキャリアを本気で考えるように、教授が発破をかける意味もあったとは思いますが。

オリンピック前の2020年の春に就職活動を行うことになるので、『もし1年遅れてして就活が五輪後になれば、壊滅的かもしれない』という危機感を持っています。オリンピック開催直前の就活はステータスですね。

「人生で一度のチャンス」

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2019年11月に日本橋で開催したイベントでは、津田塾大の増野晶子さんらが浴衣を着てPRなどを行った。

撮影:横山耕太郎

「オリンピックのメイン会場に世界で一番近いキャンパスなんです。人生に一度きりのチャンス。今しかできないことをやりきりたい」

津田塾大3年の増野晶子さん(20)はそう話す。増野さんが通う総合政策学部のキャンパスは東京五輪の開会式が行われる国立競技場からすぐの位置にある。増野さんは、東京五輪に合わせて地元や地方を盛り上げようと、学生が主体となった活動プロジェクトの代表を務めている。

「五輪のため全力で」

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明治学院大の前川拳史朗さんが代表を務める実行委員会では、委員らが今度のイベント案について熱心に議論していた。

撮影:横山耕太郎

「日本に五輪が来るなんて、生きているうちに1回あるかないか。五輪を盛り上げるために全力で取り組む」

明治学院大の前川拳史朗さん(20)はそう語る。前川さんは、同大学の学生が東京オリンピック・パラリンピックに向け情報発信やボランティア活動、国際活動などを行う「MGオリンピックパラリンピックプロジェクト実行委員会」の代表を務めている。

「五輪後は採用が落ち込むと聞いている。一番いいタイミングで就職活動ができている。就職をしっかり決めて、五輪本番に臨みたいです」

日本を襲う少子高齢化

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撮影:今村拓馬

電車内や街角では五輪に関係する広告が目に付くようになり、チケットの2次抽選は倍率が29倍に。東京オリンピック・パラリンピックは大学生のみならず、多くの日本人が関心を寄せる国家プロジェクトだ。

ただ、社会に目を向けてみると、日本の現在と未来は決して明るいことばかりではない。

厚生労働省の人口動態統計の年間推計では、2019年の国内出生数は前年比5.92%減の86万4000人。90万人を割ったのは1899年の統計開始以来初めてだ。2040年の高齢化率(65歳以上の人口が全人口に占める割合)は35%を超えると見込まれ、20年後には3人に1人が高齢者だ。

年金に頼れない世代

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撮影:今村拓馬

世界に先駆けた少子高齢社会は、財政面の不安も大きい。

政府が閣議決定した2020年度当初予算案は、当初予算ベースでの総額が過去最高の102兆6580億円。社会保障費が歳出の35%を占めている。国の借金を表す国債発行残高は約900兆円にのぼり、少子高齢化の重みがのしかかっている。

年金不安も高まっている。

政府の試算の1つのケースでは、現役世代の平均給与と比較したときの年金の額は、2019年度は6割を超えていたが、2044年度に50%を割り込むとされる。実際に受け取れる年金額はさらに減ることも予想され、若い世代の多くが年金制度に不安を感じている。

止まらない少子高齢化、ますます深刻になる財政 ——。こんな時代に生まれ育った大学生にとって、2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、日本の将来を明るく照らす、一筋の光のようなものなのかもしれない。

五輪後、経済はどうなる?

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大浦征也氏は「五輪後の景気動向は、フラットに考える方がいい」と指摘する。

撮影:横山耕太郎

五輪による経済効果を歓迎する一方で、五輪終了後には経済が悪化し、就職が難しくなるのではないかという懸念も聞かれる。

東京オリンピック・パラリンピックは経済にどんな影響を与えるのか。doda編集長の大浦征也氏は次のように指摘する。

「五輪後の景気については、良くなるのか、悪くなるのかは分からない。ただ、 警備や観光分野で一時的に人を採用する動きがある。人材不足の中、五輪ニーズで人材が集まるとなれば、これをフックに採用し、事業拡大しようという流れになる可能性がある。

景気は個人消費や企業の投資活動に左右される。皆が、経済環境が悪くなると警戒して消費や投資をやめると実際に景気は悪くなってしまう。フラットにいた方がいいと思っている」

東京オリンピック・パラリンピックまで、ついにあと半年と迫った。前述の女子大生・チヒロさんは今、未来を悲観していない。

「将来はメディア業界などで働きたいと考えていますが、オリンピック前に決着をつけたいと思っています。オリンピックを大学生で迎えることができる私たちは、それだけで『勝ち組』ですから」

(文・横山耕太郎)

※編集部より:学生の声で表現の一部を加筆しました。2020年1月9日15:40

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