年末年始に「あえて帰省しない」人たち —— #帰省ブルー にラッシュ、解決策は?

新幹線

12月28日朝から12月31日午前まで、新幹線の下り線の指定席はほぼ満席だという。

撮影:西山里緒

2019年から2020年にかけての年末年始は最大9日間で過去最長の長期休暇となった。帰省ラッシュの混雑が連日報じられる一方で、帰省時の憂うつな体験を語った「#帰省ブルー」というハッシュタグがトレンド入りし、「ぼっち正月」という言葉も市民権を得つつある。

年末年始に「あえて帰省しない」—— そんな選択をする人たちにその理由と過ごし方を聞いてみた。

ラッシュ避ければ交通費は1/4に

新幹線

わざわざ混雑な時に帰省する必要、ある?

撮影:西山里緒

年4回帰省していますし、年末年始はラッシュを避けようと思っています

フリーランスでウェブマーケティングなどを請け負っている加藤こういちさん(34)はあっさりとそう語る。

都内に住む加藤さんは、年明けの1月3日に帰省をする予定だ。あえて帰省ラッシュを避けて帰る理由は2つ。「もっと安く帰省できる日があること」と「混雑を避けたい」からだ。JR各社によると、新幹線の下り線の指定席は12月28日朝から12月31日午前までほぼ満席だ。

年明けに、クルマの相乗りができるアプリ「notteco」を使えば、実家のある名古屋までの費用は2500円ほど。時間はかかるが、新幹線の4分の1ほどの値段で帰ることができると加藤さんはいう。

お正月の当日を実家では過ごせないが、不満はない。前述のように、フリーランスのメリットを活かして年4回ほどは実家に帰れているからだ。「基本、会社員の生活の“逆張り”をしています」 (加藤さん)というように、ゴールデンウィークや夏休みといった混雑シーズンを避けて旅行をすれば、格安でストレスなく帰省も可能だ。

加藤さんは、年越しは住んでいるシェアハウスで迎えるという。50人ほどが住むシェアハウスだが、関東圏に住んでいる人を中心に、帰省しない組は15人ほど。寂しさは感じないという。

両親やおばあちゃんを見て『年老いたな』と感じたら負け。白髪やシワが増えたな、などと感じない程度の頻度で帰省した方が(混んでいる年末年始に帰るより)親孝行なんじゃないかなあと

両親と疎遠で「ぼっち正月」決めた

前述の加藤さんは家族との仲は良好だというが、やはり「実家に帰りたくない」という理由で帰省しない人も増えている。都内に住むカズヤさん(仮名、23)は、2020年の年明けを一人で過ごす、いわゆる「ぼっち正月」を決めた一人だ。

カズヤさんが中学1年生の時に両親は離婚した。その後育ててくれた父親とも馬が合わなくなってしまったカズヤさんは、大学進学を機に上京。その後、年末年始に実家に帰ったことはほとんどない。大学の友人とインド旅行に行って年越しをしたり、なにか特別なことをすることもなく一人で、といった過ごし方をしてきた。

家族で食卓を囲んだり、旅行や外食をした思い出もあまりないというカズヤさん。「(この)年末年始は何をするかはまだ決めていません、つまらなくて申し訳ありません」と控えめに語る和也さんにとって、“お祝い”ムードはどこか他人事だ。

「ザ・ホームドラマみたいな“ふつう”の家庭に憧れはありますよ。でもぼくには関係のない話かな」

「シェアハウスは家族以上に家族」の場

シェアハウス

「シェアハウスの住人は、本当の家族より家族みたい」と語る、馬場宇明香さん(写真左)。

撮影:西山里緒

カズヤさんと同じシェアハウスに住む、美容師の専門学校に通う馬場宇明香さん(20)も、今年初めて、実家に帰らないことを決めたという。馬場さんも「#帰省ブルー」当事者のひとりだ。

「両親は子どもに対して“こうあるべき”があまりにも強すぎて。私の進路の話になると話が並行線になってしまうので、なるべく距離を置きたいんです」

馬場さんが住むシェアハウスは、全国に15軒ほどの拠点を持つ。年末年始に馬場さんは、大阪と京都でその拠点めぐりをして過ごす予定だという。

馬場さんにとってシェアハウスの仲間は「家族以上に家族らしさを感じられる」人たちだ。「悩みをポロッと言えたり、ごはんを一緒に作ったり……。(シェアハウスの住人が)私にとってのお兄ちゃんやお姉ちゃんなんです

ちなみに、年末年始をともに過ごす予定のシェアハウスの住人たちは、LINEやメッセンジャーでやりとりをしているが、会ったこともない人たちだ。

「(そのシェアハウスに住んでいる、ということで)もうすでにつながっている。これもあたらしい“家族のかたち”なんじゃないかなあ」(馬場さん)

「時間差帰省」に「ぼっち正月」、「シェアハウスで年越し」……帰省ラッシュの混雑が報じられる一方、今までの常識にとらわれない、“自分らしい”年末年始の過ごし方は、着実に広がっている。

(文・写真、西山里緒)


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