Facebookはいまや「メッセージングの会社」だ。数字で見る「日本とアジアの急成長」

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先月、Facebookはシンガポールにて、日本を含むアジア太平洋地域(APAC)の記者を集めて自社の取り組みを解説する記者説明会「APAC Press Day」を開いた。そこでは、主にAPACでのFacebookに関する「数字」が発表になった。

日本国内でFacebookというと、どうしてもアメリカの事情を思い浮かべがちだ。けれどもFacebook側は、意外にも「現在同社の成長を牽引しているのはAPACだ」と主張する。APAC記者向け説明会で公表された数字を軸に、Facebookのアジアビジネスを俯瞰してみよう。そこからは、日本のこれからと、日本との違いの両方が見えてくる。

事実:Facebookのビジネス成長はAPACが支えている

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Facebookの地域別のユーザー数。日本を含むAPAC地域は10億人近いユーザーを抱えており、Facebookを支える地域になっている。

撮影:西田宗千佳

まずこの数字をご覧いただきたい。これは、Facebookが運営するサービスを地域ごとに分類したものだ。APAC地域でのユーザー数は10億弱。他の地域に比べ圧倒的に多い。年率で10%成長と、成長率についても他国を大きく上回る。

理由はシンプル。この地域に全世界の人口の3分の2が集中しているからだ。当然といえば当然だが、逆にいえば、アメリカ・ヨーロッパはすでに成長の限界に達している、と見ることもできる。

先ほどの図では、アメリカ・ヨーロッパ・APAC以外が「他の地域」としてくくられている。この地域には中南米やアフリカが含まれるのだが、ここもAPACに肉薄する8億200万ユーザーがいて、年成長率も9%と高い。ユーザー数増加については、これらの国々の開拓が大きなカギを握っている、という状況が見えてくる。

Facebookの「APAC Press Day」

Facebookの「APAC Press Day」の登壇者。

撮影:西田宗千佳

「では日本はどうなのか?」と問い合わせたのだが、残念ながらFacebookは、APACでの数字は出すものの、個別の国ごとのデータを出さない方針だという。そのため、日本の状況は想像するしかない。

一般的には、日本でのアクティブユーザー数は2000万台前半と言われており、APACの数字とは大きく乖離がある。成長についても、他の地域とはかなり違う可能性が高い。

APAC地域が元気であることは、Facebookを介したEコマースの拡大にも好影響を与えている。北米でのEコマースビジネスの流通額は年間6370億ドル(約68兆8400億円)で、年率15%の成長となっている。それに対してAPAC地域は、その3倍の額である2.3兆ドル(約248兆4300億円)に成長していて、成長率も25%と大きい。要は、「この地域の成長の窓口としてのFacebookの可能性は大きい」と彼らは主張したいのだ。

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APAC地域のEコマースは年間2.3兆ドル(!)にも達しており、成長率も25%と大きい。この市場を攻略する経路としてFacebookを、というのが彼らの主張だ。

撮影:西田宗千佳

APAC市場の「メッセージングへの移行」は世界を2年先取っている

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Facebookへのモバイルでの新規加入者のうち、61%がAPAC地域から。APACは他の地域以上に「モバイル利用」が強い。

撮影:西田宗千佳

では、APAC市場は他とどう市場が違うのだろうか?

ポイントは上の図にある。まず「圧倒的にモバイル」ということだ。モバイルから加入する新規顧客のうち、実に61%がAPACからの加入者だ。PCよりもモバイルの利用が多い、というのは他の地域だけでなく、日本も同様だ。こちらについても日本単体の数字は公開されていないが、同様に「モバイルが先行」であることは想像に難くない。

実は2019年は、Facebookにとって非常に大きな年だった。理由は、同社の中で、ソーシャルメディアを利用するトラフィックを、メッセージングアプリのトラフィックが抜いたのだ。すなわち、Facebookは「SNSの会社である」以上に「メッセージングアプリの会社になった」年だった。

だが実はこの傾向、APACだけに限ると、2017年に実現されていた。これをもってFacebookは「APACは同社の未来を先取りしている」と説明する。

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左がグローバルでの、右がAPACでのトラフィック増加のグラフ。2019年、メッセージング系アプリのトラフィック(水色)が、ソーシャルメディア(紫色)を抜いた。だがAPACでは2017年にすでに逆転していた。

撮影:西田宗千佳

ただメッセージングについては、APACでは、Facebook傘下で展開されている「WhatsApp」の利用者が多いことが影響しているはずだ。日本の数字は公開されていないが、日本ではLINEが強いこともあり、同じ傾向にはなっていない可能性も高い。

とはいえ、Facebookがメッセージングの会社になりつつあることは、ユーザーの生活にも大きな影響が出ている。Facebookのログによる分析では、大人全体で80%が、10代では90%が毎日メッセージを送り、1日に3.25時間をモバイル機器を見ながら過ごしている。94%の人々がテレビを見る時もスマホを持っているという。

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Facebookのログを元にした調査より。80%の人々が毎日メッセージングし、モバイルではより素早くコンテンツをスクロールしている。コンテンツ消費の加速が見られるという。

撮影:西田宗千佳

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同様にFacebookの調査(2017年)より。なんと94%の人が、「テレビを見る時にスマホを手に持っている」と答えている。

撮影:西田宗千佳

モバイル×動画をEコマースに。Facebookが日本でも狙う「中小企業支援」

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第三者によるマーケティング調査の結果を引用し、「動画視聴者の半数以上がAPACにいる」と説明。

撮影:西田宗千佳

もうひとつの影響が「動画」だ。Facebookは「デジタル動画視聴者の半分がAPACの人々である」という消費者調査データを示し、その要因がモバイル利用の多さにある、と説明する。

この事実は、動画プラットフォームとしてのFacebookにとって大きな意味を持つ。広告動画はもちろんだが、コミュニケーションもそこにつながってくるからだ。

Eコマースでの成功例として彼らは、タイで海産物系の乾物を商うHasun Sanruethai氏を紹介した。Sanruethai氏は個人で小さく商っていたが、Facebookの動画ライブを使って乾物を売るようになると、毎回の配信で3000件以上の注文を集めるようになり、1年で48人を雇用する規模に成長したという。

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Facebook Liveでビジネスを拡大した例として、タイで海産物系の乾物を商うHasun Sanruethai氏を紹介。ユーザーにミートすれば、1人で始めたEコマースでも拡大できる、と説明する。

撮影:西田宗千佳

Facebookは、自社を中小規模ビジネス拡大のツールとして使うことを推進している。海外では「Facebook Boost」、日本国内では「その先へ with Facebook」として、中小企業や市町村と連携した活動が行われている。日本も、彼らにとって注力領域のひとつだ。

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日本でも「その先へ with Facebook」として、中小企業や市町村と連携した活動が行われている(タップするとFacebook Boostのページに遷移します)。

撮影:西田宗千佳

ネット利用の形は、APACの他の国々と日本では異なる部分もあるだろう。とはいうものの、大企業だけでなく、中小企業領域でのネット広告やEコマースの活用がこれからの成長の活路になることは、日本も変わりない。

(文・西田宗千佳)

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