人気YouTuberが台湾総統選を動かす?コワモテ入れ墨、唐揚げ売りネットアイドルも参戦

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“館長”こと陳之漢は人気YouTuberで、政治家をゲストに呼ぶこともある。

陳之漢のYouTube動画より

台湾の総統選挙が明日(1月11日)に迫っている。

選挙戦は、2期目を狙う民主進歩党(民進党)の蔡英文総統と中国国民党(国民党)の韓国瑜・高雄市長の事実上一騎打ち。両陣営とも決戦の日を前に、選挙運動を活発化させているが、思わぬ人物たちが選挙戦に影響を与えているとの声が聞こえてくる。

2019年12月末、台北を訪れた時、現地の台湾人の友人が、「見た目が怖くて“ヤクザ”みたいなYouTuberが人気になっている。彼が選挙に影響を与えるかも」と教えてくれた。

ウワサのYouTubeの名前は陳之漢(チェン・ヂーハン)。ホームページや動画でその姿を見られる。かなり大柄でマッチョな体格であり、入れ墨も多く入れていることから、友人も思わず「ヤクザみたい」と思ったようだ。元格闘家であり、自らのジムやアパレルブランドを持つ事業家でもある。

高雄市長選勝利の「陰の立役者」?

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陳之漢のYouTube動画。

陳之漢のYouTube動画より

“館長”のあだ名で知られる陳は、数年前に自らのYouTubeチャンネルを開設。動画を投稿している。動画の中には、政治に関する批評も多く、汚い言葉や荒っぽい表現で遠慮なく話すその姿が、瞬く間に若者を中心に人気となっていった。

今ではチャンネル登録者数は85万人。度々行なっている生放送が始まると、瞬く間にリアルタイム視聴者数が1万人を超える。彼の人気にあやかりたいのか、政治家たちがゲストとして登場することもある。

最初に陳の影響力を知らしめたといわれるのが、2018年に行われた高雄市の市長選挙。当初は泡沫候補と言われていた韓国瑜が、逆転当選した。その選挙戦のさなか、韓は陳のYouTubeに登場し、陳は韓の応援を表明した。実際の効果は定かではないが、若者が支持するきっかけにもなったとされ、一部には「館長のおかげで当選した」と言われるほどだった。

ところが、高雄市長となった韓は2019年6月、激化した香港デモに対して「よく知らない」と発言したり、高雄市長に就任して1年もたたないうちに今回の総統選へ出馬したことで、陳は激怒。一転し、今回の総統選では蔡総統を支持している。

台湾のテレビ局に勤務するある記者は、陳の影響力の大きさについて、複雑な思いを抱えながらもこう評価する。

「テレビ局や新聞は陳をあまり取り上げずに無視していますが、彼がSNSに投稿すると『いいね』が万単位でつきます。若者の間では彼のことを知らない人がいないくらい。圧倒的な知名度、影響力です」

「唐揚げ売りアイドル」も政治投稿

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インターネット発のアイドルである鄭家純(イリィ)。左はInstagramのストーリーで投稿された総統選投票の呼びかけ。

イリィのInstagramより

大きな影響力をもつのは、強面(こわもて)YouTuberの陳だけではない。

ネット発グラビアアイドルもSNSで積極的に政治的な内容の投稿をしている。台湾で“鶏排妹(チーパイメイ)”の愛称で知られる女性タレント、鄭家純(チェン・チアチェン)は、7、8年前に鳥唐揚げの露店で働いていたところ、「美人唐揚げ売り」とインターネットで取り上げられ、注目をあびた。当時、日本でも話題となった。

日本ではイリィの名で活動する彼女は、FacebookとInstagramで積極的に香港デモを支持したり、総統選で蔡英文総統を支持したり、あるいは「1月11日には必ず投票に行きましょう!」との呼びかけ投稿を繰り返している。

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台湾ネット発のアイドルのイリィ(左)は、日本でもタレント活動を行っている(写真は2019年2月11日に東京タワーで行われた台湾イベントの様子)。

撮影:大塚淳史

若者の政治への関心が高まったきっかけ

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台北駅前で投票を呼びかける若者たち。

撮影:大塚淳史

こうした若い世代に人気のYouTuberだけでなく、そもそも台湾の若者は政治への関心が高いという。

2014年のひまわり学生運動の頃から、若者たちが政治に対する意識が高まってきました。SNSでも政治について投稿する人が増えました」(台北在住の20代後半の台湾人女性)

中国との対立路線である蔡英文総統は1年前、不人気に苦しんでいた。香港デモの激化で結果的に支持率が高まった面もあるが、それとは別に、ネットを通じて人気の“館長”や女性アイドルと積極的に交流していることで、若者世代からの支持基盤を着実に高めている。

日本では人気YouTuberがそこまで政治に大きな影響を与えたケース、政治活動に積極的に関わったケースはまだ見受けられないが、いずれ日本でも同様の現象が見られるようになるかもしれない。

(文・大塚淳史)

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