「大手とは組まない」ドロップボックスが1兆円企業に成長した理由。創業者が語った15年の戦い

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ドロップボックス ドリュー・ヒューストン

ドロップボックス共同創業者兼CEOのドリュー・ハウストン。

REUTERS/Lucas Jackson

  • ドロップボックスの共同創業者であるドリュー・ハウストンとアラシュ・フェルドーシは飽和状態のクラウドストレージ市場に乗り込んでいった。
  • 彼らは既存サービスへの不満から出発して、自らのプロダクトを差別化することに成功した。
  • 彼らは、ビジネス特化型SNSリンクトインの共同創業者であるレイド・ホフマンを聞き手に、いかにしてサービスの成長とユーザーの維持を実現したか、ポッドキャストで語っている。

きょう、ドロップボックスは企業価値79億ドル(約8600億円)の巨大企業だ。

2019年の第3四半期決算では売上収益4億2820万ドル(約470億ドル)、ユーザー数は5億人以上、従業員数は2300人を超えた。

そんな同社も、かつてはクラウド業界の小さなスタートアップに過ぎなかった。

共同創業者のドリュー・ハウストンCEOは、ドロップボックスの創業当初の小さなチームが競争の最前線に躍り出るために、バイラルマーケティング戦略(=ユーザーが口コミなどで友人や同僚に紹介するよう仕向ける低コスト戦略)を採用したことを明かした。

ドロップボックス創世記

ドロップボックス クラウド

ドロップボックスは、グーグルドライブに続いて市場シェア第2位。

ngkaki / iStock Editorial / Getty Images Plus

2006年当時、オンラインストレージはスタートアップが乗り出す事業分野としてありふれたもので、まずは押さえておくべきデフォルトの仮想領域といった状況だった。

いくつもの企業が参入し、それぞれの考え出したソリューションを試しては失敗してをくり返していた。

クラウドストレージという発想は特段目新しいものではなかったけれども、ハウストンとフェルドーシが他と違ったのは、彼らはいら立つユーザーの視点に立って問題を考えていたことだった。

市場にはいくつもの選択肢がサービスとして提供されていたが、ハウストン自身が安心してファイルを預けられるものは1つとしてなかった。

そこで2人が彼らなりのアプローチとして立ち上げたのがドロップボックスだった。ドロップボックスの市場シェアはグーグルドライブ(34.68%)に続く第2位(24.10%)。ユーザーは世界に5億人以上、うち課金ユーザーは1400万人(2019年第3四半期時点)に達する。

ハウストンはポッドキャストでこう語っている。

「ユーザーの中には、サービスを提供しているのが何という名前のどんな企業なのか、市場がどんな状況なのか知らない人もたくさんいる。

でも、それでいいと思ってるんだ。エンドユーザーからしたら、『どんなPCからでもファイルやフォルダを取り出して使えるようにしたいんだけど』ってだけのことだからね」

ハウストンは、並み居る競争相手を押しのけてシェアを獲得できた理由をよくわかっている。それは、他のサービスの足りないところを実際に使って把握していたからだ。

「簡単そうに見えて、実はなかなか難しい理由が、自分には見えていた。だから、あとは飛び込んでいくだけだった。競合には勝てるってことは、初めからわかってたんだ」

「大手に返り討ちにされるのが関の山」

ドリュー・ヒューストン アラシュ・フェルドーシ

2018年3月、ドロップボックスは米NASDAQに上場を果たした。中央に共同創業者のハウストン(左)とフェルドーシ(右)。

REUTERS/Lucas Jackson

とはいえ、12年前の創業時点で成功が確約されていたわけでは決してない。

シリコンバレーの著名アクセラレーターであるYコンビネーターの支援を受けてからは、アップルやマイクロソフト、グーグルといったテック業界の巨人たちが競合として立ちはだかった。

投資家たちからは、「大手に返り討ちにされるのが関の山だろうね」とよく言われた。でも、ハウストンはこんなふうに切り返したものだ。

「返り討ちでけっこう。どっちが勝ったって、USBメモリをいつも持って歩く必要がなくなるんだからね。結果オーライさ」

その後、ベンチャーキャピタル大手のセコイアが、まだシードラウンドのドロップボックスに125万ドル(約1億5000万円、当時のレート)の出資を決めたのは突然のことだった。結果的に、2018年3月に米NASDAQ上場を果たしたことで、セコイアは20億ドル(約2200億円)を手にしている。

(インタビュー聞き手のリンクトイン創業者)ホフマンは、ハウストンの特長を「ほとんどブレることなく、何ごとにもひるむことなく、自分が生み出したプロダクトにこだわり続けていること」と評価する。

ハウストンは大企業とは手を組まないことに決めていた。スティーブ・ジョブズから直接コンタクトを受けたときでさえも。大手との協業は重しとなり、それによってドロップボックス側が失う機敏性と(価値が)釣り合わないというのがその理由だ。

「リファラル」導入後に爆発的成長

ドロップボックスにとっては、機敏性の維持が何より重要だった。ハウストンとフェルドーシがユーザー基盤拡大のために選んだ戦略は「リファラル」、人が人に紹介する手法だったからだ。

リファラルも別に目新しい手法ではない。ペイパルはかつて紹介料として5ドルを支払う方式を採用していた。

しかし、ハウストンはよりシンプルなやり方にしたいと考えた。紹介(友だち招待)の見返りに追加ストレージを提供し、同時に獲得できる追加容量の上限を取り払うことにしたのだ。

結果として、ドロップボックスは爆発的な成長を遂げた。ユーザー数はリファラル導入前の10万人から10日後には倍増。そのままの勢いを保って、7カ月には100万人を突破し、いまも増え続けている。

ユーザーをつなぎ止めるために

ドロップボックス アプリ

Shutterstock.com

それでも、リテンション(ユーザーのつなぎ止め)は問題として残った。リファラル経由でドロップボックスに登録したユーザーの6割は、結局サービスを使ってくれなかった。

ハウストンはその理由を知りたかった。そこで、彼はオンラインコミュニティ「クレイグスリスト」に投稿し、招待メールを受けとってファイルをシェアする一連のサービスを使ってくれる人を40ドルで募集した。

テストの結果はイマイチ、というより失敗だった。

ドロップボックスをうまく利用できたのは5人中1人もいなかったし、ダウンロードの方法すらわからない人がほとんどだった。ダウンロードがいつ終わるのかわからないのでいら立ち、ブラウザで別のページを閲覧する人たちもいた。ダウンロードが完了しても、どこにそれが保存されたのかわからない人もいた。

ハウストンと彼のチームはテストユーザーがつまづいたポイントを正確に特定し、それに従ってユーザーエクスペリエンス(UX)を微調整した。チームのスプレッドシート上に共有された改善点のリストは80件以上にもなった。

「僕らはいまも、ビジネスは基本的に次のような点に集約されると考えている。どうやって顧客をつかまえるのか。つかまえた顧客をどうやってアクティブにするか。どうやってつなぎ止め、マネタイズするのか。そうした点について、自分たちのプロダクトにとっての最適解を探すことがいかに重要か。これからビジネスを大きくしたい人たちに一番言いたいのは、それだね」

[原文:How Dropbox billionaire Drew Houston hacked viral marketing and user retention to launch a $7.9 billion company

(翻訳・編集:川村力)

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