マッサージFC「リラク」運営が“ヘルステック”へ。充電不要の活動量計「MOTHER」で新規参入【CES2020】

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充電も電池交換も不要のアクティビティートラッカー「MOTHER」を、2020年8月以降日米に展開する。

出典:MATRIX Industries

  • Re.Ra.Ku運営のメディロムが米ベンチャーに出資、アクティビティートラッカー事業に新規参入
  • 充電不要にすることで「継続利用」できるツールに。企業導入も狙う
  • 価格は1万5000円以下を想定、8月に日米発売

リラクゼーションスタジオ「Re.Ra.Ku(リラク)」などを展開するメディロムは先週、米ラスベガスで開催されたCES2020にあわせて、世界初となる充電も電池交換も不要のアクティビティートラッカー「MOTHER」を現地発表、アクティビティートラッカー事業に本格参入する。

アクティビティートラッカー:運動量や睡眠時間などを計測できる体に身に着けるセンサーのこと。多くの場合、腕時計のようなバンド型が多い。

「MOTHER」はシリコンバレーに本社を置くMATRIX Industries社と資本提携し、共同開発中。 MATRIX Industries社は充電不要のスマートウォッチ「MATRIX PowerWatch」シリーズを独自に日本国内でも発売している。

「MOTHER」は発売中の「MATRIX PowerWatch Series2」と同様、体温を使って自ら発電する機能を搭載する。これは物質の両端に温度差を与えると両端間に電位差が生まれる、「ゼーベック効果」と呼ばれる仕組みを応用したもの。

開発中の「MOTHER」のプロトタイプ

開発中の「MOTHER」のプロトタイプ。前面に太陽光パネルを搭載。太陽光で発電と体温による発電と組み合わせて動作する。

撮影:太田百合子

開発中の「MOTHER」のプロトタイプ

背面には体温を感知するセンサーや心拍センサーを備える。

撮影:太田百合子

MATRIX Industries社のテクノロジーを紹介する展示

ラスベガスの発表会場には「MATRIX PowerWatch」シリーズをはじめ、MATRIX Industries社のテクノロジーを紹介する展示が多数あった。

撮影:太田百合子

活動量や消費カロリーのほか、「睡眠時間」や「睡眠の質」の計測が可能で、心拍計も搭載。消費カロリーは、活動量のほか、体温の変動も加味してより正確に計算ができるという。

スマートフォンを通じたアラームやタイマーの設定/解除も可能で、時間になるとバイブレーションで通知する。もちろん防水機能も備える。メディロムで製品開発を担当する植草義雄氏は「(軽い水没にも耐える)IPX7相当を目標に開発を進めている」と説明する。

こうしたデータは毎日継続して記録してこそ価値のあるものだが、一般的なアクティビティートラッカーでは、充電時や電池交換時にどうしても記録のない空白の時間が生じてしまう。充電も電池交換もいらない「MOTHER」なら「24時間365日の装着、トラッキングが可能」(植草氏)だとする。

MATRIX PowerWatch Series2

日本でも2019年12月より発売中の「MATRIX PowerWatch Series2」(6万5780円、税込)。

MATRIX Industries

アプリはメディロムのオンデマンドトレーニングアプリ「Lav (Lifestyle Assist for Vitality.) 」と連携するほか、他のアプリ向けにもSDKを公開し、デバイス(MOTHER)から直接、Bluetoothでデータを取り込めるようにする。

これはユーザーの利便性を高めるとともに、「健康経営」に取り組む法人の需要に対応するためだ。

Lav

オンデマンドトレーニングアプリ「Lav」は、トレーニングを受けたい人とコーチをマッチング。医師監修のもと、生活習慣病予防のための特定保健指導プログラムにも取り組める。

撮影:太田百合子

メディロム社長の江口康二氏は、

「我々はすでに自分たちのビジネスを確立した上で、新しい事業としてアクティビティートラッカーに取り組む。アプリのダウンロード数を伸ばしたり、デバイスを売らないと生きていけないワケではない。そこを最後発でこの事業に取り組む強みとしていきたい」

と話す。

どのアプリ、サービスでもデータを直接利用できるようにすることで、ヘルスケア、フィットネス、介護など、健康関連産業全体を盛り上げていきたいという。参入の背景にはメディロム自身、オンデマンドトレーニングアプリ「Lav」を使った特定保健指導プログラムを展開する中で得た「経験」からの学びもあるようだ。

特定保健指導プログラムは、メタボリックシンドロームの予防・改善を主な目的に実施する「特定健康診査」の結果、生活習慣病の発症リスクが高い人に対して生活習慣の改善サポートを行うプログラム。メディロムでは医師監修の「Lav」を用いて、既に対象者のオンデマンドサポートを提供している。

アクティビティートラッカーを活用したサポートを行う上で、「充電するために取り外さなければいけない」「データを取り込むのが面倒」ということが、継続利用の妨げになってきたという。これが「自らアクティビティートラッカー事業に参入する、大きなきっかけとなった」(植草氏)

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なお、発表時に展示されたモデルはプロトタイプで、デザインは今後ブラッシュアップされる予定。この製品イメージに近いものになるという。

MATRIX Industries

最終的にはデイリーユースできるDタイプに加えて、バンド部分にNFCタグを装着し、出退勤管理等に利用できるオフィス向けのOタイプ、スポーツジム等で利用可能なGタイプと、3タイプの展開を目指す。このうちOタイプでは将来、FeliCaを用いた電子決済などもできるようにしていきたいという。

バンドはいずれも付け替え可能で、交換バンドも複数用意する。価格は1万5000円以下を想定。発売は8月で日本のほかアメリカでも発売予定だ。当初はBtoBでの展開がメインになるが、すでに個人向けの製品展開について、東急ハンズやロフトといった販売店とも話を進めている。

厚生労働省が2019年に発表した2017年度のデータによると、日本の特定検診は対象者数約5388万人に対し受診者数約2858万人。特定保健指導は対象者数約492万人に対し、修了者数は約96万人。

日本だけでも、使い続けられるアクティビティートラッカーを必要としている人は大勢いる。

アメリカにはさらに大きな市場があるのは明白で、無充電を武器に日本の最後発メーカーがどこまで勝負できるのか、注目だ。

(文、写真・太田百合子)

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