黒字リストラ拡大で「上司」も外注サービス増加、人手不足とマッチング

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40代からリストラ対象になる時代が、やってきている。2019年にも相次いだ企業の早期退職者募集の流れで特徴的なのは業績不振のみならず、業績好調の企業でもリストラ、いわゆる「黒字リストラ」に踏み切っていること。企業はデジタル化やテクノロジーの進化に合わせ、組織の新陳代謝を図ろうとしている。

そんな中、管理職やリーダー層を社外へ外注するサービスが注目を集めている。

マネージャー経験者や高いスキルの人材を企業に紹介するものだが、管理職層の副業や社外での腕試しの場としても人気で、登録者数は右肩上がり。黒字リストラやリストラの低年齢化を受け、「いつ自分も会社を離れるか分からない」と考え始めた働き手のニーズと、ベンチャー企業を中心とした管理職人材の不足がマッチしているようだ。

「40代以降の人生を考え直さずにいられない」

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会社が早期退職募集を開始して、明らかに流れが変わったという(写真はイメージです)。

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「氷河期の就活が厳しい時に入った会社なので、定年まで勤めてもいいかなと思っていましたが。早期退職募集のあたりから、明らかに雰囲気が変わりました」

そう話すのは都内の一部上場企業に勤めるユウジさん(41=仮名)。ユウジさんの会社は最近、希望退職募集を始め、ニュースにもなった。対象となる45歳以上がポロポロと辞め出すのと同時に、退職を望んでいなかった人と退職を勧めようとする会社の間で、険悪なムードになったのには、いたたまれない気持ちになった。

「優秀な人から転職してしまい、行き場のない人が残った感じです。残った人にも会社への不信感が高まって、職場の雰囲気ははっきり言ってよくない」

早期退職により、現場は人が抜けて玉突き人事が起こり、ユウジさんも未経験の部署に異動になった。一連のことをきっかけに、ユウジさんは転職サービスに登録。「自分の世代は人数が多くないので、退職金割り増しで早期退職の対象にはならない。とはいえ、いやでも40代以降の人生を考え直さずにはいられない」という。

管理職や役員クラスの登録が3割増

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エンワールド・ジャパンの管理職派遣は2019年は全体で3割近く登録者を増やしたという(写真はイメージです)。

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「定年まで今の会社にいるとは限らない」——。そう考える人は増えている。それと連動するように中堅以上の社員の、第二の人生の選択肢となるサービスも伸びている。

「面白いプロジェクトがあれば参加したいという、早期退職プログラムに手をあげて会社を退職した管理職や役員クラスの人の登録はこの1〜2年で増えています」

そう話すのは、マネジャー以上クラスの人材を企業に派遣する「管理職派遣」を手がけてきた、エンワールド・ジャパンのシニアマネージャーの星野ファビアンさんだ。

同社は、外資企業を中心に、語学スキルかつ専門知識と経験をもつグローバル人材の派遣を手がけている。

「2018年10月〜2019年9月では前年同期比で、全体の登録者が3割近く増えています。そのうち50代は4割増、マネージャー以上役員クラスも同34%増です」

もともと女性の採用が増える中で産休・育休中のカバー、1〜2年単位のプロジェクトのリーダー職などへ人材を派遣してきた。しかしここにきて、ハイキャリアの男性が「第二の職場」を探す事例が増える傾向があるという。

「変化の激しい時代に、新規事業の立ち上げや起業も増えています。経験豊富な人材をピンチヒッターとして頼んだり、新しい風やアイデアを吹き込むことを期待したりして、利用しているようです」(星野さん)

外部人材でも権限ありが特徴

「早期退職者やフリーランスで働く人、副業推奨の会社の管理職などが登録しています。男性が7〜8割で、サービス開始から登録は急増しています」

ビースタイルの管理職支援サービス「ビズディレクターズ」の事業担当責任者、田口一代さんはいう。

ビズディレクターは2019年2月にサービスを開始。ウェブサービス事業を中心に、年収1000万円クラスのハイキャリア人材を企業へ紹介するサービス。開始以来、右肩上がりで利用企業・登録者共に増やしている。

基本的には業務委託で外部人材として「助っ人」に入り3カ月程度で契約更新を重ねる。プロジェクト単位のマネージャーや新規事業分野で経営層のアドバイザリーなど、専門性を活かしつつ、「外部人材でありながらも、権限を持って関わる場合もあるのが特徴。管理職の一部外注のような役割を果たしています」(田口さん)。

「いつでも上司を取り替えられる」人材サービス

SHAREBOSS

シェアボスの紹介ページには、実績とキャリアを持った「ボス」がずらり。

出典:カーマンラインHP

「いつでも上司を取り替えられる」「日本初、ボスのサブスク(月額定額サービス)」といった刺激的なキャッチコピーで、2019年9月に本格的にサービス開始したのはカーマンライン。

30〜40代前半のデジタル系人材で、マネージャー以上の経験者を100人超集め、企業の新規事業やデジタルトランスフォメーション(デジタル変革)のプロジェクトに対し、人材を提供している。シェアボス登録者には、銀行や大手IT企業の経営者など経験豊富な顔ぶれがそろう。

カーマンライン社長の岡村直人さんは、自身もグリーや中古車ガリバーのIDOMなどで事業責任者を務めてきた。

「日本企業の抱える問題は、企業の意思決定がデジタル化や時代の流れに追いつけていないこと」と考え、デジタル人材のリーダー層を供給するシェアボスを構想し2018年に起業した。

「昨今、日本企業もようやく新陳代謝が起こり始めている。シェアボスは、早期退職者の受け皿というより、早期退職者募集と並行して起きる新規事業や、変革を行う人材の供給源です」(岡村さん)

「もっと大企業に導入して欲しいのですが、今は成長中のスタートアップの組織づくりや人材育成のためにシェアボスを利用するニーズが高い」という。

リストラはもはや人件費カットの手段ではない

東京商工リサーチの調査によると、黒字企業でもリストラが増えたのが2019年の特徴だ。これはつまり企業のリストラが、業績不振による人件費カットのためでなく、組織の新陳代謝を常に図り、時代の変化に適応していくための手段として使われ始めたことに他ならない。

「社外の活躍の場」としても「新しい風を吹き込むため」の手段としても、管理職外注のような外部のプロフェッショナル人材の調達サービスは、ますます盛んになりそうだ。日本型雇用崩壊のその先にある、新たな雇用の流れはすでに、生まれている。

(文・滝川麻衣子)

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