ナイキの厚底シューズ「禁止」報道、五輪マラソン代表選考に広がる「不安と影響」

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陸上界を席巻したナイキの厚底シュース「ヴェイパーフライ」シリーズ。

ナイキのホームページより

イギリスの複数のメディアが報じた、ナイキの厚底シューズ「ヴェイパーフライ」シリーズについて、世界陸連が新規則で禁止にする可能性が高いというニュースが陸上界を揺るがしている。

ナイキの厚底シューズ「ヴェイパーフライ」は、内部に埋め込まれた炭素繊維のプレートによって反発力が高いのが特徴だ。同シューズを履いたランナーたちが、マラソンで次々と好記録を生んでいった。この2年ほどの間に、トップランナーたちの間で瞬く間に広がっていった。

2019年10月にはオーストリア・ウィーンのフルマラソン非公認レースで、男子マラソンのエリウド・キプチョゲ(ケニア)が、ナイキの厚底シューズの試作品で1時間59分40秒と、人類初の2時間切りを達成した(下記の動画はその様子)。

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非公認レースで2時間切りを達成し、ケニアの国旗をかかげるキプチョゲ。

Reuters/Lisi Niesner

日本でも多くのランナーが厚底シューズを使用

また、日本では設楽裕太が2018年2月にの東京マラソンで、ナイキの「ヴェイパーフライ」シリーズを履いて、16年ぶりに日本記録を更新。同年10月には大迫傑が同シリーズを履いて、さらに日本記録を更新した。最近では、年始にあった箱根駅伝で、出場選手の約8割がナイキの厚底シューズを使用していることが話題となった。

イギリス発の報道によると、世界陸連は、靴底の厚さに制限を加える規則を設けることになるという。現在トップランナーたちに愛用されているナイキの厚底シューズは、本当に使用できなくなるのか? まだ世界陸連は正式には何もアナウンスしておらず、実際に禁止されるのかどうかは、1月17日午前10時時点では不明だ。

オリンピック代表選考レースへの影響は?

東京オリンピックのマラソン本番まで約7カ月前というタイミング。このタイミングで禁止となれば、厚底シューズを使用しているランナーたちにどんな影響が出てくるか。日本陸上連盟に問い合わせたところ、

「現状報道のみで、世界陸連から正式に公表されている内容ではありませんので、陸連としてお答えできる内容ではございません」

との回答に終始した。

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日本記録保持者の大迫傑(写真は2014年10月2日、アジア競技大会出場時のもの)。

Reuters/Jason Reed

識者はどう見るか。

正式に禁止となると、そのタイミングによっては日本代表の選考に影響する……と指摘するのは、元箱根駅伝のランナーであるスポーツライターの酒井政人さん。

現在、マラソンの日本代表は3枠中2枠が男女ともに決まっている。残り1枠を掛けた選考レースが、3月末までにこれだけ残っている。

男子:

・3月1日 東京マラソン2020
・3月8日 びわ湖毎日マラソン大会

女子:

・1月26日 大阪国際女子マラソン
・3月8日 名古屋ウィメンズマラソン2020

さらに条件として、男子は2時間5分49秒(大迫の日本記録より1秒短い)、女子は2時間22分22秒以上で、日本人最上位が選ばれる。

「いつ(厚底規制の)規定が決まるかによっては、選考レースに影響がでます。例えば、男子は東京マラソンかびわ湖毎日マラソンで日本記録を上回らないといけません。もし、規定が1月末に出るとなると、3月に行われるマラソンで、日本記録更新は難しくなります。現在の日本記録自体も厚底シューズを履いて出しているわけですし」(酒井さん)

ただ、例え厚底シューズが規制されたとしても、オリンピック本番での影響はないのではないかとも指摘する。

「オリンピック本番での条件は、参加選手の条件自体はフラットな状態。オリンピックは記録どうこうではないので、禁止されたとしても影響はないと思います」(酒井さん)

ただし、メーカー側、ナイキが受けるダメージは小さくないかもしれない。ナイキは厚底シューズをけん引し、現在のランナー向けシューズは厚底シューズを主に開発していると思われる。いざ禁止や規制強化となれば、既に開発を進めていたものは、いったんストップせざるを得ないのではないか。

「ただ、ナイキが黙っているとは思えません。スポーツ仲裁裁判所に訴える可能性はあります」(酒井さん)

Business Insider Japanではナイキ広報に厚底禁止報道の影響についてコメントを求めているが、1月17日午前10時時点では返答はない。正式回答があり次第記事をアップデートする予定だ。

選手、メーカーに突如、降りかかってきた厚底シューズ問題。最後の3枠目に向けて調整する、日本記録保持者の大迫傑は、心境を「ヴェイパーどうのこうの記事に疲れている人多いはず。どっちでも良いからさっさと決めてくれーい!僕ら選手はあるものを最大限いかして走るだけ!それだけ!」とツイートした。

世界陸連が「さっさと」発表するのか、正式通知が待たれる。

(文、大塚淳史)

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