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地質時代「チバニアン(千葉時代)」とは何か? 日本の地名が地球史に刻まれる!

養老川沿いのようす

千葉セクションは、千葉県を流れる養老川沿いにある。川の流れによって岸壁が削られることで、地層が露わになった。(写真は2018年5月撮影)

撮影:三ツ村崇志

私たちは、世界各地にある地層を調べることで、約46億年にわたる地球の歴史を少しずつ紐解いてきた。ジュラ紀白亜紀カンブリア紀といったさまざまな地質時代の名称は、地層を調査する中で決められていった。

2020年1月17日、史上初めて、日本由来の地質時代が誕生した。

その名も「チバニアン」。日本語にすると「千葉時代」だ。

編集部より:「チバニアン」認定が確実になったため、初出時以後に冒頭の文をアップデートしています。2020年1月17日 14時38分

※以下の取材はチバニアン「認定前」の取材をもとに構成しています

日本の地質学史上初の快挙なるか?

千葉セクション

千葉セクションには、杭や看板など、至る所に調査の跡が残っている。(2018年5月撮影)

撮影:三ツ村崇志

「とにかく無事に最終審査を通らないとなんとも言えませんが、まさに感無量。やっとここまできた、という感じです。申請を始めてからこんなに長く時間がかかるとは思っていませんでしたが、無事申請が通れば間違いなく日本の地質学史上初の快挙です

こう話すのは、2013年夏から約6年半にわたり千葉県市原市にある地層(千葉セクション)をその時代の特徴を最もよく記録している地層「GSSP(国際境界模式層断面とポイント)」として申請するチームをリードしてきた、茨城大学の岡田誠教授だ。

2020年1月17日、韓国・釜山で行われている国際地質科学連合(IUGS)の理事会で、千葉セクションをGSSPとして認めるか否かの最終投票が行われる。

投票権を持つのはIUGSの10名の理事。そのうち6名以上の賛成が得られれば、千葉セクションが約77万4000年前〜約12万9000年前の時代のGSSPとして認定され、その地質時代が「チバニアン」と名付けられることになる。

千葉セクション

千葉セクションには、一般の方でも簡単に見学に行くことができる。2019年12月には、仮設ガイダンス施設「市原田淵地磁気逆転地層ビジターセンター」が開設された。(写真は2018年5月撮影)

撮影:三ツ村崇志

申請チームは、2017年11月の第1次審査から、これまでに3度にわたる審査をクリアしてきた。

「2019年11月に行われた国際層序委員会(ICS)による審査(第3次審査)が、科学的な部分についての本審査のようなものでした。その時は『もう、千葉でいいよね』という印象でした。過去には第4次審査でひっくり返った例もあるので気は抜けませんが、科学的な部分については大丈夫なはずです」(岡田教授)

なお、第4次審査は、最終的な決定権を持つIUGSの理事がICSの決定を認めるかどうかが焦点となる。

IUGSの理事会ではいくつかの議題が話し合われる予定。GSSPの決定は、そのうちの一つとして取り扱われる。岡田教授ら、申請チームは、1月17日の午後4時から国立極地研究所でIUGSの理事会の結果を受けた記者会見を開催する予定だ。

「日本の地質学では、ずっとヨーロッパなどの調査によって決められた地質時代の名前を覚え、それに追いつこうとしてきました。いわば、海外から与えられたものだったわけです。それが今や自分たちで時代の名前を与えられるかもしれないだなんて、かつては露(つゆ)にも思いませんでした。

今回の認定が決まれば、『この時代のことを知るなら千葉の地層が一番だ』と、世界に間違いなく主張できます。世界中の研究者がこの時代についての研究を千葉で行うような流れのきっかけになるのではないかと思っています」

と、岡田教授はGSSPの認定への期待を語った。

千葉セクションに刻まれた、世界がうらやむ「地磁気逆転」の痕跡

地磁気

地球は磁場によって覆われている。この磁場の向きが逆転する現象を「地磁気逆転」という。最も最近地磁気が逆転したのが、約77万年前。チバニアンがはじまった直後の時代だ。

vchal/Shutterstock.com

千葉セクションはもちろん、千葉県房総半島の地層は、約77万4000年前から約12万9000年前までのチバニアンの環境を知る上で世界的に非常に価値が高い。その理由は何なのか。

調査

チバニアンの地層には、至る所に調査用の穴が空いている。もちろん、一般の方が見学時に不用意に地層に穴をあけてはいけない。(写真は2018年5月撮影)

撮影:三ツ村崇志

岡田教授によると、千葉セクションでは1000年分の土砂が約2メートルの厚さに堆積しているという。一般的な地層は、せいぜい1000年分の土砂でも約60cm程度の厚さにしかならない。実はこのちがいが、チバニアンの環境を調べる上で非常にありがたい。

同じ期間でより厚い地層が作られるということは、その地層を細かく調べることで、年代や当時の環境変化をより綿密に推定することができることを意味する。

とりわけ、チバニアンの初期には地球規模の大きな環境変動が起きたことが知られている。地磁気逆転だ。

地磁気とは、地球がみずから作り出している“磁力のバリア”のようなもの。私達はこのおかげで、太陽からの強い放射線の影響を受けずに済んでいる。

現在の地球では方位磁石のN極が地磁気に沿って北を向くが、長い地球の歴史上、方位磁石のN極が南を向くような時代が何度もあったことが分かっている。

千葉セクションの地層には、地磁気が最後に逆転した際の過程がはっきりと残されているのだ。

「千葉セクションで最も重要なのは、地磁気が逆転する一連の過程が、1000年分で約2メートルという厚い地層に記録されているということです。世界を見渡しても、これほど細かく地磁気逆転のようすが記録されている地層はなく、千葉セクションを調査することで、今まで分からなかったことがどんどん分かるようになると思います」(岡田教授)

また、岡田教授によると現代の地球の環境は、チバニアンになってから完成されたものだという。

「千葉セクションの地層を調べることで、現代と同じような環境の地球で、人間が存在しなかった場合にどんな気候変動が起きるのかということ、いわば『かつて起きていた現代型の地球の気候変動』を知ることができます。これは、未来の地球に何が起こるのかを予測する上でも役立つでしょう」

(文・三ツ村崇志)

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