全米が注視するトランプ氏弾劾裁判。新証言なども提出、大統領選への影響は?

トランプ氏に対する弾劾条項の書類を送り届ける下院議員ら

トランプ氏に対する弾劾条項の書類を上院へと送り届ける下院議員らの様子は、全米で報じられた(2020年1月15日撮影)。

REUTERS/Jonathan Ernst

国家の首脳が法を犯した可能性があれば、訴追する仕組みがあり、その疑惑を追及する仕組みがアメリカでは存在し、機能している。米議会上院で1月16日、トランプ大統領のウクライナ疑惑に関する弾劾裁判が始まった。

1月15日、米議会下院でのトランプ氏に対する弾劾条項を上院に送ることが決議されたのを受けて「舞台」は上院へ。下院議員が議事堂の下院から上院に向かって、徒歩で、弾劾条項の書類を送り届ける様子が、カメラのフラッシュを浴びて報道された。

ビル・クリントン元大統領のモニカ・ルインスキースキャンダルに絡む弾劾裁判から20年余り。アメリカで史上3回目となる大統領の弾劾裁判を私たちは目の当たりにしている。

「桜を見る会」など安倍政権のスキャンダルに議会だけでなく官僚までが「忖度」し、“違法行為”がまかり通っている日本から見ると、トランプ大統領の弾劾手続きは毎日驚きだ。

アメリカでは1日中生中継

連邦議会議事堂に到着するジョン・ロバーツ連邦最高裁首席判事

弾劾裁判が開かれる連邦議会議事堂に到着するジョン・ロバーツ連邦最高裁首席判事(2020年1月16日撮影)。

REUTERS/Jonathan Ernst

仮にトランプ氏が有罪になれば大統領職から罷免する弾劾裁判の仕組みは以下である。

  • 裁判長 ジョン・ロバーツ連邦最高裁首席判事
  • 陪審員 上院議員100人
  • 検察 下院で選ばれた弾劾管理人
  • 審理証人 トランプ大統領ほか

上院で弾劾裁判が始まるセレモニーは1月16日、「歴史的瞬間」として、テレビで1日中生中継された。

  • 午後0:05(米東部時間) 下院民主党で選ばれた「弾劾管理人」が上院の議事堂に案内され、アダム・シフ情報委員長(カリフォルニア州)が首席弾劾管理人として、トランプ大統領の弾劾条項、つまり訴状に値する「権力の乱用」「議会妨害」の内容を読み上げた。
  • 午後0:22 弾劾管理人が退席。
  • 午後2:00 上院議員の重鎮が、連邦議会議事堂の向かいにある連邦最高裁判所に歩いて、ジョン・ロバーツ最高裁首席判事を迎えに行き、上院に案内。上院議員やスタッフが起立して見守る中、ロバーツ氏が弾劾裁判の裁判長として宣誓

直後、上院議員100人がロバーツ氏のリードで起立し、右手を上げ、公正な裁判を行う陪審員として裁判を行うことを誓った。その後、弾劾裁判の陪審員としての署名を実施。マントをまとったロバーツ氏が上院議事堂に現れた時は、一瞬張り詰めた、でも異様な雰囲気に包まれた。

「有罪」の可能性は低いが

ジョン・ロバーツ連邦最高裁首席判事

弾劾裁判長として就任の宣誓をするジョン・ロバーツ連邦最高裁首席判事(右)(2020年1月16日撮影)。

REUTERS/handout

上院はホワイトハウスに弾劾裁判について通知し、トランプ氏に召喚状を送った。トランプ氏は1月18日夜までに回答を要請されている。審理は、1月21日午後1時から始まる。

今後はどうなるのか。

上院は共和党が多数派を占めているため、トランプ氏を有罪とするための「スーパー多数」、つまり3分の2を獲得するには、共和党議員で「有罪」に賛成する20人の造反が必要となる。これは、非常に困難という見通しだ。

共和党は、民主党が多数である下院の弾劾条項を特定する手続きでも「弾劾は嘘」「捜査が短く無効」とする主張を繰り返し、民主党と真っ向から対立してきた。トランプ大統領とホワイトハウスも、下院民主党が召喚を要請した証人の証言を阻止し、証拠文書も提出を一切拒否した。

しかし、上院では有罪成立が困難としても、異なる動きがある。

上院院内総務(共和党)のミッチ・マコネル氏(ケンタッキー州)はすでに、弾劾手続きで「ホワイトハウスと協調する」とし、民主党が要請する証人は呼ばず、最も短い弾劾裁判を実施するという姿勢を示している。

これに対し、共和党のスーザン・コリンズ議員(メイン州)ら数人の議員は、証人の召喚と、新たな証拠の審理での採用を主張し、同議員によれば、マコネル院内総務の了解も得られそうだという。

1月21日から始まる裁判は、連日午後1〜5時まで開かれ、上院議員は携帯電話の持ち込みも禁止されている。審理はテレビ中継される予定だが、議員が希望すればメディアを締め出しての審理も可能だという。

新証言なども公開

米国会議事堂

弾劾裁判の過程で、新証拠が認められれば、トランプ氏の残りの任期や今年11月の大統領選での再選に打撃となる。しかし、民主党にとって逆もしかりだ。

Shutterstock/Black Russian Studio

弾劾裁判を前に新たな証人候補も表れた。トランプ氏の代理人であるルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長の友人とされる実業家レブ・パーナス被告だ。

選挙資金法違反の罪に問われているパーナス被告の弁護士は、下院情報特別委員会に新たな証拠を提出し、同委員会が弾劾裁判が始まる直前にその一部を公開した。

トランプ氏の弾劾は、同氏がウクライナに対し、2020年大統領選挙の有力ライバルとなりそうな民主党のジョー・バイデン前副大統領とその息子の不正疑惑を捜査するように圧力をかけたことがきっかけだ。パーナス被告は、その圧力を示すトランプ氏やジュリアーニ氏の名が記載された手紙などを公開。15日夜には、テレビ出演し、「大統領とジュリアーニ氏が指示しなければ自分は何もしなかった」「トランプホテルは、計画の拠点だった」などと、マフィアの子分さながらの発言をした。

パーナス被告が、トランプ氏が2019年解任したヨバノビッチ駐ウクライナ大使を監視していたという発言を受けて、ウクライナ政府が盗聴疑惑の捜査を開始するなどの国際的影響も広がっている。

共和党が多数の上院で、トランプ大統領を有罪だとする投票で賛成多数を得るのはほとんど不可能とされる。

しかし弾劾裁判の過程で、パーナス被告の証拠などが認められれば、トランプ氏の残りの任期や今年11月の大統領選での再選に打撃がある。

一方で、強力な証拠がありながら有罪に持ち込めない場合、対立する民主党にも大きな打撃があるのは間違いない。

(文・津山恵子)

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE
  • LinkedIn
  • クリップボードにコピー
  • ×
  • …

ソーシャルメディアでも最新のビジネス情報をいち早く配信中

あわせて読みたい

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み