大学生に広がる「アナログレコード」ブーム。あいみょん、星野源、キズナアイも便乗

レコード丹治

進む音楽のサブスク化。そんな中、若者の間でアナログレコードの需要が伸びているという。

撮影:丹治倫太郎

2019年、サザンオールスターズ、嵐、L'Arc〜en〜Cielなど、邦人アーティストの楽曲が次々にストリーミングサービスに追加された。長くCDの売り上げが大半を占めていた日本の音楽シーンも徐々に変わりつつある。

進む音楽のサブスク化。そんな中、CDよりも以前に「音楽の聴き方」として存在していたアナログレコードが今、10代から20代の若者の間でトレンドになっている。

星野源、あいみょん……進む“レコード回帰”

レコード探し

アナログレコードの見た目の可愛さからファッション、インテリアとして消費されることも。

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アーティストの“アナログ回帰”がトレンドになっている。

HMV&BOOKS onlineの週間売れ筋ランキング(レコード) では、RADWIMPSが主題歌を務めた映画『天気の子』のサウンドトラックやChara + YUKIによるアナログレコードが上位にランクインしていることがわかる(1月19日時点)。

あいみょんの人気シングル『愛を伝えたいだとか Remix EP』は完全受注生産限定でアナログレコードでも販売したほか、2019年には星野源の『POP VIRUS』、キズナアイのデビュー曲『Hello, Morning』までも“アナログ化”。

ももいろクローバーZは、2013年からレコード媒体でも楽曲を発表するなど、徐々にブームが大きくなってきていることが伺える。

早稲田大学に通うSさん(20、女性)は、中学3年生の冬、偶然入った店でレコードを見かけた。

「ジャケットが大きくて、見た目がかわいい」

そのオシャレさを新鮮に感じ、そこから徐々にレコード屋に足を運ぶように。15歳の時に初めてレコードプレーヤーを買い、大学生である現在は、月に1万円ほどレコードにお金を使っている。

正直、音の違いはわかりません。でも見た目が可愛いし、アーティストによって出したりするカラー盤(色のついたレコード)が魅力的。コレクションとして集めたくなるんです」

通学中などはストリーミングサービスであるSpotifyを使うが、家ではアナログレコードで音楽を聴く。針を落とす動作や瞬間が楽しく、五感をフルに使って音楽を聴いている感じがする、とSさんは笑顔で話す。

「プレーヤー5000円」安さが魅力

レコードプレーヤーが比較的安価で手に入りやすいこともブームの理由の一つだ。

都内在住の会社員のMさん(24、女性)は2017年、好きなアーティストであるback numberがベストアルバムをアナログレコード版でも販売したことがきっかけでレコードに出合った。

Amazonでレコードプレーヤーを調べていたところ、5000円ほどで入手できることを知って驚いたという。それからレコードに少しずつ興味を持ち、映画『ボヘミアン・ラプソディ』で興味を持ったクイーンのレコードなども買うようになった。

大学のサークルで音楽活動を行うTさん(男性)は「SpotifyやApple music等の月額制ストリーミングサービスとアナログレコードの併用が非常に多い」と話す。

都内の大学生・Rさん(21、男性)は「プレーヤーは持っていないがレコードは持っている」スタイルだ。インテリアとして、300円で購入したレコードを3枚ほど家に飾る。

中古レコード店の客層の「半数が10代から20代」

ココナッツディスク

来店客の約4~5割は「10~20代」の若者だという。

提供:ココナッツディスク池袋店

若者の間でじわじわと進むアナログレコードの需要増加を、店舗側はどう見ているのか?1985年に開店、2020年で35周年を迎える都内有数の中古レコードショップ「ココナッツディスク」の池袋店店長・中川晃宏さんはこう話す。

「2013年頃から若いお客様がじわじわと増え始めました。(池袋駅西口に店を構える)当店が立教大学に近いこともあり、現在の約4〜5割は10代から20代とみられるお客様ですね

こうした需要に対し、ココナッツディスク池袋店は、店内で取り扱うアナログレコードの割合を1.5倍に増やしたという。10年ほど前はCDとアナログレコードの取り扱いは半々であったことを考えると「アナログ回帰」が顕著だ。

中川さんによると、Instagramで店を知り、SNSに載っていたレコードを求める客も増えているという。「これってどうやって聴くんですか?」と聞かれることや「初心者オススメのレコードプレーヤーを教えてください」と聞かれることも増えた。

ももいろクローバー

人気アイドルユニット・ももいろクローバーZもアナログレコードで曲をリリース。

HMV&BOOKS-onlineー

日本レコード協会によると、2009年には約10万枚にまで落ち込んでいたアナログレコードの生産数は、そこから徐々にV字回復を見せ、2017年には約106万枚を記録。16年ぶりとなる100万枚超えを果たし、2018年はさらにその数字を伸ばした。

アメリカでもアナログ回帰の流れは顕著だ。全米レコード協会(RIAA)2019年9月、アナログレコードの売り上げが1986年以来初めて、CDを上回る可能性があると発表している。

音楽のサブスク化が進んだ昨今、曲単位で好きな曲、好きな箇所だけを聴ける便利さとは裏腹に、アーティストが作ったアルバムを頭から最後まで聴いた時の満足感 —— それが「逆に新しい」存在となっているアナログレコード。

若者による需要増加はこれからも続きそうだ。

(文・丹治倫太郎)

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