中国の巨人アリババ、マーケティングトップが語る「東京オリパラと日本市場」

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東京オリンピック・パラリンピックに向けた「アリババクラウドギャラリー」の発表会に登壇した、クリス・タンCMO(左から1人目)。

撮影:大塚淳史

「これをきっかけに、アリババクラウドサービスを知ってもらいたい。補足すると、クラウドは企業のデジタル化を支援することができるし、(今回のような)個人の創作を支援することができる。東京2020の運営の成功を支援やデジタル化が成功すれば、より多くの企業がアリババクラウドを信用することになり、私たちと一緒に取り組みたいと思うようになると思います」

来日したアリババグループのマーケティングのトップであるクリス・タン(董本洪)CMOは、Business Insider Japanの取材に対し、こう答えた。

アリババグループは先週、東京都内で、ワールドワイドスポンサーになっている東京オリンピック・パラリンピックの関連イベントの記者会見を開いた。アリババ本体の部門別とはいえ、事業トップが来日して取材対応するのは非常に珍しい。

記者会見では、成田国際空港の第1、第2ターミナルの到着エリアの通路9カ所に「アリババクラウドギャラリー」を展開することを発表。アリババのクラウドサービスを活用して、日本のアーティストの作品を、通路の壁面に映して紹介する取り組み。2020年3月から2021年3月末まで実施する。

アリババクラウドギャラリーで訪日観光客に向け訴求

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会見で紹介されたアリババクラウドギャラリーを利用した作品。日本の芸術家に利用してもらうという。

撮影:大塚淳史

クリス・タンCMOは、東京オリンピック・パラリンピックのスポンサーシップを通じて、アリババのサービスの日本での認知向上や、訪日観光客へのアピールを期待しているという。

アリババグループでは、アリババクラウドを使った訪日客向け展示以外にも、ECサービス「天猫(Tmall)」や旅行プラットフォーム「フリーギー(飛猪)」を通じた、次のような取り組みも実施する。

「天猫を通じて、5億人に訴求することができます。消費者とのインタラクティブコミュニケーションだったり、私たちが支援するローカルスポンサーや、グローバルスポンサーだったりと、ブランドや企業の取り組みを支援し、中国の消費者とコミュニケーションを取れるように支援していきたい。さらに、(アリババ傘下で東南アジアのECサービス)LAZADAや(ヨーロッパ向けのECサービス)AliExpressを活用して、中国の消費者だけでなく世界の消費者にアピールできる」

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天猫にあるオリンピック公式チャンネル。

天猫(Tmall)より

オリンピック向けにクルーズ船も予定

日本の経済にも貢献できる、とタンCMOは言う。

「フリーギーでは、東京オリンピックをテーマにしたツアーを出す予定です。まだ仮ですが、フリーギー東京号というクルーズ船も考えています。オリンピックだけではありませんが、関連した企画を通じて、何百万人の規模をインバウンドで連れてこられると思います」

一方で、日本人の立場からすると、ここまでの話はいずれも、「訪日客(インバウンド向け)」ビジネスの側面が強い。

実際、アリババクラウドは日本企業向けビジネスではあるものの、天猫やアリペイは日本の一般消費者に向けサービスは、まだ始まっていない。

日本の一般消費者向けサービスが進展していないという指摘に対しては、タンCMOも率直に認めた上で、アリババのサービスを使ってもらえるよう、まず日本の企業へと訴求していきたいと語る。

「(アリババグループの事業においては)まずはB2B向けを始めている段階で、B2C、日本の消費者に対して、まだお伝えすることはないです。主に日本の企業との協力を強化していきたいと思います。オリンピックという機会を通じて、日本のクライアント、特に日本のスポンサーと協力を深めて、ECのプラットフォームを通じ、中国だけでなく、他の海外のマーケットにも展開できたらと。また、(フリーギーなどで)観光客を日本に連れてきて、直接日本のブランドと接点を持って行けるような構想も準備しています」

中国ではEC通じたスポーツ関連の購買が増加

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「運動が好き。特にバスケットボールとテニス」というクリス・タンCMOは、2019年末のクリスマスには、岩手の安比高原でスキーを楽しんだ。

撮影:大塚淳史

日本企業の経済的メリットは、今も旺盛な成長率にあるというように説明する。

「東京五輪の消費自体は(大会期間が)コンパクトなので少ないですが、現在、天猫では4億人以上の消費者がスポーツやジムに関する製品や消費員を購買しています。カテゴリーの成長率は40%以上で、売上高は2018年と2019年を比べて1.5倍です。 チャンスと見据えているのが2022年の北京大会(冬季五輪)。中国のマーケットは、まだ冬のスポーツがそんなに普及していない。(日本企業のビジネスも)これによって一気に伸びていくはず」

タンCMOの話として一貫しているのは、アリババにおける日本の顧客は「一般消費者」ではなく「企業」だということだ。 東京五輪を契機により多くの企業にプラットフォームに参加してもらい、中華圏を中心とした消費者と、日本企業とのビジネスの間にアリババグループが介在するーーそうした既存のビジネスモデルを、さらに広げることが狙いだ。

今の時点で東京五輪の先を語るのは気が早いようにも思えるが、アリババグループは、大金を払って10年以上にわたるワールドワイドスポンサーになっている。

東京五輪にばかりこだわらず、「とにかく開催国での認知を高めて、プラットフォームへの企業参加を促す」というシンプルな考えが、彼らの一貫した世界戦略ということなのだろう。

東京オリンピック・パラリンピックまであと約6カ月。 日常のなかで「アリババ」の名前を見かける機会は増えていくのだろうか。

(文、写真・大塚淳史)

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