共働き世帯で家事を分担しようという意識は近年、社会的に広がっていると思う人が多い一方で、7割以上の夫婦が疲れや家事分担でのトラブルを経験しており、2年前より経済的にも子育て・夫婦間でも「余裕がない」——。
パナソニックが実施した、30〜40代夫婦のライフスタイル調査(※)で、こんな「現代の共働き夫婦像」が明らかになった。調査では、夫の8割近くが仕事で、妻の6割超が仕事と家事で疲れており「夫婦の共疲れ現象」が起きていると指摘している。調査から見えてきた、共働き夫婦の家事分担、7つのリアル事情を見てみよう。
1.家事分担の意識は広がっている。
出典:パナソニック
「以前より、夫婦や恋人・パートナーで家事分担すべきという意識が広がってきていると思う」。そう答えた人は、共働き世帯のうち7割だった。
家事を夫婦や家族で分担するのは当たり前だと考える人も、「そう思う」と「ややそう思う」を合わせると76%に。夫婦での分担意識はかなり浸透していると言えそう。
2.夫の「家事をしている」自己評価は高い
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ただし実際の分担率は、夫婦間の認識に大きな開きが。
【平日・休日トータルの家事】
- 夫から見ると……夫:妻=45%:54%
- 妻から見ると……夫:妻=20%:79% (小数点以下切り捨て)
夫の方が「半々くらいはやっているつもり」なのに対し、妻は「8割以上は自分がやっている」と思っている結果となった。
3.経済的にも趣味やレジャーも「ゆとり減っている」
出典:パナソニック
注目なのが、調査によると2年前の2017年調査と比較して、経済的にも子育てやパートナーとの時間でも「余裕・ゆとり」が減退していると考える人が増えていることだ。
経済的な余裕・ゆとりは7.5ポイント減、趣味やレジャーを楽しむ時間的余裕・ゆとりは7.6ポイント減、家事をていねいにきっちりする余裕・ゆとりは6.8ポイント減少している。ただし、ていねいにきっちりするゆとりがある人がそれでも15%いることは驚きだ。
子どもと遊ぶ余裕・ゆとりは比較的減少幅が小さかったが、それでも3.2ポイント減っている。
4.夫の疲れが増している!
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さらに今回調査で目立ったのが、共働き夫の疲労度(疲れていると回答した人の割合)が2017年調査に比べて、増していること。夫の回答をみると、家事、仕事、いずれでも疲労度がアップしていた。
一方で妻は2年前と比べて、家事でも仕事でも疲れている人の割合は下がった。
しかし、その増減を踏まえても、家事の疲労度は夫が30%、妻が60%。夫の仕事での疲労度は77%と高いが、妻は仕事での疲労度が66%の上に、家事分担の比重がより重いことが表れている。
5.家事分担めぐるケンカ増えている
出典:パナソニック
共働き世帯で、家事分担によるケンカ、トラブルも増えているようだ。2年前はケンカありが66%だったのが73%に増加。「仲がいい」も6ポイント増加の76%であるにも関わらず、ケンカやトラブルは増えているという結果となった。
家事分担によって関わりが増えた分だけきずなも強まったが、衝突も生まれているということか。
6.正解のない「無限家事地獄」
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共働き夫婦のうち、過半数で心のゆとりが欲しいとの結果になった。
- 自分の好きなことをする時間を増やしたい 66%
- 子供と過ごす時間をもっと増やしたい 56%
- 家族みんなと過ごす時間をもっと増やしたい 58%
ではなぜ、家事分担や時短が進んだりしても、余裕やゆとりは生まれないのか。家事をもっとラクしたいのに、そうできない理由について、調査ではこんな声が聞かれた。
- 「家事には正解がないから、正解がわからないから」妻47%、夫40%
- 「家事には天井がなくて、いくらでもできてしまう、際限がないから」妻58%、夫30%
調査では「正解がない、再現ない、永遠に終わらない無限家事地獄に陥ってしまっている」と推察する。
7.減らしたい家事ナンバーワンは
出典:パナソニック
調査では、減らしたい家事についても聞いている。「減らしたい」「時間を削減したい」家事として多く声が上がったのは以下のとおり。
- リビングの掃除 44%
- 浴室の掃除 44%
- トイレの掃除 43%
- キッチンの掃除 38%
パナソニックでは、育児や介護を除く、共働き世帯を想定した「家事リスト」をおよそ167項目とカウント。そのうち約41% にあたる70項目を「家電に任せられる可能性がある、しない家事」になる可能性があるとして、公開している。
エアコン掃除や、食器拭き、トイレ掃除に洗濯物干しなど、家電メーカーならではの提案がずらりと並んでいるので、チェックしてみたい。
分担議論より「何をやらないか」を決めてみる?
共働きでどんなに分担しても、家事はやろうと思えば「際限がない」のは記者も実感するところ。最低限の料理や掃除を済ませたとしても、お風呂のカビとりやクローゼットの整理、いらないものの断捨離などに手をつけだしたら日が暮れる。
「どちらの分担が多い少ない」で夫婦がもめるより、「何を手放すか」「何をやらないか」を決めてみる。家電なのか家事代行なのか、あきらめるのか。やらないための代替法を探るのは一つの解決方法かもしれない。
「家事分担」だけでなく「しない家事」を考えてみようか。
(文・滝川麻衣子)
※パナソニックによる2019年30〜40代夫婦のライフスタイル調査。関東関西在住の30〜49歳既婚男女1200人をインターネットで調査。調査期間は2019年7〜8月及び2020年1月。記事では小数点以下を切り捨て。