政府内から小泉氏は「育休1カ月に」との声も、“半育休”って会社員も取れるの?

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育休宣言した小泉進次郎環境相。

撮影:横山耕太郎

小泉進次郎環境相の育休宣言を受け、武田良太行政改革相は1月21日の会見で、「環境省のリーダーとして部下に勧める立場。率先して実行に移してもらいたい」と、小泉環境相に1カ月の育休を提案した。2020年度から男性国家公務員の「育休1カ月以上」を目指すことから、期待を示した模様だ。

小泉氏は自身のブログで「丸一日休みの日もあれば、時短勤務、またテレワークの日もある」と説明。育休期間は「3カ月の間に計2週間」とのことで、決して長くはないものの、一方でゆるく働きつつ育休を取得する「半育休」に注目が集まっている。

企業に勤める会社員でも1カ月の育休となれば、仕事の引継ぎが心配になる人もいるだろう。「半育休」なら男性の取得もハードルが下がりそう。大臣は育休制度の対象外で事情は違うが、会社員でも同じように「半育休」を取得することはできるのか?

月80時間以下、一時的な就労なら可能

そもそも法律ではどうなのか。

育児・介護休業法によると、育休中の就労については「労使の話し合いにより、子の養育をする必要がない期間に、一時的・臨時的にその事業主の下で就労することはできる」とされている。

育休中に認められるのは、「月80時間以下」で、あくまで一時的な仕事に限定されている。「一時的な就労」は大災害の発生時や、突発時に発生した事態とされており、「半育休」には多くの条件があるのが実情だ

厚生労働省はこんな説明。

「法律では育休中に働くことを想定していません。育休中に会社から仕事を頼まれ、仕事をしなくてはいけない事態にならないよう、育休の権利が守られているからです。

ただその中で、柔軟な働き方に対応していく必要もあり、2014年には育休中に働ける日数ではなく、月80時間以下の就労が認められるように運用が変わりました」

「スムーズに育休に入れる」

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GettyImages

半育休は、上手に使うことができれば(男性の育休取得を進める)可能性がある。育休の前に産休がある女性と違い、男性の場合、育休前に仕事の残務処理をこなさないといけないハードルがあります。半育休を使って引き継ぎ作業ができれば、スムーズに育休に入れる。

また男性の育休は、少子化対策としても重要です。第1子の出産時に男性が育児に関わる時間が長いほど、第2子を持つ夫婦が多いことは、データでも分かっています」

2014年から「産業競争力会議」に民間議員として参加するなど、働き方改革や少子化問題に取り組んできたワーク・ライフバランス社長の小室淑恵氏は「半育休」の可能性についてそう話す。

また、父親の育児参加を推進するNPO法人ファザーリング・ジャパン代表理事の安藤哲也氏も、「半育休」であれ、現役大臣の育休取得の意義を次のように語る。

がっつり3カ月休むのは難しい父親も多い。小泉大臣が柔軟に育休をとることは、過渡期にある男性育休について、ひとつのモデルを示すことになる。育休が何日必要かは、それぞれの家庭や立場によって変わる。立場のある人が育休を取ることが、時代を変えると思う」

「2週間でどれだけ役立つの」

半育休が追い風になるとの指摘の一方、子育て世代からは懐疑的な声もある。

「正直、小泉さんが2週間の育休を取ると聞いて、ちょっと短いと感じた。僕は、2カ月ぐらい取りたいと思っている。親が遠くに住んでいることもあって、それくらい取らないと妻一人だと大変だなと。小泉さんのように、連続して取らない育休もあることを初めて知ったが、妻のサポートを考えるとそれだけで十分なのかと疑問に思う」

今年育休を取得しようと考えているコンサル会社勤務の30代男性は話す。

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撮影:今村拓馬

「現職の大臣が初めて取得を表明したのはすごいとは思う。ただ、実際に飛び飛びで2週間の休みだと、子どもを一緒にみるリズムができる前に仕事に戻ってしまいそうで、アテにできなさそう……」

小学2年生を筆頭に、4歳、2歳を育てる30代の会社員女性は、「半育休が一般家庭だったらどれだけ役立つのか疑問」と話す。

少子化深刻、出生数90万人割れ

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撮影:今村拓馬

ただ、たとえ短い「半育休」でも、小泉環境相の取得が起爆剤となって男性の子育て参加が増えていくことは、大きな意味を持つに違いない。

2019年の出生数は90万人を割る可能性が高いことが明らかになり(人口動態統計の年間推定)、少子化は猛烈な勢いで加速している。これまで少子化を食い止めるためには、1970年代前半の第2次ベビーブームで誕生した団塊ジュニア世代への支援が重要とされてきた。

女性の出産率を年代別に見ると、30歳前後をピークに減少する。少子化を食い止めるために、人口の多い団塊ジュニア世代が出産しやすい社会を作ることが求められていたが、団塊ジュニア世代はいまや最も若い人でも45歳を超え、出産に適した年齢を超えつつある。

育休の普及へ「打診を義務化すべき」

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小室氏は「少子化対策としても男性育休の『義務化』は必要だ」と指摘する。

提供:ワーク・ライフバランス

出生数が90万人を割ったことは本当にショックで、忸怩たる思いがある。出産できる年齢の女性が、年々すごい勢いで減ってしまう。とにかく1分1秒でも早い方が、少子化対策の効果が大きいことに注目した方が良い」

前出のワーク・ライフバランス社長、小室氏はそう明かす。

小室氏は今後の課題として、男性が育休を取りやすい社会にするために、法整備の必要性を強調する。

「社員に育休取得を打診することを、企業側に義務化するだけでなく、企業がその義務を果たしているかどうかを見える形にすることが必要です」

たとえ「半育休」でも、男性の取得を広げる可能性があるという小室さん。社会の意識が変わることに加えて提唱するのが、有価証券報告書などでの公開の義務付けだ。

「育休が取れているのか、企業ごとに比較できれば、育休を取得できる企業に良い学生が集まるようになる。今の大学生は、出産後に女性が職場復帰できるかどうか、男女ともに考えており、シビアな目で企業選びをしている世代です。

2020年はオリンピックの年。子どもとオリンピックを見たい父親も多いはず。今年は男性育休取得に向けて、アクセルを踏む1年だと思っています」

小泉氏の育休宣言だけでなく、男性国家公務員の育休を「原則1カ月以上」とする方針が示されるなど、男性育休普及の兆しがついに見えてきた。日本が男性育休を取れる国になるかどうか。国も民間企業も、本気度が試されている。

(文・横山耕太郎)

※編集部より:武田行政改革相の発言を加筆しました。2020年1月22日13 :00

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