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「新型肺炎の感染拡大は初期段階」「春節に患者増える」:中国政府専門家委の一問一答

北京西駅

中国では24日の春節休暇を前に、既に人々の移動が始まっている。1月20日、北京西駅。

REUTERS/Stringer

中国政府は1月21日、新型コロナウイルスによる肺炎を、伝染病予防法に基づく重症急性呼吸器症候群(SARS 、サーズ)や鳥インフルエンザ(H7N9)と同類の「乙類伝染病」に指定した。広東省では10歳の子供の感染が確認され、21日も北京などで新たな患者が判明した。

民族大移動が起きる春節を迎え、習近平国家主席も徹底して封じ込めるとの声明を出した。1月20日午後には、日本の厚生労働省に相当する国家衛生健康委員会の専門家チームが中国国営テレビなど自国メディア向けに会見し、現在の状況や今後の感染拡大の見通し、予防策について答えた。専門家チームトップの鐘南山氏らの一問一答は以下。(注:主要部分を抜粋、人物名は全て国家衛生健委の専門家)

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政府の判断待たず「外出自粛も考えて」

質問1:武漢市では2日で139人もの新規患者が確認され、北京や広東省でも患者が出た。今の情勢をどう見ているか。

鐘南山氏:感染者の地理的分布は武漢の海鮮市場と密接に関係しており、問題発生後、武漢で野生動物を扱う市場を閉鎖した。その後も感染者が続々と出てきて、同時に全国の4、5省・市、海外でも患者が見つかった。今のところ全て武漢と関係しており、医療関係者の感染も確認された。人から人への感染を示す根拠だと考えている。

このような状況から、私達は人から人への感染が起きているとの結論に達した。

広東省では武漢に出入りしていない2人の感染が確認された。武漢に行って発症した家族から感染したと考えられる。

だが、まだ中国で爆発的に感染しているわけではないことは、強調しておきたい。

流行の程度で言えば、今は初期段階だ。我々専門家6人は昨日武漢に行った。状況は日々刻々と変わっている。特に昨日は「人から人への感染」「医療関係者の感染」が確認され、非常に重要な節目だと受け止めている。

感染者が増えている背景には多くの原因があるが、検査体制が整い、早期確定がしやすくなったことも一因だ。また、従来は政府が感染確定を慎重に判断した上で発表していたが、今は現状に即して検査で陽性が出たら、すぐに確定と判断している。それも患者が増えている原因となっている。

医療関係者の感染は重視しているが、(2003年に流行した)SARSと比較すると症状は軽く、肺の状況も違う。

武漢の病院

武漢で新型肺炎の患者の対応に追われる医療関係者15人も感染が確認された。1月10日撮影。

REUTERS/Stringer

曹光氏:この病気が発見されて1カ月、我々は多くの研究・作業をしている。日々状況は変わっている。伝染病の初期段階はそういうものであり、状況や認識が変わっても驚くことではない。伝染病なのだから人から人への感染も想定内だ。

武漢市については、華南海鮮市場から一般住宅街にも感染範囲が広がっている。ただし100人の患者といっても武漢の人口が1000万人であることを考えると、大した数字ではない。ただし、警戒は強めている。

武漢での感染者は高齢者が多い。とは言え感染は現在初期段階にあり、予防対策を強化する必要性がある。春節は人々の大移動が起きるが、武漢には入らないでほしいし、武漢の人もできれば出ないでほしい。政府は外出自粛を呼びかけていないが、我々専門家は提案したい。

高福氏:我々は野生動物が取引されている場所で新型コロナウイルスを検測したが、感染源はまだ分かっていない。具体的にどの動物が感染源なのかも分からない。

なぜ我々が華南海鮮市場からウイルスが拡散したと推測しているかというと、最初の患者がみな市場関係者だったからだ。初期において動物から人にうつったことははっきりしている。その時は人から人への感染は考えにくかった。武漢の衛生当局は毎日病室で治療に当たるとともにウイルスを研究している。我々は科学的に対処できるので、不安に思わないでほしい。

ウイルスは「人から人」へと変異

武漢の市場

新型コロナウイルスの感染源と推定されている武漢の海鮮市場。

REUTERS/Stringer

質問2:ウイルスは変異が見られますか。

袁国勇氏:このウイルスの変異は速い。変異しているかどうかと聞かれれば、「動物から人」という段階から「人から人」へと変異している。SARSと同じではないかという声も多いが、SARSとは違う。これは新型コロナウイルスだ。どのウイルスも遺伝子に多くの違いがあり、病状や流行のしかたも全く違う。

武漢だけでなく海外でも患者が出ており、人の移動に伴いリスクは高まる。しかし我々は17年間の蓄積で、ウイルスの封じ込め能力はかなり高めてきた。恐れてはいない。ただ、軽視もしていない。

質問3:どう予防すればいいでしょうか。発病しても治りますか。

袁国勇氏:マスクはとても重要だ。目、鼻、口を清潔に保ってほしい。武漢に行った人は戻ったときに医者に連絡してほしい。SARSの時も効く薬があった。だから治療可能だと考えている。実際、発症した人の多くは回復に向かっている。

李蘭娟:治療にあたる医療関係者は、前線で治療に当たっている。メディアは彼らのことも報道してほしい。

スーパー・スプレッダーの出現を警戒

上海の空港

新型肺炎の拡大でマスクをつけた旅行者が増えた。1月20日、上海虹橋国際空港

REUTERS/Aly Song

質問4:流行を食い止める上で難しい点はありますか。春節も近いですし、何かアドバイスがあれば。

鐘南山氏:今は武漢から他の地域に広がるのを食い止めることが最も大事だ。だから繰り返しになるが、武漢に行かないでほしい。今、武漢では列車の駅や空港などの検査を厳しくしている。武漢在住者については、体調が悪いなら武漢から外に出ないでほしい。

マスクも大事だ。珠海(広東省)の事例では、感染した夫婦は武漢に行っていた。当初は症状がはっきりせず、珠海に戻って発症した。そしてマスクをしなかったから、夫婦の子どもに感染してしまった。

その他に有効なのは早期発見、早期治療、隔離だ。

17年前のSARSのときは特効薬がなく苦労した。しかし今はその点は研究がかなり進んでいる。

春節とその前後の40日で、我々は患者がさらに増えると予想している。しかしできるだけ食い止めたい。心配しているのは、感染が広がる過程で、感染力の極めて強い患者(スーパー・スプレッダー)が出現することだ。実情として、それを防ぐ手立てはない。だから予防、隔離、観察を徹底する。

春節期間に患者が増えたとしても、だんだん落ち着いてくれればそれが理想だ。

我々はもう2週間、新型コロナウイルスの解明に当たっている。17年前のSARSのようには、社会や経済に損失を与えることはないはずだ。

羽田空港

患者が確認された日本でも、警戒が高まっている。1月20日、羽田空港

REUTERS/Kim Kyung-Hoon

質問5:これから春節ですが、国民に何かアドバイスは。

鐘南山氏:体調がすぐれなければ外出を控えてほしい。特に熱がある人、武漢にいる人。熱があっても実家に帰ろうとする人が出てくれば、当局は強制的に外出を禁止することもありうる。

あとは手を洗い、しっかり睡眠をとってほしい。

春節は多くの人が長時間列車にすし詰めとなる。もう既に多くの病人が出ており、しかも多くの人が休みに入り移動を始めている。だから今、特別に効果のある対策は見えない。

曹光氏:とにかく体調の優れないまま仕事や旅行に行かないでほしい。肉はしっかり調理して火を通して食べてほしい。

WHO、海外各所と連携している

質問6:韓国やタイでも患者が出ていますが、国際的な連携体制はどうなっていますか。

曹光氏:情報交換をしている。我々は世界保健機関(WHO)に全ての状況を報告している。今後も海外各所と連絡を取り合い、サポートと理解を得ていく。

質問7:感染者は発熱以外にどんな症状がありますか。新型コロナウイルスに感染しているかもと自分で判断する方法はありますか。

李蘭娟氏:武漢在住者に関しては、病気の人は新型コロナウイルスに感染していないか、検査する体制を強化している。その他の地域で、武漢と関連がない場合は、感染の可能性は低いと考えている。それでも熱が出たら、疑いがゼロではないので病院に行ってほしい。

質問8:現在、各都市に対し、統一的な提案はありますか。

李蘭娟氏:共産党、国務院もこの問題を極めて重く見ており既に多くの指示を出している。税関や交通機関もそれぞれの責任で対応している。

(文・浦上早苗)

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