中国・清華大学の「世界的AI研究者2000人」リストに載った8人の日本人

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清華大学の学術論文検索サービス「AMiner」は、世界に影響を持つAI研究者2000人「AI2000」を公表した。

AMinerのホームページより

中国の清華大学が開発した学術論文検索サービス「AMiner」は、世界で影響のあるAI研究者2000人のリスト「AI2000」を公開した。AMinerは今回、AMinerが収集した学術論文に関する検索、引用などのデータをもとに、独自の自動検索アルゴリズムで分野別(20分野)、国別、所属別などに研究者をリストアップしている。

選ばれた2000人の研究者は、自動検索アルゴリズムで自動抽出されたものとみられる。研究分野の正確性や現時点の肩書きなどの精度の課題はあるものの、リストの結果自体は実に興味深い。

リストにあるAI研究者が所属する最多の国はアメリカ。国別のリストの合計約1800人のうち、最多の研究者1100人が、アメリカ所属だ。中国は170人あまり。そして、日本で活動する研究者として「日本」のカテゴリーでノミネートされているのはわずか5人だ。

ただし、実は約2000人のリストを詳細にチェックしていくと、日本にゆかりがあると思われる名前の研究者は少なくとも10人いる(世界各地の所属として散らばっている)。とはいえ、「日本のプレゼンスが低い」という大勢に変化はない。

気になるのは、日本人研究者たちがどこに所属しているのか、ということだ。今回、リストアップされた中から、編集部が現役の研究者であると公開情報や問い合わせで確認できた人を以下で紹介する。

音声認識、情報検索と推論の分野に集中


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AI2000のリストをもとに編集部が独自に作成

日本人研究者の名前が多かった「音声認識」分野。AIにおける音声認識は、例えばGoogle HomeやAmazon Echoなどスマートスピーカーや、iOSのSiriなどで極めて身近な存在になり、さまざまな応用への期待が高い分野だ。

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音声分野の研究で活躍する中谷智広氏。

出典:NTTのホームページ

音声分野でリストアップされた中谷智広氏は、NTTコミュニケーション科学基礎研究所で上席特別研究員として活動している。情報通信分野で功績のある人物に贈られる前島密賞(2017年)など過去に何度も表彰されている。

今回、AI2000のリストに掲載された中谷氏は、Business Insider Japanの取材に対して次のようにコメントしている。

「(リストへの掲載は)私自身だけでなく、私と一緒に研究をしてくれていた、特にNTTの研究者との研究成果が、学術領域や国際会議で高く評価されていることで、大変嬉しく思います。

音声分野は、日本が世界的に活躍している分野であり、これからも協力しあって世界をリードしていきたい。また、NTTは音声に関する研究で、古くから世界的に知られており、その流れもあって今も活躍できているのではないでしょうか 」(中谷氏)

亀岡弘和氏も同研究所に所属し、研究している(東京大学大学院客員准教授としても活動)。他に、山岸順一氏(国立情報学研究所コンテンツ科学研究系教授)、小野順貴氏(首都大学東京システムデザイン学部情報科学科教授、2020年4月より東京都立大学に名称変更)がリストに上がった。

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AI2000に載った渡部晋治氏。

ジョン・ホプキンズ大学のホームページより

同じく音声分野でリストアップされている渡部晋治氏は、ジョン・ホプキンズ大学に所属する。渡部氏もNTTコミュニケーション科学基礎研究所の出身で、中谷氏らとともに研究活動を行った。

また、「コンピューターシステム」分野にリストがある井上浩明氏は、NECのデータサイエンス研究所で研究に取り組んでいる。

松尾豊教授とその研究室関係者

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AI2000に載った松尾豊氏。

松尾豊研究室のホームページより

「情報検索と推論」分野でリストに上がった日本人研究者は、松尾豊氏と松尾氏の研究室の関係者。

松尾豊氏は、東京大学大学院の教授で、現代の人工知能開発で急速に注目を集めてきたディープラーニング技術の第一人者として、テレビ出演や書籍の執筆でしられる。

松尾氏の書籍「人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの」(角川EPUB選書)は出版当時、大いに話題になった。東京大学以外には、日本ディープラーニング協会の理事長、ソフトバンクグループの社外取締役も務める。シンガポール国立大学(NUS) で客員准教授(2014年〜2018年)を務めたこともある。

榊剛史氏は松尾研究室の出身。榊氏はホットリンクと東京大学で活動している(松尾豊研究室のホームページより)。

AI2000リストでわかる、グーグルの存在感

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AI2000で紹介している、分野ごとの上位国。

AMinerのホームページより

AI2000がまとめた概要には、所属する会社のリストも紹介されている。上位3社は、グーグルが約170人、マイクロソフトが約90人、Facebookが約50人。企業別でも、グーグルの存在感は強い。

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AI2000では所属別も紹介している。

AMinerのホームページより

中国企業では、「TikTok」で世界的に知られる中国のIT大手ByteDance(バイトダンス)所属の研究者もリストにいる。ただ、アリババ、テンセント、百度(バイドゥ)など中国企業の名前がほとんどなく、何か集計方法の問題で名前が出ていない可能性はある。

最後に、興味深いのは、AI2000で紹介された20分野における研究者の男女比だ。その比率はおおむね9対1だった。

編集部より:初出時、国立情報学研究所の名称表記に誤りがありました。現在は正しいものに改めております。 2020年2月6日 09:00

(文・大塚淳史)

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