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「新型肺炎の感染規模はSARSの10倍」香港の専門家、「武漢はすでに制御不能」と絶望

杭州駅

体温検査を受ける武漢を出て列車で移動する乗客。1月23日、杭州市。

REUTERS

新型コロナウイルスによる肺炎患者が500人以上確認された中国・武漢で1月21日から22日にかけて調査を行った重症急性呼吸器症候群(SARS)専門家で香港大学教授の管軼(グアン・イー)氏は、現地メディアの「財新」の取材に対して、「保守的に見積もっても、今回の感染規模はSARSの10倍以上だろう。武漢は既に制御不能だ」と語った。

管氏は2003年にSARSが爆発的に流行したとき、感染源を市場の野生動物と突き止めて政府に対策を進言、一層の感染拡大を防いだことで知られる。

今回の新型肺炎では1月15日に香港メディアに対し、「あと数日新規患者が出なければ、封じ込めに成功したと判断できる」と述べ、楽観的な姿勢を見せていた。当時、患者は武漢市内だけで確認され、患者数は41人で止まっていた。

感染防止より年越しの買い物を優先する市民に絶句

病院

新型肺炎の患者が入院している武漢市の専門病院は、ベッドが不足しつつあるという。

REUTERS

管氏は患者が一気に増え、感染が他都市にも飛び火した21日に調査のため武漢入り。最初に野菜市場を視察した。

管氏は「市場は年越しの買い物をする多くの人でにぎわっており、私はまずその光景に驚いた。市場の地面は湿っており、風通しも良くなかった。それなのにマスクをしている人は1割もいなかった」と述べた。

その後、市内を見回った管氏は、武漢の新型肺炎が既に制御不能な状態だと判断、22日の航空券を買った。

「SARS、鳥インフルエンザの現場を数多く経験した百戦錬磨の私でも、逃亡兵になるしかなかった」

22日に武漢空港に着いて、管氏は再び絶句した。専門家が「武漢にいる人は武漢にとどまり、外地の人は武漢に入らないでほしい」と警告しているにもかかわらず、空港には団体旅行客がちらほらいて、空港の床が消毒されていなかったからだ。

管氏によると、保安検査場にいた空港スタッフは薄いマスクをつけており、「あなたは多くの人に接するのに、そのマスクでは役に立たない」と声を掛けると、「上司がマスクをつけるとイメージが低下するといって、着用に後ろ向きだ」と答えたという。

管氏は、「政府が新型肺炎の封じ込めに全力をあげると声明を出し、現地は厳戒態勢をとっていると想像していたが、全くそんなことはなく、危機感は感じられなかった。庶民は感染症対策よりも新年の準備を優先していた。何とかわいそうだと思った」と語った。

管氏は、感染源の特定について、「(初期の患者の感染源とみられる)華南海鮮市場は閉鎖、洗浄され、痕跡が消えている。動物をたどるのは難しく、ウイルスを運んできた元凶を探すのは無理だった」と述べた。

潜伏期間へて25、26日に感染者拡大も

マスク

中国ではマスクも品切れ気味となっている。21日、北京市。

REUTERS/Jason Lee

SARSと新型コロナウイルスの違いについて、「SARSは感染すると短期間で重症化する傾向にあり、感染者の60~70%は、スーパー・スプレッダーから感染した。感染経路ははっきりしており、スーパー・スプレッダーと接触した人を隔離すればよかった。武漢の肺炎は潜伏期間が1週間ほどあり、軽症患者も多いため、感染者を発見するのも難しい」と管氏。

「感染拡大のタイミングは既に逸している。武漢市の多くの若者がすでに帰省や旅行で武漢を離れており、多くの潜伏期にある感染者とともにウイルスが全国に移動している。25、26日ごろに発症者がさらに増えるだろう」と述べ、「保守的に見積もっても、今回の感染規模はSARSの10倍以上になる。これまでどんな感染症でも、食い止める方法があると思ってきたが、今回は無理だ。恐ろしい」と悲観的な見通しを示した。

武漢市は23日になって、航空機を含む公共交通機関の運行を停止し、事実上封鎖された。だが、春節を控え多くの人が既に市外に出ており、武漢在住の女性が咳や熱があるのに薬で抑えてフランスに入国、SNSで報告し非難が殺到している。

(文・浦上早苗)

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