新型コロナウイルスだけじゃない!東京五輪では感染症の流入に要注意

中国で感染者が800人を超え、日本でも2人目の感染者(武漢からの観光客)が確認されるなど、猛威を奮っている新型コロナウイルス。感染症の拡大リスクに懸念が高まっている。

実は、2020年夏、東京オリンピック・パラリンピックの開催にともなう「マスギャザリング」によって、新型コロナウイルス以外にも海外からさまざまな感染症が日本に流入し、拡散する可能性が懸念されている。

日本感染症学会と日本環境感染学会は、2020年のマスギャザリングへの対応に向けたプロジェクト「FUSEGU2020」を発足。1月22日、都内で記者会見を開催した。

プロジェクト方針

感染症の拡大を防ぐためには、3つのポイントがある。

撮影:三ツ村崇志

高まる感染症の流入・拡散リスク

マスギャザリングとは、

「一定期間、限定された地域において同一の目的で多人数が集まること」

を指す。

オリンピックやW杯など、国際的な大イベントでは、海外から感染症が持ち込まれるリスクや、1カ所にさまざまな国の人が集まることで気づかないうちに感染症が拡大してしまうリスクがある。

過去には、2016年リオデジャネイロ夏季オリンピックでの「ジカ熱」。2014年ソチ冬季オリンピックでの「麻疹」など、マスギャザリングによって感染症が広がった例が報告されている。

感染事例

過去のオリンピックなどでは、さまざまな感染症の広がりがみられている。

撮影:三ツ村崇志

現在中国で流行している新型コロナウイルスも、今夏まで長引けば、東京五輪にともなうマスギャザリングで感染がさらに拡大する危険性がある。

2003年に流行したSARSでは、飛沫感染(咳やつばなど)による感染の拡大がみられた。飛沫感染は人が密集する冬場に発生しやすいとされているが、オリンピックなどの大規模なイベントで人が1カ所に集まるケースでは、夏でも感染が拡大してしまう可能性が高まる。

2019年、日本では実際に、ラグビーW杯の観戦のために来日していたオーストラリア在住の50代男性が侵襲性髄膜炎菌感染症を発症。マスギャザリングによる拡散が懸念された事例があった。

日本感染症学会理事長の舘田一博氏(東邦大学医学部微生物・感染症学講座教授)は「幸い、その後の流行はみられませんでしたが、侵襲性髄膜炎菌感染症は世界的に流行が起きているので、注視しておかなければいけません」と話す。

今夏に控えている東京オリンピックの参加国は、ラグビーW杯の参加国の10倍。チケットの販売数も、ラグビーW杯の約180万枚をはるかに上回り、その分、海外からの観光客の出入りも激しくなることが見込まれる。

いろいろな感染症が全国で散発的に生じると考えられます。それを注視しなければなりません」(舘田教授)

ワクチンで対応できる感染症、できない感染症

感染症の経路

感染症といっても、その原因はウイルス、細菌、寄生虫などさまざま。それぞれ感染経路も異なるため、個別に対策が必要となる。

撮影:三ツ村崇志

感染症の原因になるのは、ウイルスや細菌、寄生虫などさまざま。

それぞれ、飛沫感染や経口感染、空気感染などで人への感染が広がっていく。

舘田教授は対策について、次のように語る。

感染症をコントロールするには、

・感染症の病原体(細菌やウイルス)を減らす。

・感染経路を遮断する。

・ワクチンなどで宿主の免疫をつける。

という3点が重要となります。

一部の感染症については、すでにワクチンが開発されている。FUSEGU2020では、事前に受けておきたいワクチンとして、とくに風疹・麻疹の2つを挙げた。

とくに風疹について、日本では現在ワクチンの定期接種が行われているものの、1962年4月2日~1979年4月1日に生まれた男性の中には、一度も風疹ワクチンを受けたことがない人も多い

受けておきたいワクチン

とくに風疹・麻疹は日本での感染拡大のリスクが高い。髄膜炎菌に対するワクチンの備蓄数も少ないため、とくにリスクの高い医療従事者などへのワクチン接種を推奨している。

撮影:三ツ村崇志

妊娠初期の妊婦が風疹ウイルスに感染すると、先天性風疹症候群の子どもが生まれてくる可能性が高くなることが知られていることから、国内での感染の広がりを防ぐことが求められている。

中国で流行している新型コロナウイルスにはワクチンはない。一方で、風疹や麻疹のようにワクチンで防ぐことができる感染症も多い。防げるものについては、事前に対策を打っておくに越したことはないはずだ。

とくに風疹ワクチンの接種歴がない可能性の高い年代の男性は、これを機会に一度、病院で抗体検査などを受けておくべきだろう。

マスギャザリングの危機と隣り合わせの時代

「マスギャザリングによる感染症の拡大は、なにも東京オリンピックだけの問題ではありません。2025年には大阪で万国博覧会があります。この取り組みは、今後の感染症の拡大を防ぐ意味でも重要です」(舘田教授)

舘田先生

舘田一博教授。今後、東京都などの自治体とも連携を進めていく予定だと話す。

撮影:三ツ村崇志

また、2019年の訪日外国人は、3000万人を上回っている。今後、海外からの観光客はますます増えていくことが予想されていることからも、現代は、海外から感染症が持ち込まれるリスクがつねに高い時代だと言えるだろう

舘田教授は「感染症への対策は、医療従事者だけではなく、一般の方もいっしょに『ワンチーム』で取り組まなければならない課題です」と話す。

新型コロナウイルスへの不安を身に染みて感じている今だからこそ、そのほかの感染症への対策などにもあらためて目を向けてみてほしい。

(文・三ツ村崇志)

※編集部より:風疹ワクチンの接種に関する表記を一部、加筆しています。2020年1月24日13:30

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