楽天モバイルに“安価な使い放題プラン”が期待されるワケ ── 鍵は「自社ネットワーク」

無料サポータープログラム

楽天モバイルが発表した無料サポータープログラムの利用状況。

撮影:石川温

1月23日、楽天モバイルはMNO事業を2020年4月に本格スタートさせると発表。また、2019年10月から5000名限定で提供していた「無料サポータープログラム」を拡充させ、2万人を追加するとした(追加募集は同日23時45分をもって受付終了)。

無料サポータープログラムは、データ通信が使い放題、音声通話も話し放題という大盤振る舞いな内容だ。2019年12月においては、データ通信は平均15GB以上、また音声通話においても平均30分以上の利用があったという。

ユーザーの申し込み理由については「楽天のネットワーク品質を試したかった」というのが83.9%、「新規参入の楽天を応援したかった」というのが55.0%という、第4のキャリアとして参入する楽天モバイルに興味がある人がいる一方、「データ使い放題だったら」が77.9%、「通話使い放題だったから」が56.4%と単に「安価な回線を使い倒したい」というニーズもあったようだ。

無料サポータープログラム 2次募集

「無料サポータープログラム」の2次募集は、10時間40分で終了した。

出典:楽天モバイル

無料サポータープログラムでは、海外でのデータローミング通信料も無料であったことから、「年末のハワイ旅行で、ホテルのWi-Fiには一切つながず、無料サポータープログラムで家族まるごとのデータ通信をカバーした」とか「1月初めのラスベガス・CES出張は24時間、無料サポータープログラムにつなぎまくり、YouTube動画や原稿や写真を送っていた」という人もいたほどだ。

楽天モバイルは4月からのコンセプトとして「シンプル、デジタル、自由」を掲げており、まさにデータ制限のないストレスフリー(自由)な環境を無料サポータープログラムで提供してくれたと言える。

楽天に求められるのは「安価で」「制限のない使い放題」

無料サポータープログラム 無制限

無料サポータープログラムはデータ無制限で提供されている。

出典:楽天モバイル

ここで気になるのが、4月以降もこんな環境を提供し続けるかどうか、だ。

もちろん、4月以降の本格サービスは無料で提供されるわけではない。当然のことなら、毎月いくらかの料金が発生するのだが、それが「いくらになるのか」が最大の注目ポイントといえる。

無料サポータープログラムで「使い放題、話し放題」を提供しただけに、商用サービスでも「使い放題、話し放題」が望まれることだろう。

すでに、3キャリアはデータ通信においては使い放題に近いサービスが提供されているものの、月間60GBや50GB、テザリングは30GBといった何らかの制限が残っている。

とはいえ、3月から始まる5Gサービスにおいては「制限のない使い放題」が提供される可能性が極めて高い。4月からサービスを始める楽天が、制限のある使い放題を提供するとなると、どうしても3キャリアと比べて見劣りしてしまうだろう。

もちろん、3キャリアが現状「制限のある使い放題」で、7000円から8000円といった高額な料金プランになっているだけに、楽天にはそれよりも安価な設定で「制限のない使い放題」が求められそうだ。

肝は自社エリアをいかに広げられるか

楽天モバイル エリア

楽天モバイルは2019年10月に比べて、2020年1月のエリア拡大をアピール(写真は東京地区)。

撮影:石川温

ただ、気になるのが、楽天モバイルとKDDIの関係だ。

楽天モバイルは、自社が敷設している東京地区(23区、さいたま市、横浜市、川崎市、千葉市などの一部エリア)、大阪地区(神戸、京都含む)、名古屋地区以外はauのネットワークにローミングすることになる。この際、KDDIはローミングの接続条件として、1GB500円をユーザーに請求するとしている。

ちなみに、楽天モバイルが自社でエリア化している東京地区などにおいても、地下街やビル中などにおいては結構な割合でauネットワークにローミングすることが多い。

果たして、ユーザーがauネットワークに接続した場合、1GB500円をユーザーに請求するのか、それとも楽天モバイルが赤字覚悟で負担するのか。ここが楽天モバイルが「使い放題」を提供できるかの重要な鍵となる。

山田善久氏

楽天モバイル社長の山田善久氏。

撮影:石川温

この「1GB500円問題」について聞かれた山田善久社長は「我々、楽天モバイルは基本的には低廉な価格、インパクトのある数字を出さないといけないと思っている」と、安価な料金プランを提供する約束をしたものの、auローミング料金の課題については明言を避けた。

できるだけユーザーにauローミングされないようにするには、当然のことながら、自前のエリアを広げることが急務だ。2020年1月現在、楽天モバイルでは3020カ所の基地局を開設済み。3月には4400局となり、計画の3432局を大きく上回るという。

ちなみに、サービス開始時期は「2020年4月」と明言されただけであって「4月1日」なのか「4月30日」かはわからない。ただ、無料サポータープログラムは3月31日までなので、4月1日スタートというのが順当だろう。

とはいえ、仮に商用サービスが4月1日に始まらない場合は「サポーターが通信サービスを使えなくなる期間が発生してしまうのは避ける。無料サポータープログラムは商用サービス開始まで延長する」(山田善久社長)としており、必ずしも4月1日が商用サービス開始日だとは限らない。

果たして、楽天モバイルは「いくらで」「いつから」商用サービスを提供するのか。山田善久社長は「4月開始だが、直前ではなく前もって発表したい。そんなに残された時間はない」という。

おそらく、3キャリアが5Gサービスをスタートさせる3月中の発表が濃厚と言えそうだ。

(文・石川温)


石川温:スマホジャーナリスト。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。ラジオNIKKEIで毎週木曜22時からの番組「スマホNo.1メディア」に出演。近著に「未来IT図解 これからの5Gビジネス」(MdN)がある。

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