クリアブリッジ・インベストメンツのグローバル・グロース投資戦略部門を率いるエリーザ・メイズン。業界で34年の経験をもち、同社には在籍11年目。
ClearBridge Investments
エリーザ・メイズンはここ10年、米国内外の大型株ファンド(オープンエンド型投資信託)を運用して成果をあげてきた。
メイズンに「次の10年間、強い値動きが期待される」銘柄を4つあげてもらった。
ひとつの投資スタイルを極めるだけでも簡単なことではないのに、ふたつで成功を収めるというのはもう素晴らしいと言うほかない。
そんな類まれな実績を残してきた人がいる。
米ニューヨークに本部を置くクリアブリッジ・インベストメンツで、グローバル成長銘柄投資戦略部門のトップを務めるエリーザ・メイズンがその人だ。
大型株分散投資戦略ファンドで世界トップの運用実績
メイズンがマーケット展望を語る。日本をユニークな市場のひとつに位置づけ、利益率の高い化粧品市場のプレーヤーと、その海外展開の可能性に関心を寄せている。
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同社はレッグ・メイソン傘下、クリアブリッジ・インターナショナル・グロースファンドの株式運用専門会社。
米金融情報サイトのキプリンガーが公表する、グローバル大型株分散投資戦略ファンド(運用期間10年)のリターンランキングでトップを獲得。年10.66%という高い投資収益率を実現し、米投資情報大手モーニングスターから五つ星に格付けされている。
当初は米国株のみを扱っていたが、2015年末からはグローバル株に移行し、直近のリターン(運用期間3年)は年17.26%と絶好調。キプリンガーのランキングではプルデンシャルやモルガン・スタンレーら大手のグロースファンドに続く第6位につけている。
メイズンの話を聞いていると、これほどの運用成果も大して驚くほどのことではないように感じてしまう。
「もしすべての条件が等しいなら、グロース投資がバリュー投資を上回るのは当たり前です。高成長高収益の企業を選んで組み合わせたら、より早く目標の運用成績にたどり着く。簡単に想像がつきますよね?」
グロース投資……市場平均より高い成長性が期待される企業に投資する手法。そうした手法で銘柄を選ぶ投資信託は「グロースファンド」と呼ばれる。
バリュー投資……利益水準や資産価値などから考えて、株価が割安と判断される企業に投資する手法。そうした手法で銘柄を選ぶ投資信託は「バリューファンド」と呼ばれる。
Business Insiderはそんなメイズンに、次の10年間で最も強い値動きを期待できる銘柄を聞いてみたところ、彼女はクリアブリッジが運用するポートフォリオのなかから、4つの銘柄をあげてくれた。
これから紹介するそれらの銘柄はいずれも、メイズンが投資先を選ぶときに使う3つのアプローチに条件が当てはまるという。また、そのように多様な投資先にリスクを分散させることこそが、投資成果をあげるためには欠かせないそうだ。
「成長銘柄に対して幅のあるアプローチを行うことで、市場環境がどのように変化しても成果を残せるようになります」
では、世界トップクラスのファンドマネージャー、エリーザ・メイズンが推奨する4つの銘柄を見てみよう。
1. ショッピファイ(Shopify)
カナダ・オタワにあるショッピファイ(Shopify)の本社にて。
REUTERS/Chris Wattie
カナダに本拠を置くこのEコマースプラットフォームは、多様なプロダクトとソリューションを提供している。しかし、アメリカ以外での成長はまだまだ始まったばかりだ。
「ショッピファイはその内部でほぼ完結するエコシステムを築き上げています。きわめて効率的で、費用対効果も非常に高い。ショッピファイを使えば、売る側だろうが買う側だろうが何でもできるのです」
メイズンによると、彼女が運用するインターナショナル・グロースファンドは、投資ポートフォリオの最大20%を「新興企業」に割り当てるアプローチを採用している。成長のポテンシャルは最も大きいが、もちろんリスクも最も高い。
ショッピファイもそういう企業のひとつで、いままさに爆発的な成長を遂げようとしている。しかし、それゆえに株価は高い。2015年5月にニューヨーク証券取引所に上場したときの、実に1600倍にふくれ上がっている。
「次の10年の勝者になると思っています。でも、当然リスクはある」
2. モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)
2019年第4四半期決算を発表したLVMHグループのベルナール・アルノー会長兼CEO。2019年11月に米ティファニーを162億ドル(約1兆7500億円)で買収し、世界を驚かせた。
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「率直に言って、高級品市場におけるLVMHのポジションは絶対的です。きわめて多様な事業を展開し、それでいて、ここから先も長期にわたって成長が期待できます」
フランスに本拠を置く同社は、売上高537億ユーロ(約6兆5000億円、2019年)、グローバル従業員数は15万6000人。名実ともに世界を代表する企業のひとつ。
無借金経営で、ハンドバッグ、化粧品、ワインとスピリッツ、セレクティブ・リテーリング(クルーズ船ショッピングなどのバケーションサービス)など事業ポートフォリオの拡大や企業買収にも積極的。いずれの事業分野でも長期的な成長曲線が想定される。
メイズンにとって、LVMHは「長期的成長」を求めるアプローチの典型例だ。投資ポートフォリオの40〜60%を占め、インターナショナル・グロースファンドに安定性をもたらしているという。
3. 任天堂(Nintendo)
新生・渋谷PARCOにオープンした国内初の任天堂オフィシャルストア「Nintendo TOKYO」。同ビル内に「ポケモンセンターシブヤ」もオープンした。
REUTERS/Issei Kato
Nitendo DSやSwitchで知られる任天堂。メイズンによると、中国市場への進出はきわめて大きなインパクトをもっているにもかかわらず、同社の成長可能性は正当に評価されていない。中国には販売拡大のチャンスがいくらでもあるという。
「ニンテンドーは非常に面白い企業ですね。とくに、ポケットモンスター(ポケモン)関連商品がどこまで売れるのか、いつも興味深く見守っています」
エンタメの総合商社ともいえる任天堂は、メイズンが「構造的成長」銘柄を選ぶアプローチの典型例だ。こうした企業は、巨大なトレンドから利益を得るチャンスをつかむ。インターナショナル・グロースファンドの投資ポートフォリオのなかでは、最大40%を占めるという。
「私が『構造的成長』銘柄と呼んでいる企業にはいずれも、財務指標や企業価値と比べたときの時価総額に割安感があります。業界用語を使うなら、マルチプルの倍率が低い企業です。ひとたび(トレンドに乗るという)スイッチが入ってしまえば、株価はとても強い値動きになります」
4. 資生堂(SHISEIDO)
メイズンが「日本最高の化粧品会社」と評価する資生堂。世界でも知名度を高めつつある(写真はニューヨークのイベント出店)。
Brian Ach/Getty Images for Jetblack
「日本では間違いなく最高の化粧品会社ですね」
メイズンによると、資生堂は利益率が比較的低いので、現時点では株価が抑えられている。しかし、そのうち数字は改善され、競合企業並みの水準まで上げてくると彼女はみている。
「マーケットは資生堂のアーニングパワー(収益力)を全然わかっていませんね。次の10年を勝ち抜くのは、この会社だと思います」
(翻訳・編集:川村力)