写真は2019年1月31日の通期決算会見。2020年、LINEは決算コールおよび報道関係者向け説明会を開催しなかった。
撮影:小林優多郎
LINEは1月29日、2019年12月期の連結決算を発表した。売上高は前年同期比9.8%増の2274億8500万円。営業損益は338億9700万円の赤字で、増収減益だった。
純損失は468億8800万円で、前期の37億1800万円から赤字幅が拡大した。同社は決済サービス「LINE Pay」を含む新規事業のための投資など費用拡大が影響したとしている。
LINEの売り上げと月間アクティブユーザー数。第4四半期には前年同期比で400万人の増加となった。
出典:LINE
前期決算で「LINEモバイル」と「LINE Games」を持分法適用関連会社に変更したことにより、247億9400万円の一時益が発生しており、その影響で今期の営業収益は248億8800万円減少となった。
それ以上に営業赤字が膨らんだのは、LINE Payをはじめとしたプロモーションによるマーケティング費用が127億1100万円増加したことが大きく影響した。
広告など伸びるも、システム開発中止で損失
コア事業は売り上げを拡大したが、戦略事業が損失を拡大させた。
出典:LINE
セグメント別では、広告、コミュニケーション、コンテンツなどコア事業の売り上げが好調で、売上高は1967億1100万円、営業利益は315億8400万円だった。
ディスプレイ広告とアカウント広告が堅調に拡大。コミュニケーションやコンテンツ、その他のコア事業がほぼ横ばいだったのに対して、利益をけん引した。
一方、FinTechやAIなどの新規事業を担う戦略事業は赤字。売上高として307億7400万円を計上したものの、営業損失が665億5700万円となり、前期から赤字幅がほぼ倍増した。
今期はさらに、システム開発(該当事業は非公表)を中止したことで16億5000万円の営業費用を計上。損失を拡大させた。
LINE Payの赤字は織り込み済みでも先行きは見えず
LINE Payは取扱高が伸び悩んだが、月間アクティブユーザー数は前年同期比で拡大した。
出典:LINE
LINE Payを戦略事業として重視するLINE。2019年第4四半期には海外を含めた月間アクティブユーザー数が652万(国内370万)人を突破して、前年同期比63.1%増となった。しかし、同じく海外を含む取扱高は同5.4%減の3550億円にとどまり、伸び悩んだ。
年末感謝クーポン祭を実施してユーザー数と決済高を増加させ、「大規模なマーケティングに頼らない」とはしているが、通年では営業費用がかさんで赤字幅が拡大した。
LINE Pay事業は利用可能店舗と利用者、いずれの拡大も必要で、当面は黒字化の難しい事業だ。そのため、LINE自身も赤字を織り込み済みの決算という認識を示す。
エンタメ・O2O事業は好調、ヤフーへの統合は前進
ヤフーとLINEの経営統合発表の様子(2019年11月撮影)。
撮影:小林優多郎
四半期ごとの結果では、広告事業は堅調に伸びているものの、コミニュケーションやコンテンツ事業はほぼ横ばい。その中で、「LINEマンガ」や「LINE MUSIC」が拡大しており、第4四半期にLINE MUSICの決済高が初めて30億円を突破した。
戦略事業では、O2O(Online to Offline)/コマース分野で「LINEショッピング」や「SHOPPING GO」「LINEデリマ」「LINEポケオ」「LINEトラベル」「おでかけNOW」といった事業が奏功して取扱高を伸ばした。
現時点では利益への貢献は少ないが、広告など収益源の拡大を図りつつ、戦略事業の収益化への道筋を立てたい考えだ。
LINEは今期も業績予想を公表していない。通期決算発表の当日には、ソフトバンクグループ傘下のZホールディングスとの経営統合に向けてLINE分割準備会社への全事業の吸収分割を決定しており、統合プロセスは進展している模様だ。
10月をめどにした統合が完了すれば、FinTech事業でのシナジーも期待され、費用の削減につながる可能性もある。
(文・小山安博)
小山安博:ネットニュース編集部で編集者兼記者、デスクを経て2005年6月から独立して現在に至る。専門はセキュリティ、デジカメ、携帯電話など。発表会取材、インタビュー取材、海外取材、製品レビューまで幅広く手がける。