【森本千賀子】「勤続10年以上」は警戒される?激変転職市場の“新常識”をカリスマエージェントが直伝

森本千賀子

転職エージェントのカリスマ的存在、森本千賀子さん。リクルート人材センター(現:リクルートキャリア)でそのキャリアをスタートし、独立した現在も一貫して転身を考える人のキャリア支援や企業の採用支援で活躍中。

撮影:鈴木愛子

はじめまして、森本千賀子と申します。

私はこれまで27年にわたり、「中途採用」「転職」の分野に関わってきました。近年は、主に経営幹部・管理職クラスの採用・キャリア支援を中心に幅広くお手伝いしています。

これまで3万人超の転職希望者の皆さんと接点を持ち、2000人超の転職を媒介してきましたが、この10年ほどで転職市場は大きく変化し、企業が選考で重視するポイントも変わってきていると感じます。

つまり、これまでの転職の“常識”にとらわれたままで転職活動をしたり、今後のキャリアプランを考えたりするのはとても危険。転職市場のトレンドは刻一刻と変化していますから、皆さんには「常に転職市場動向にアンテナを張って、最新の情報をアップデートしてください!」とお伝えしたいです。

Business Insider Japan読者にも多い「30代」は、その後のキャリアを決定づける大切な時期。結婚・出産などライフイベントを迎える時期とも重なり、ワークライフバランスも気になり始めますよね。このタイミングでどんな選択をするかはとても大切です。

そこでこの連載では、皆さんが幸せなキャリアを歩むための選択ができるように、知っておいていただきたいポイントをお伝えしていきます。

第1回目である今回は、中途採用の最近のトレンドについてお話しします。

企業の「採用理由」が変わった

もともと企業が中途採用を行う“王道の”理由は、大きく2つありました。何だか分かりますか? 1つは「事業拡大のための即戦力増員」、そしてもう1つは「欠員補充」。まさに採用理由の“王道”ですよね。

また、近年は労働人口減少や好景気などを背景に新卒の求人倍率がアップ。大手企業ですら新卒採用に苦戦している状況で、「予定していた新卒採用人数を満たせなかったから、中途採用で第二新卒の若手人材を補おう」という動きが盛んです。

このほか、リーマンショック以降の不況、あるいは個社の事情による業績悪化などを理由に、過去に新卒採用を絞った企業では、「組織の年齢ピラミッドを整えたいから、層が薄い○~○歳を補強しよう」と中途採用に乗り出すパターンもあります。

そして、ここ数年、これまでのパターンとは異なる傾向が強くなってきました。

IoT

進む社会のAI化、IoT化。環境の変化に応じて、企業も変革を推進できる人材が必要になる。

Shutterstock

最近増えているのが、「変革」「新規事業の創出」を背景とした採用です。

AI・ロボット・IoTといった新しいテクノロジーの話題が経済ニュースを賑わせていますよね。当然ながら「うちの会社も導入するぞ!」という気炎が上がるわけです。新しいテクノロジーを活用したビジネスモデルの開発や、いわゆる「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の推進に取り組む企業が増えています。

また、少子化に伴って国内マーケットが縮小していく中で、「既存事業だけでは成長できない。新規事業として異分野に進出しよう」という動きも。

その一方では、政府が主導する女性活躍推進や働き方改革に対応すべく、制度改革や風土改革の必要性にも迫られています。「どうすれば生産性を上げられる?」「限られた人材をどうマネジメントすればいい?」——企業からはそんな悲鳴が上がっています。

いずれにしても、既存の価値観や慣習から脱却する「パラダイムシフト」が必要です。ところが、既存社員だけで取り組むとなると、どうも固定観念に縛られて新たな発想が生まれにくい、人間関係においてのしがらみもある……。そこで、異業種の人材を積極的に受け入れる企業が増えています。

実際、これまでの経験・スキルが買われ、自分では思いもよらなかった異業種への転職を果たしている人が多数いらっしゃいます。

例えば、生命保険会社の人がマネジメントスキルを活かしてホテル業界へ、化学メーカーの人が「素材」の知識を活かして自動車メーカーへ、アパレル会社の人がアパレル業界向けサービスを提供するネット企業へ……などなど。

森本千賀子

一昔前は転職を図る場合、年齢が高くなるほど同業界・同職種を目指すのが王道であり、キャリアアップの近道でした。ところが現在は、専門領域での豊富な経験+プロジェクトマネジメント力を武器に、異業界でキャリアアップするチャンスが増えています。

だから、皆さんも「自分はこの業界」という思い込みは捨ててくださいね。可能性に気づかないのはもったいないことです。

「転職回数が多いと不利」は本当?

転職

以前は「転職歴が多い=堪え性がない」と思われていたが……。

撮影:今村拓馬

「転職回数が多いと、次の転職に不利になるのでは」——そんなことを不安に感じてはいませんか? でもそれに対する答えは「そうでもないよ」です。

確かに一昔前は、転職歴が多い人が求人に応募すると、「忍耐力がなく、またすぐに辞めてしまうのでは」なんて思われがちでした。「長く働いてほしい」と考える企業が多かったんですね。

もちろん、今もそうした考えを持つ企業もありますが、全般的に「転職歴の多さ」への抵抗感は薄れています。むしろ、「1社に十数年~20年以上継続勤務した人」のほうが警戒される傾向があるんです。ちょっと意外だと思いませんか?

なぜなら……今は変化のスピードが速いので、知識やスキルはあっという間に陳腐化してしまいます。そこで、企業が求めるのは「変化にすぐ順応できる」人。つまり、同じ職場で長く勤め上げてきた人よりも、「変化に順応した経験」が豊富な人が求められるというわけです。つまり、キャリアを変化させてきた人——「転職」「異動」の経験が多い人です。

「この人は不満から逃げてばかりいたんだな」と思われてしまうとさすがにキビシイのですが、ちゃんと目的意識を持って戦略的に転職を重ねてきたこと、転職を経て身に付けた知見やスキルをアピールできれば、転職回数の多さはマイナスにはなりません。

森本千賀子

とはいえ「転職したことない! 1社に10年以上いてしまった!」と焦る必要はないですよ。

一つの会社に長く勤めていても、異動・転勤・出向といった経験があれば、「変化対応力」のアピール材料になります。

加えて、企業が求めるのは「巻き込み力」。変革や新規事業創出に取り組むプロセスでは、さまざまな立場の利害関係ある人々をとりまとめていく必要があります。特に新規事業を立ち上げる場合は、自社内でゼロから手がけるよりも、他社とアライアンスを組んだり、場合によってはM&Aを行ったり。

そのようにバックグラウンドや価値観が異なる人々と協業を進めるために、1人で業務を完結させるスキルよりも、多くの人を巻き込んで協力関係を築くスキルが強く求められているのです。

「中核ポジションを業務委託に」も広がる

森本千賀子

副業やフリーランスなど、日本でも働き方の選択肢は増えてきた。リクルート在籍時から複業を実践してきた森本さんもまた、パラレルキャリアの体現者。

撮影:鈴木愛子

「多様な雇用形態の人材を受け入れるようになった」。これも、最近の中途採用市場の変化の一つです。

「それは以前からそうでしょ?」と思うかもしれませんね。バブル崩壊やリーマンショックによる景気低迷を経験した日本企業では、景況や業績に応じて雇用調整ができるように、契約社員や派遣社員といった「非正規雇用」を増やしてきましたから。

では、何が変わったのでしょう。

以前は、「非正規職員」の活用は、事務・営業・販売・エンジニアといった現場スタッフに限られていました。しかし最近では、事業変革や新規事業開発など、経営戦略の核を担うポジションでも、非正規職員を迎え入れる動きが活発になってきたんです。

従来なら、そうしたコア人材は「当然、正社員でなければ」という考え方でした。でも、今ではそもそも優秀な人材を容易に採用できないし、スピードが大事。そこで、正社員にこだわらず、「業務委託」を活用するケースが増えています。フリーランス、あるいは企業に勤務しながら副業をしているプロフェッショナル人材と一定期間契約を結んでプロジェクトに参加してもらう、というスタイルが広がってきました。

フルタイムの正社員を雇用する代わりに、例えば「2人に業務委託して、それぞれ週2~3日のペースで就業してもらう」といった方法でカバーするわけですね。

森本千賀子

例えばある人事スペシャリストの方は「人事制度の改革」というコアスキルを活かして、常に3~4社程度のプロジェクトに関わり、プロジェクトが完了すれば新たに別の企業と契約する……という働き方をしています。ほか、マーケティング、商品開発、営業など、さまざまな職種でこうした雇用スタイルが増えています。

実際、私がそうした雇用方法を提案すると、抵抗なく受け入れてくださる企業が増えています。最近は、企業の「副業解禁」も進んでいますよね。こうした人材活用方法はさらに広がっていきそうです。

採用手法が多様化。「リファラル採用」も広がる

あなたが転職活動を始めるとしたら、どんな手段が思いつくでしょうか? 「求人サイトを見る」「転職エージェントに相談する」を真っ先にイメージする人が多いのではないでしょうか。

そのとおり、企業の採用活動といえば、以前は「求人メディアに求人広告を出稿する」、あるいは「転職エージェントから希望に合う人材を紹介してもらう」という方法が主流でした。

ところが最近は、SNSの要素が強い求人メディアも登場し、企業は「ソーシャルリクルーティング」も含め、自社に合った手法を使い分けるようになっています。また、社内にリクルーターを置き、採用候補者に直接アプローチをするといった「ダイレクトリクルーティング」に注力している企業も増えています。

従業員を通じて、その友人・知人・元同僚などを採用する「リファラル採用」も広がってきました。その運用方法は企業によってさまざま。「友人・知人を会社説明会へ招待する」といったものから「経営トップとの面接をセッティングする」といったものまであります。

森本千賀子

皆さんも転職を考えるなら、「自分が目指す企業やポジションは、どのような手法で採用が行われているか」までアンテナを張っておくといいでしょう。

以上、転職市場の最近のトレンドをご紹介しました。皆さんも転職活動を始めるとしたら、まずはこうした企業側の事情や人材ニーズの動向を理解した上で戦略を立ててくださいね。

※本連載の第2回は、2月10日(月)を予定しています。

(構成・青木典子、撮影・鈴木愛子、編集・常盤亜由子)


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森本千賀子: 獨協大学外国語学部卒業後、リクルート人材センター(現リクルートキャリア)入社。転職エージェントとして幅広い企業に対し人材戦略コンサルティング、採用支援サポートを手がけ実績多数。リクルート在籍時に、個人事業主としてまた2017年3月には株式会社morichを設立し複業を実践。現在も、NPOの理事や社外取締役、顧問など10数枚の名刺を持ちながらパラレルキャリアを体現。2012年NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」に出演。『成功する転職』『無敵の転職』など著書多数。2男の母の顔も持つ。

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